Mistletoe
ヒロインの名前
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アーチ型の通路を抜け、奥の閲覧室に進む。大学のコレクションが所蔵された埃の匂いがする部屋だ。図書が「圖書」と表記されているのが、なんとも渋く、歴史の深さを感じる。
「本、普段大して読まないのに、テスト前になると読みたくなるな…」
ひとりごとのように言いながら、藤真は重い木の椅子を引いた。
斜めの影が揺れ動く図書館で利き手が当たらないように席に着く。横並びになる時は自然とそうなる。
試験まであと少し、久しぶりに校内で会ったふたりは、図書館で一緒に勉強をすることになった。
建て替えが行われ近代的な校舎が増える中、図書館だけが改築されず、古い礼拝堂の様な佇まいを残している。オレンジ色に染まる空気は強い光を連れ、部屋の中に差し込む。ノートの上で、光がきらきらと躍る。そんな1日にわずかしかない、穏やかな時間。
本棚と座席が交互に配置された図書館は死角が多い。まして土曜の午後の図書館は人が疎らだ。簡単に密室に等しいような空間が作り上げられる。ふたりの姿はさらに、太い柱の影に隠された。
数時間が経過して、時計は16時を回る頃。窓の外にはビーナスベルトの空が広がる。空は刻一刻と変化してゆく。目に落ちる淡いグラデーションの景色を、藤真はぼんやりと眺めていた。菫は変わらぬペースで必死に問題を解いている。
アッシュピンクの空と菫。それらを交互に眺める。藤真は自分の存在を忘れられたようで、少しつまらない気分になった。ちょうど集中力も切れてしまい、手持ち無沙汰にもなった。自分のことも構ってくれないかと、机の上に無造作に置かれた菫の手に自分の手を重ねてみる。
薬指に触れ、キラキラと陽の光を乗せ輝くダイヤの指輪をいたずらになぞった。何ひとつ変わらない素振りで、さも落ち着いた様子を装いながら…。
「本、普段大して読まないのに、テスト前になると読みたくなるな…」
ひとりごとのように言いながら、藤真は重い木の椅子を引いた。
斜めの影が揺れ動く図書館で利き手が当たらないように席に着く。横並びになる時は自然とそうなる。
試験まであと少し、久しぶりに校内で会ったふたりは、図書館で一緒に勉強をすることになった。
建て替えが行われ近代的な校舎が増える中、図書館だけが改築されず、古い礼拝堂の様な佇まいを残している。オレンジ色に染まる空気は強い光を連れ、部屋の中に差し込む。ノートの上で、光がきらきらと躍る。そんな1日にわずかしかない、穏やかな時間。
本棚と座席が交互に配置された図書館は死角が多い。まして土曜の午後の図書館は人が疎らだ。簡単に密室に等しいような空間が作り上げられる。ふたりの姿はさらに、太い柱の影に隠された。
数時間が経過して、時計は16時を回る頃。窓の外にはビーナスベルトの空が広がる。空は刻一刻と変化してゆく。目に落ちる淡いグラデーションの景色を、藤真はぼんやりと眺めていた。菫は変わらぬペースで必死に問題を解いている。
アッシュピンクの空と菫。それらを交互に眺める。藤真は自分の存在を忘れられたようで、少しつまらない気分になった。ちょうど集中力も切れてしまい、手持ち無沙汰にもなった。自分のことも構ってくれないかと、机の上に無造作に置かれた菫の手に自分の手を重ねてみる。
薬指に触れ、キラキラと陽の光を乗せ輝くダイヤの指輪をいたずらになぞった。何ひとつ変わらない素振りで、さも落ち着いた様子を装いながら…。
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