サムライJr.と特務一課 3
一課を乗せた時空艦船、ソイルは地球に到着しカリフォルニア州にある跡部財閥の別荘で、一課の執務官である柳蓮二と合流していた。
「蓮くん、立海大のお受験は無事に終わったの?」
光莉は隊員とともに、一課の拠点となる部屋にソイルから運んできた機材を設置しながら、中学受験のため日本に行っていた蓮二に受験の成果を尋ねる。
「あぁ、問題ない。合格する確率は九十五パーセントといったところだな」
「蓮二なら合格間違いなしやろ。来年の全国大会でウチんとこと当たりそうやん」
蓮二が神奈川の立海大附属、蔵ノ介は蓮二よりも一足早く大阪の四天宝寺に、それぞれ本命の中学受験を済ませたことになる。
「別に中学なんて行かんでもええやん。蓮くんは中学に行く歳とっくにこえとるんやで」
竜族が地球の学校に行って何になるのか、そう思っている光は蔵ノ介と蓮二が中学に入学することに否定的だった。特に蓮二は、光たちの中でも最年長者である竜族のアルトゴラゴン──竜族の中でも最も長く生きているのだ。何千年と生きている竜族がなぜ今更と思うのも当然だろう。
「何事も経験は大事だぞ。来年はお前たちも受験だからな」
蓮二の『お前たち』という言葉に設営の手を止めた双子はお互い顔を見合わせる。
『それって俺(私)たちも中学行けってこと?』
さすがは双子といったところか、光と光莉は同じ言葉で聞き返す。
光は元から否定的で渋々大阪の小学校へ通っていて、光莉の方は景吾と同じイギリスのプライマリースクールに籍だけ置き、ほぼミッドチルダにいて任務を中心の生活だった。地球での保護者である財前家と跡部家の薦めもあり、小学校への進学はしたものの、中学までは行かなくてもいいだろう。そう双子は考えていたのだ。
「日本の義務教育は中学までやで。高校まで行けとは言わんけど、中学は社会勉強だと思って、な」
青春するんもええもんやでと付け足して、蔵ノ介はソイルに残っている機材を取りに戻って行った。
「その話は後にするとして、今は任務優先だぞ」
「そんなん言われんでもわかっとるわ」
光はすっと立ち上がり、抑揚のない呟きを残して部屋を出た。
設営の準備もあと少しで終わる。蓮二がいるなら自分がいなくても大丈夫だろう、そう自己判断をして転移魔法を使い別荘の船着場へ移動した。
船着場には景吾が手配した跡部財閥の職員が待機していて、光の姿を確認すると一礼をする。
「市街地まで出してくれへん?」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
職員に促され、小型のクルーザー船に乗り込んだ光はデッキに備え付けられたビーチチェアに腰掛けるとゆっくりとクルーザーが動き出した。潮風を浴びながら思い出すのは蔵ノ介のことだ。
(腹たつ……)
自分自身でもよくわからない感情を蔵ノ介にぶつけてしまう。
蔵ノ介と話していると、自分を通して他の誰かを──そう、ここにはいない父と自分を重ねているのではないかとそう思ってしまう。
蔵ノ介が局に入局すると言った時、『俺が光と光莉を守ったるわ』と告げたのは、父に対する贖罪のつもりなのか、それとも『竜帝の光と血』を引き継ついでしまった光と、守護竜の中でも稀有な力を持つ聖竜のマスターである光莉。竜族にとって必要な存在だからなのか……。
(考えるだけアホらし──)
考え事をしている間に光を乗せたクルーザー船はカリフォルニア州のロサンゼルス港に着岸した。
地球の中心を担うアメリカ合衆国。その中で最も人口が多いのがカリフォルニア州だ。ロサンゼルス郡の市内にはハリウッドなどの観光名所があるが、人混みが苦手な光は人気の少ない通りを選び当てもなく歩く。
散策がてら歩いていた時だった、不意に感じた魔力出力に足を止めて察知した方向に意識を集中すると、一定にコントロール出来ている魔力の他に不安定な魔力が二つあることに気付く。
(あっちか──)
