Casablanca
ヒロインの名前
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ここのところ、降ったり止んだりの天気が続いていた。綿雲が気持ちよさそうに晴れた空に浮かんだのも束の間、また雨が降りそうな気配がしてきた。雲が流れ日が隠れ、道に落ちた影は消えた。
「こっち近道」
華がついて行くと、三井は急に立ち止まった。通り沿いのライブハウスの扉が開き、突然大きな音が漏れた。都会離れした趣深いその建物からは聞いたことのある映画の曲が。シェルブールの雨傘ーIwill wait for youー
今にも雨を降らせそうな、そんな情緒のある演奏に耳を奪われた。大人が立ち入る甘美な空間から漏れ聞こえるジャズの生演奏とアルコールの未知な香りは華を高揚させた。
「さすが、抜け道詳しい〜」
また、しどろもどろに何か言うのだろうと華は構えたが、振り向いた三井は華の頭に手を乗せ、髪を撫でた。それから華の顔をくいっと上に向かせた。
どうしよう、すごくドキドキする。
華は三井の仕草と表情に釘付けになった。耳元に触れられ、次の瞬間、三井の唇が華の唇をかすめた。
一瞬のことだった。そして再び三井はゆっくりと、たどたどしく華に近づき、再び口づけを落とす。
どうして最初のキスより2回目のほうが、ぎこちないのか。
三井は手で顔を覆う。綺麗で長い指だなと華は思った。慣れた素ぶりと照れた表情。どちらが本当の三井なのか?まだ華には分からない。
でもこんなふうに色々な三井を見ていけるなら…これからもっと楽しくなる。
「そんな、項垂れるほど照れなくてもいいじゃん」
まだ三井は顔があげられない。自分からキスしたくせに…。華は笑った。
「雨降る前に帰るか?」
表情を戻した三井に、そうだねと、華はそっと頷いた。
春といえば雨降り…そんなイメージが華の中に定着したのは、この日から。
空に舞ったのは桜の花よりも綺麗な雨だった。
「こっち近道」
華がついて行くと、三井は急に立ち止まった。通り沿いのライブハウスの扉が開き、突然大きな音が漏れた。都会離れした趣深いその建物からは聞いたことのある映画の曲が。シェルブールの雨傘ーIwill wait for youー
今にも雨を降らせそうな、そんな情緒のある演奏に耳を奪われた。大人が立ち入る甘美な空間から漏れ聞こえるジャズの生演奏とアルコールの未知な香りは華を高揚させた。
「さすが、抜け道詳しい〜」
また、しどろもどろに何か言うのだろうと華は構えたが、振り向いた三井は華の頭に手を乗せ、髪を撫でた。それから華の顔をくいっと上に向かせた。
どうしよう、すごくドキドキする。
華は三井の仕草と表情に釘付けになった。耳元に触れられ、次の瞬間、三井の唇が華の唇をかすめた。
一瞬のことだった。そして再び三井はゆっくりと、たどたどしく華に近づき、再び口づけを落とす。
どうして最初のキスより2回目のほうが、ぎこちないのか。
三井は手で顔を覆う。綺麗で長い指だなと華は思った。慣れた素ぶりと照れた表情。どちらが本当の三井なのか?まだ華には分からない。
でもこんなふうに色々な三井を見ていけるなら…これからもっと楽しくなる。
「そんな、項垂れるほど照れなくてもいいじゃん」
まだ三井は顔があげられない。自分からキスしたくせに…。華は笑った。
「雨降る前に帰るか?」
表情を戻した三井に、そうだねと、華はそっと頷いた。
春といえば雨降り…そんなイメージが華の中に定着したのは、この日から。
空に舞ったのは桜の花よりも綺麗な雨だった。
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