Mimosa
ヒロインの名前
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華は伊藤と会う約束をしていた。少しだけ背伸びをした服装に身を包む。カジュアルすぎないシャツワンピースと羽織りになるカーディガン、荷物のあまり入らない小さなバッグを持ち、履き慣れないサンダルを履いた。9月も半ばサンダルは果たして正しいのだろうか。服装も心も、何かだけ噛み合っていない気がした。その違和感を見ないふりして、鏡を覗き込んだ。薄いピンクのアイシャドウを指で伸ばし鏡を確認する。ピーチカラーのリップをつけてキュッと唇を結んだ。
大丈夫うまく行くーそう言い聞かせ、駅の階段を降りた。
待ち合わせの駅の改札で伊藤は華を見つけると軽く手を振り近づいてきた。スマートな流れに華は胸がときめいた。大丈夫この人でと念じるように心に唱える。
「華ちゃん、今日何時まで大丈夫?」
「19時かな」
「そっか、じゃあそれまで色々行こう」
同じ歳の男達に比べ、スマートで大切にしてもらえる。伊藤が華に見せてくれる煌びやかで華やかな世界に華自身も酔いしれていた。雑誌で見るようなおしゃれで綺麗な店や、行ったことのないスポット。華は楽しいはずなのに、どこか胸の奥に薄い影のようなものが残った。
「華ちゃんこっち」
導かれた先は細い階段になっていた。おしゃれだが、石畳の階段で登りずらい。伊藤が華の腰に手を添えた。
大丈夫?と微笑んでくる伊藤に、華はびっくりしながらも微笑みを返した。先を急ぐ伊藤の後を慣れないサンダルでついて行く。
気づけば花火がよく見えるという穴場スポットに通されていた。地元民しか穴場なだけあり、まして花火もないので人気はない。少しだけ嫌な予感がしてしまう。彼とのデートを存分に楽しみながら、警戒してしまうのは失礼なことだ。そう思った矢先のこと、間近に伊藤の顔が近づいてきた。
「華ちゃん、俺たち付き合わない?」
何か応えなきゃと、言葉を探そうとしたのに、喉の奥が強張って声にならなかった。伊藤の唇がちかづいてくる。そして華の唇に伊藤のそれが触れた。思っていたものとかけ離れたキスだった。
助けてと思うけれど、軽はずみな行動の積み重ねがいけなかったと今更ながら後悔が込み上げる。相手を責められるわけではない。
「緊張してる?」
今度は耳元に置かれた手が下がってくる。胸元に手が置かれ、その手はゆっくりと華の胸の丸みをなぞった。どうなってしまうのだろう。目元にじわりと涙かたまり、視界が滲んだ。
「何やってんだ」
聞き慣れた声が夜の闇の中に静かに響いた。
「やめろ」
と続く。ああ、大丈夫だ。華の目から涙がゆっくりとおちた。
三井の仲間が伊藤に殴りかかる体制になっている。強い口調の話し声が聞こえるか、何を言っているかは入ってこない。気づけば伊藤は逃げるように走り去っていった。
この場所は不良たちの間では有名な溜まり場であるとのちの三井の説明で分かった。
「こんな物騒な場所で何やってるんだよ」
険しい顔で言われた。
「みんな当たり前にしてるし、伊藤さん嫌いじゃないっていうか、結構好きだったし、でもなんかついていかなくて…気持ちが」
「分かった、分かった。そんな包み隠さずいうな、てかちょっとは包めよな」
華の返事に三井は慌てる。
「ごめん」
「泣くなよ、泣くな…大丈夫だから、な」
「印象よくて顔もカッコ良くて、紹介してもらえて、こんな人が彼氏ならいいかもーって、でも違ったのかも。舞い上がってただけなのかな?なんか分かんない」
華が続けた。
「かっこいいか?俺のほうが…」
変なことを言ってしまったと三井は焦ったが、目の前では華がもっと混乱した様子だ。
「まあ、あるよ、そんなことも。でも暮海みたいな子がデートに来てくれりゃ誰だって嬉しいし、OKだって思うだろうし、そうなれば2人きりになりたいし、色々とやりたいの、男は」
三井はそう言って華の頭を優しく撫た。
「三井くんもそうなの?」
華は三井を見上げた。
「……俺が言うのもなんだけどさ、もっと自分を大切にしろ」
華の質問に答えることなく三井は続け、月の光に照らされた青白い顔に手を添えた。
