「流川じゃねーか」
「うす」
「こんなとこで何やってんだ？」

　慌てて菖は流川の背中に隠れた。覗きこんでくる三井。続いて宮城も覗き込む。

「え？付き合ってんの？」
　宮城の問いに流川は頷いた。
「こっちは男だけで映画見とこだってのに」
　さらに三井が菖に近づく。負けじと踏み出す流川。流川は微動だにせず、挑戦的な目で三井を見返した。
「なんだよ、こえーな」
　慄く三井に宮城は、
「相変わらず弱ぇーな三井さん」
　と目に涙を浮かべ爆笑している。

「それよりさ、花道戻ってくるよ。流川が女と居るの見たら、あいつめっちゃ因縁つけそうじゃん」
「ますます晴子晴子うるさくなりそーだしな」
「あやちゃん…」
　再び別の意味で涙目になる宮城と
「お前も、思い出すなよ、いちいち。めんどくせーな」
　と、口では強い三井のやりとり。ただひたすら騒がしい。その流れをひととおり眺めていると、あの赤い頭が視界に姿を見せた。

「逃げろ、流川、あっち」
「うす」
　桜木の姿を横目で確認して、ふたりは人気のない通りへと流れた。

「すぐ絡まれる」
「そーだった？流川くんて、結構三井さんにこだわるよね？」

「あの時、三井さんと間違えた」