Snow Drop
ヒロインの名前
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籠るような暑く気だるい空気が街を包む。陽の光はまだ燦々と降り注ぐ。明るい時間に流川の部屋に着いた。こんな時間に部屋に上がるのは久しぶりのことだ。流川が菖に近づいた。お邪魔しますの一言も言わぬうちに菖は流川に抱きしめられる。ドアが閉まる音が後から耳に響いた。
「よく飲んでたの、なんで?」
流川はため息をついて言う。
「え?なんか楽しくてつい?」
「お前酔っ払ったら…誰が俺連れて帰んの?」
「帰れるでしょ?この距離なんだからひとりで。子どもじゃないんだから」
「流川くん?」
沈黙しているほうがしゃべるよりも難しい。菖は黙りこくった流川の顔を覗きこんだ。
子どもじゃないんだからーが気に障ったのか、いつもに増し仏頂面の流川。その表情は皮肉にも彼をいつもより“子ども”に見せた。流川の幼い頃の面影を見た気がして、菖は嬉しくなる。目の前に大きな子どもがいるみたいで、可笑しくて可愛い。
「あんまり飲むな」
菖の額に指先で触れ、流川は言った。抱きしめられたことよりも、指先で触れられたことのほうがドキドキする。向かい庭の木が最後につけた果実の香り、季節外れのレモンの香りが薄く広まった。
「座れば?」
躊躇していると菖は流川に抱き上げられた。形こそ不恰好だが、‘お姫様だっこ’の体勢だ。バタバタと足を揺らし抵抗する菖を、流川は一瞬睨んだ。
「重いでしょ?」
「暴れなければ重くねぇ」
菖が足をバタつかせるのをやめると、流川は目つきを和らげ、菖を見つめ直した。抱き上げた腕には薄く血管が浮き上がっている。バランスよくついた流川の筋肉はしなやかで、意外にも柔らかく心地がいい。
「あの、流川くん。流川くんはそんなつもりないのかもしれないけど、流川くんの言動、心臓に悪い」
「?」
「すごくびっくりするし、ドキドキするの。身がもたないよ…」
流川はソファに菖を降ろすと、背もたれに手をつき、わずかに触れるだけのキスを落とした。
「そんなつもり…なく、ねぇ」
菖が流川の首元に腕を回すと、アルコールの匂いとともに、流川の冷たい舌が入り込んできた。
流川くんって実は結構ずるいーそんな言葉が喉元まで出かかった。大人なのか子どもなのか分からない。その間を自由に行き来しているようにも思えてしまう。
バランスが取れず、支えきれなくなった流川とともに、菖はソファになだれ込む。目元にかかった髪を避けてやりながら、流川にぽつりぽつりと話しかける菖。頬を撫でる風が気持ち良い。
すると、あっという間に流川の寝息が聞こえてきた。信じられないくらい眠りに落ちるのが早い。手が届がないはずの存在の彼のこうした姿を見ることができるのは奇跡だ。
熱った身体を沈めるように、菖はこの心地良い寝息に耳を傾けた。
「よく飲んでたの、なんで?」
流川はため息をついて言う。
「え?なんか楽しくてつい?」
「お前酔っ払ったら…誰が俺連れて帰んの?」
「帰れるでしょ?この距離なんだからひとりで。子どもじゃないんだから」
「流川くん?」
沈黙しているほうがしゃべるよりも難しい。菖は黙りこくった流川の顔を覗きこんだ。
子どもじゃないんだからーが気に障ったのか、いつもに増し仏頂面の流川。その表情は皮肉にも彼をいつもより“子ども”に見せた。流川の幼い頃の面影を見た気がして、菖は嬉しくなる。目の前に大きな子どもがいるみたいで、可笑しくて可愛い。
「あんまり飲むな」
菖の額に指先で触れ、流川は言った。抱きしめられたことよりも、指先で触れられたことのほうがドキドキする。向かい庭の木が最後につけた果実の香り、季節外れのレモンの香りが薄く広まった。
「座れば?」
躊躇していると菖は流川に抱き上げられた。形こそ不恰好だが、‘お姫様だっこ’の体勢だ。バタバタと足を揺らし抵抗する菖を、流川は一瞬睨んだ。
「重いでしょ?」
「暴れなければ重くねぇ」
菖が足をバタつかせるのをやめると、流川は目つきを和らげ、菖を見つめ直した。抱き上げた腕には薄く血管が浮き上がっている。バランスよくついた流川の筋肉はしなやかで、意外にも柔らかく心地がいい。
「あの、流川くん。流川くんはそんなつもりないのかもしれないけど、流川くんの言動、心臓に悪い」
「?」
「すごくびっくりするし、ドキドキするの。身がもたないよ…」
流川はソファに菖を降ろすと、背もたれに手をつき、わずかに触れるだけのキスを落とした。
「そんなつもり…なく、ねぇ」
菖が流川の首元に腕を回すと、アルコールの匂いとともに、流川の冷たい舌が入り込んできた。
流川くんって実は結構ずるいーそんな言葉が喉元まで出かかった。大人なのか子どもなのか分からない。その間を自由に行き来しているようにも思えてしまう。
バランスが取れず、支えきれなくなった流川とともに、菖はソファになだれ込む。目元にかかった髪を避けてやりながら、流川にぽつりぽつりと話しかける菖。頬を撫でる風が気持ち良い。
すると、あっという間に流川の寝息が聞こえてきた。信じられないくらい眠りに落ちるのが早い。手が届がないはずの存在の彼のこうした姿を見ることができるのは奇跡だ。
熱った身体を沈めるように、菖はこの心地良い寝息に耳を傾けた。