Snow Drop
ヒロインの名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「反面教師にね、今日の映画は。あ、流川くん強いから、ああいうふうに何かに逃げたり依存したりはないか」
「別に強くねー」
「え、俺たちは強いーじゃなかった?」
「どーだか?」
強いと思われがちだが、万事がそうであるわけではない。菖とつきあうようになってからは特に、こんなにも気持ちが揺れやすくなるものかと唖然とした。試合に勝つ意味のひとつに、勝てば彼女が喜んでくれる、ということもいつからか含まれるようになっていた。宮城が言っていたことが今なら分かる。彼女の存在は日に日に大きくなってきていた。
「とにかく、今日はわがままを聞いてくれてありがとう。それに暗転した映画館で寝ないのは奇跡よね、流川くんが」
「わがままって思ってねー。それにまだまだおめーのわがまま聞ける」
「そっか。じゃあ他にもお願いしていいの?」
「いい」
「何にしょうかな?」
「なんでもいい」
いたずらを思いついた顔で菖は言う。
なんだか居心地が悪い。勘は悪くない方だ。
「キスして」
「なんでだよ」
菖の言葉に被せるように流川は言った。
ーそう来たかー
彫刻の施された階段にモザイクタイルの入り口。駅の再開発で運良く立ち退きを免れた、ずっと幼い頃からある、狭くて天井の低い古ぼけた名画座。錆びたシャッターもそのままに残し、どことなく埃のにおいが漂っている。
そこにこうして特定の誰かと立っているというだけでも不思議な気分だった。そんな状況に加えてこの台詞。調子が狂う。そもそもなんでそういう流れになるのか…。分からない。
「わがまま聞いてくれるって言うから。嫌?」
辿々しい頼み方がただ可愛い。どうにでもなれという気分にさせられる。振り回されてるなと流川は首を傾げた。他人にあまり心を動かされないタイプの人間だったはずなのに…。
「別に強くねー」
「え、俺たちは強いーじゃなかった?」
「どーだか?」
強いと思われがちだが、万事がそうであるわけではない。菖とつきあうようになってからは特に、こんなにも気持ちが揺れやすくなるものかと唖然とした。試合に勝つ意味のひとつに、勝てば彼女が喜んでくれる、ということもいつからか含まれるようになっていた。宮城が言っていたことが今なら分かる。彼女の存在は日に日に大きくなってきていた。
「とにかく、今日はわがままを聞いてくれてありがとう。それに暗転した映画館で寝ないのは奇跡よね、流川くんが」
「わがままって思ってねー。それにまだまだおめーのわがまま聞ける」
「そっか。じゃあ他にもお願いしていいの?」
「いい」
「何にしょうかな?」
「なんでもいい」
いたずらを思いついた顔で菖は言う。
なんだか居心地が悪い。勘は悪くない方だ。
「キスして」
「なんでだよ」
菖の言葉に被せるように流川は言った。
ーそう来たかー
彫刻の施された階段にモザイクタイルの入り口。駅の再開発で運良く立ち退きを免れた、ずっと幼い頃からある、狭くて天井の低い古ぼけた名画座。錆びたシャッターもそのままに残し、どことなく埃のにおいが漂っている。
そこにこうして特定の誰かと立っているというだけでも不思議な気分だった。そんな状況に加えてこの台詞。調子が狂う。そもそもなんでそういう流れになるのか…。分からない。
「わがまま聞いてくれるって言うから。嫌?」
辿々しい頼み方がただ可愛い。どうにでもなれという気分にさせられる。振り回されてるなと流川は首を傾げた。他人にあまり心を動かされないタイプの人間だったはずなのに…。