Kind of Blue
ヒロインの名前
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「あ、先客」
「おう」
埃っぽい階段を抜け屋上に上がると、三井の姿があった。空には大根の切り損ないのような白い月が浮かんでいる。
「誰もいないの狙っできたんだけど。ま、三井くんならいっか」
「は?」
「寝ようと思って」
「え、寝んの?」
「うん、そう」
眠気も手伝い、華は気の抜けた声で返した。
「なんかあっても知らねーぞ」
「ないよ。そんな風に眉間に皺寄せた三井くんがそこにいたら」
そう言いながらもう一度、華は空を見上げた。昼間の月の他には何もない。抜けるような青空をずっと見つめていたら気が遠くなるような気がして来た。
「その俺が何かするとは考えねぇの」
「…ないね」
「言い切るなよ」
「ないでしょ?」
「いや、無くはねぇよ」
「何で」
「お前が好きだからだよ」
「好きなら、なおさら手だせないでしょ?って何の話?」
「告白だよ」
「え?」
「告白してんの。お前に、好きだって」
先程よりも低く、真剣な声だ。
「俺のことどう思ってる?」
「好きかな。うん」
一片の雲もない澄んだ空の下では何も隠せはしない。それは華も同じだろう。その言葉は自然と連なり落ちていくようだった。
三井はよしゃ!と小さなガッツポーズをして喜びを表現した。すると華は呆れたように、子どもじゃないんだからと、顔にいっぱいに皺を寄せて笑った。それがとても可愛らしかった。
「何?」
三井は華に優しい眼差しを落とす。
「いや背大きいなと思って」
「今更?」
「改めて並んだらそう思っただけ」
「そこに乗ったらちょうどいいよ」
「ちょうどいいって何に?」
「キスするのに」
ほらと指差す。
「なんか嫌だ。絶対乗りたくない」
「乗れよ」
いつもと変わらない意地の張り合いになる。
「ま、いっかどっちでも」
三井は賑やかな喋り声と足音が通り過ぎるのを待って、屈むように金網に手をついた。午後の緩やかな空気が一瞬のうちに凛とした。歪なフェンスの影が揺れ、華の肩越しには澄んだ光がキラキラと輝いた。風に乗って踏切の音が聞こえる。
「おう」
埃っぽい階段を抜け屋上に上がると、三井の姿があった。空には大根の切り損ないのような白い月が浮かんでいる。
「誰もいないの狙っできたんだけど。ま、三井くんならいっか」
「は?」
「寝ようと思って」
「え、寝んの?」
「うん、そう」
眠気も手伝い、華は気の抜けた声で返した。
「なんかあっても知らねーぞ」
「ないよ。そんな風に眉間に皺寄せた三井くんがそこにいたら」
そう言いながらもう一度、華は空を見上げた。昼間の月の他には何もない。抜けるような青空をずっと見つめていたら気が遠くなるような気がして来た。
「その俺が何かするとは考えねぇの」
「…ないね」
「言い切るなよ」
「ないでしょ?」
「いや、無くはねぇよ」
「何で」
「お前が好きだからだよ」
「好きなら、なおさら手だせないでしょ?って何の話?」
「告白だよ」
「え?」
「告白してんの。お前に、好きだって」
先程よりも低く、真剣な声だ。
「俺のことどう思ってる?」
「好きかな。うん」
一片の雲もない澄んだ空の下では何も隠せはしない。それは華も同じだろう。その言葉は自然と連なり落ちていくようだった。
三井はよしゃ!と小さなガッツポーズをして喜びを表現した。すると華は呆れたように、子どもじゃないんだからと、顔にいっぱいに皺を寄せて笑った。それがとても可愛らしかった。
「何?」
三井は華に優しい眼差しを落とす。
「いや背大きいなと思って」
「今更?」
「改めて並んだらそう思っただけ」
「そこに乗ったらちょうどいいよ」
「ちょうどいいって何に?」
「キスするのに」
ほらと指差す。
「なんか嫌だ。絶対乗りたくない」
「乗れよ」
いつもと変わらない意地の張り合いになる。
「ま、いっかどっちでも」
三井は賑やかな喋り声と足音が通り過ぎるのを待って、屈むように金網に手をついた。午後の緩やかな空気が一瞬のうちに凛とした。歪なフェンスの影が揺れ、華の肩越しには澄んだ光がキラキラと輝いた。風に乗って踏切の音が聞こえる。
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