Mistletoe
ヒロインの名前
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沈黙の中で、自分の打ち振るう心臓の音だけが騒がしい。落ち着き払った藤真とは対照に、菫は胸の高鳴りを沈めることが出来なかった。横目で見上げても、藤真がこちらを見る気配はない。
誕生日にもらったばかりの指輪は新しく、薬指はまだ少し違和感がある。その指輪を藤真がなぞれば、魔法にかけられたように、指に馴染んでいくような気がした。高揚と安堵のどちらもが混ざり合い、菫は現しようもない思いに駆られていった。
普段から敵わない相手と分かっていても、これではなんだか悔しい。菫はせめてもの反撃にと、手を滑らせ指を絡め、先程の藤真の仕草を真似てみせた。
藤真はなお表情ひとつ変えず、左手をノートに走らせる。それならばと、菫は思い切りよく椅子を近づけ、藤真の肩にとんと頭を乗せ身を委ねた。
「今日はおしまい」
藤真は菫に体を傾け、ペンを置いた。手を繋ぎ直し、器用に片手で机の上のものを片付けはじめた。吸い込まれるようにペンやノートが収納されていく。
それがあまりにも優美な動作であったため、菫は目を奪われた。
「利き手が違うとさ、何かしながらでも、空いてる手をずっと繋いでいられんの。例えば歯磨きしながらとか」
ーずっと手を繋いでいられるー
その言葉は、強く印象に刻まれる。現に菫はキスをするよりも、体を重ねるよりも、こうして藤真と手を繋ぐことのほうが好きだった。それを汲んでのことなのか、こんなことをさらっと言う藤真はズルい。
「ね、藤真くんて、全部左利きなの?今更な質問だけど」
「違うよ。全部右でもできる。両方使えるが正解かな?てか急須とか絶対右じゃなきゃできないし」
「急須…使うことあるの?」
「ねぇけど」
「そう。あるなら見てみたかったよ」
「手より足のほうが大変だな。俺足も利き足左だけど、人の自転車乗りずらい。スタンドが逆だから」
「なるほどね」
あまり利き手のことを気にしたことはなかったが、聞いてみると面白い。
「あ、じゃあ、右回り左回りはやっぱり左の方が回りやすい?」
「なんだその質問。てかずいぶんと左利きに興味津々じゃねの?」
「違うー。左利きに〜じゃなくて藤真くんに興味津々なの!」
何気なく話を繋ぎながら、手が解けることがないようにと、菫は距離を縮めた。
誕生日にもらったばかりの指輪は新しく、薬指はまだ少し違和感がある。その指輪を藤真がなぞれば、魔法にかけられたように、指に馴染んでいくような気がした。高揚と安堵のどちらもが混ざり合い、菫は現しようもない思いに駆られていった。
普段から敵わない相手と分かっていても、これではなんだか悔しい。菫はせめてもの反撃にと、手を滑らせ指を絡め、先程の藤真の仕草を真似てみせた。
藤真はなお表情ひとつ変えず、左手をノートに走らせる。それならばと、菫は思い切りよく椅子を近づけ、藤真の肩にとんと頭を乗せ身を委ねた。
「今日はおしまい」
藤真は菫に体を傾け、ペンを置いた。手を繋ぎ直し、器用に片手で机の上のものを片付けはじめた。吸い込まれるようにペンやノートが収納されていく。
それがあまりにも優美な動作であったため、菫は目を奪われた。
「利き手が違うとさ、何かしながらでも、空いてる手をずっと繋いでいられんの。例えば歯磨きしながらとか」
ーずっと手を繋いでいられるー
その言葉は、強く印象に刻まれる。現に菫はキスをするよりも、体を重ねるよりも、こうして藤真と手を繋ぐことのほうが好きだった。それを汲んでのことなのか、こんなことをさらっと言う藤真はズルい。
「ね、藤真くんて、全部左利きなの?今更な質問だけど」
「違うよ。全部右でもできる。両方使えるが正解かな?てか急須とか絶対右じゃなきゃできないし」
「急須…使うことあるの?」
「ねぇけど」
「そう。あるなら見てみたかったよ」
「手より足のほうが大変だな。俺足も利き足左だけど、人の自転車乗りずらい。スタンドが逆だから」
「なるほどね」
あまり利き手のことを気にしたことはなかったが、聞いてみると面白い。
「あ、じゃあ、右回り左回りはやっぱり左の方が回りやすい?」
「なんだその質問。てかずいぶんと左利きに興味津々じゃねの?」
「違うー。左利きに〜じゃなくて藤真くんに興味津々なの!」
何気なく話を繋ぎながら、手が解けることがないようにと、菫は距離を縮めた。