マクガイア一家による魔力狩りではないかと判断した光は、察知した北の方角に向かって駆け出したのだった──
「蓮くん、立海大のお受験は無事に終わったの?」
光莉は隊員とともに、一課の拠点となる部屋にソイルから運んできた機材を設置しながら、中学受験のため日本に行っていた蓮二に受験の成果を尋ねる。
「あぁ、問題ない。合格する確率は九十五パーセントといったところだな」
「蓮二なら合格間違いなしやろ。来年の全国大会でウチんとこと当たりそうやん」
蓮二が神奈川の立海大附属、蔵ノ介は蓮二よりも一足早く大阪の四天宝寺に、それぞれ本命の中学受験を済ませたことになる。
「別に中学なんて行かんでもええやん。蓮くんは中学に行く歳とっくにこえとるんやで」
竜族が地球の学校に行って何になるのか、そう思っている光は蔵ノ介と蓮二が中学に入学することに否定的だった。特に蓮二は、光たちの中でも最年長者である竜族のアルトゴラゴン──竜族の中でも最も長く生きているのだ。何千年と生きている竜族がなぜ今更と思うのも当然だろう。
「何事も経験は大事だぞ。来年はお前たちも受験だからな」
蓮二の『お前たち』という言葉に設営の手を止めた双子はお互い顔を見合わせる。
『それって俺(私)たちも中学行けってこと?』
さすがは双子といったところか、光と光莉は同じ言葉で聞き返す。
光は元から否定的で渋々大阪の小学校へ通っていて、光莉の方は景吾と同じイギリスのプライマリースクールに籍だけ置き、ほぼミッドチルダにいて任務を中心の生活だった。地球での保護者である財前家と跡部家の薦めもあり、小学校への進学はしたものの、中学までは行かなくてもいいだろう。そう双子は考えていたのだ。
「日本の義務教育は中学までやで。高校まで行けとは言わんけど、中学は社会勉強だと思って、な」
青春するんもええもんやでと付け足して、蔵ノ介はソイルに残っている機材を取りに戻って行った。
「その話は後にするとして、今は任務優先だぞ」
「そんなん言われんでもわかっとるわ」
光はすっと立ち上がり、抑揚のない呟きを残して部屋を出た。
設営の準備もあと少しで終わる。蓮二がいるなら自分がいなくても大丈夫だろう、そう自己判断をして転移魔法を使い別荘の船着場へ移動した。
船着場には景吾が手配した跡部財閥の職員が待機していて、光の姿を確認すると一礼をする。
「市街地まで出してくれへん?」
「かしこまりました。こちらへどうぞ」
職員に促され、小型のクルーザー船に乗り込んだ光はデッキに備え付けられたビーチチェアに腰掛けるとゆっくりとクルーザーが動き出した。潮風を浴びながら思い出すのは蔵ノ介のことだ。
(腹たつ……)
自分自身でもよくわからない感情を蔵ノ介にぶつけてしまう。
蔵ノ介と話していると、自分を通して他の誰かを──そう、ここにはいない父と自分を重ねているのではないかとそう思ってしまう。
蔵ノ介が局に入局すると言った時、『俺が光と光莉を守ったるわ』と告げたのは、父に対する贖罪のつもりなのか、それとも『竜帝の光と血』を引き継ついでしまった光と、守護竜の中でも稀有な力を持つ聖竜のマスターである光莉。竜族にとって必要な存在だからなのか……。
(考えるだけアホらし──)
考え事をしている間に光を乗せたクルーザー船はカリフォルニア州のロサンゼルス港に着岸した。
地球の中心を担うアメリカ合衆国。その中で最も人口が多いのがカリフォルニア州だ。ロサンゼルス郡の市内にはハリウッドなどの観光名所があるが、人混みが苦手な光は人気の少ない通りを選び当てもなく歩く。
散策がてら歩いていた時だった、不意に感じた魔力出力に足を止めて察知した方向に意識を集中すると、一定にコントロール出来ている魔力の他に不安定な魔力が二つあることに気付く。
(あっちか──)
マクガイア一家による魔力狩りではないかと判断した光は、察知した北の方角に向かって駆け出したのだった──