うん、うんと華は声にならない声で頷いた。
三井はその可愛さに驚き、これはまずいなと思い、触れていた華の頬から手を離した。
「大丈夫だから、な。なんかあったら俺に言え」
そう言って華の顔を覗き込む。
喧騒を取り戻した夜、風の吹く音や踏切の音が混ざり合う。夜の湿度の中に強い花の香りが広がっていく。
大丈夫うまく行くーそう言い聞かせ、駅の階段を降りた。
待ち合わせの駅の改札で伊藤は華を見つけると軽く手を振り近づいてきた。スマートな流れに華は胸がときめいた。大丈夫この人でと念じるように心に唱える。
「華ちゃん、今日何時まで大丈夫?」
「19時かな」
「そっか、じゃあそれまで色々行こう」
同じ歳の男達に比べ、スマートで大切にしてもらえる。伊藤が華に見せてくれる煌びやかで華やかな世界に華自身も酔いしれていた。雑誌で見るようなおしゃれで綺麗な店や、行ったことのないスポット。華は楽しいはずなのに、どこか胸の奥に薄い影のようなものが残った。
「華ちゃんこっち」
導かれた先は細い階段になっていた。おしゃれだが、石畳の階段で登りずらい。伊藤が華の腰に手を添えた。
大丈夫?と微笑んでくる伊藤に、華はびっくりしながらも微笑みを返した。先を急ぐ伊藤の後を慣れないサンダルでついて行く。
気づけば花火がよく見えるという穴場スポットに通されていた。地元民しか穴場なだけあり、まして花火もないので人気はない。少しだけ嫌な予感がしてしまう。彼とのデートを存分に楽しみながら、警戒してしまうのは失礼なことだ。そう思った矢先のこと、間近に伊藤の顔が近づいてきた。
「華ちゃん、俺たち付き合わない?」
何か応えなきゃと、言葉を探そうとしたのに、喉の奥が強張って声にならなかった。伊藤の唇がちかづいてくる。そして華の唇に伊藤のそれが触れた。思っていたものとかけ離れたキスだった。
助けてと思うけれど、軽はずみな行動の積み重ねがいけなかったと今更ながら後悔が込み上げる。相手を責められるわけではない。
「緊張してる?」
今度は耳元に置かれた手が下がってくる。胸元に手が置かれ、その手はゆっくりと華の胸の丸みをなぞった。どうなってしまうのだろう。目元にじわりと涙かたまり、視界が滲んだ。
「何やってんだ」
聞き慣れた声が夜の闇の中に静かに響いた。
「やめろ」
と続く。ああ、大丈夫だ。華の目から涙がゆっくりとおちた。
三井の仲間が伊藤に殴りかかる体制になっている。強い口調の話し声が聞こえるか、何を言っているかは入ってこない。気づけば伊藤は逃げるように走り去っていった。
この場所は不良たちの間では有名な溜まり場であるとのちの三井の説明で分かった。
「こんな物騒な場所で何やってるんだよ」
険しい顔で言われた。
「みんな当たり前にしてるし、伊藤さん嫌いじゃないっていうか、結構好きだったし、でもなんかついていかなくて…気持ちが」
「分かった、分かった。そんな包み隠さずいうな、てかちょっとは包めよな」
華の返事に三井は慌てる。
「ごめん」
「泣くなよ、泣くな…大丈夫だから、な」
「印象よくて顔もカッコ良くて、紹介してもらえて、こんな人が彼氏ならいいかもーって、でも違ったのかも。舞い上がってただけなのかな?なんか分かんない」
華が続けた。
「かっこいいか?俺のほうが…」
変なことを言ってしまったと三井は焦ったが、目の前では華がもっと混乱した様子だ。
「まあ、あるよ、そんなことも。でも暮海みたいな子がデートに来てくれりゃ誰だって嬉しいし、OKだって思うだろうし、そうなれば2人きりになりたいし、色々とやりたいの、男は」
三井はそう言って華の頭を優しく撫た。
「三井くんもそうなの?」
華は三井を見上げた。
「……俺が言うのもなんだけどさ、もっと自分を大切にしろ」
華の質問に答えることなく三井は続け、月の光に照らされた青白い顔に手を添えた。
うん、うんと華は声にならない声で頷いた。
三井はその可愛さに驚き、これはまずいなと思い、触れていた華の頬から手を離した。
「大丈夫だから、な。なんかあったら俺に言え」
そう言って華の顔を覗き込む。
喧騒を取り戻した夜、風の吹く音や踏切の音が混ざり合う。夜の湿度の中に強い花の香りが広がっていく。