サムライJr.と特務一課 2
特務一課が所有する次元航行艦船『ソイル』は、ステルス機能を使い地球に進行していた──
ソイルの艦内、作戦会議室には前線分隊であるスパーク班とシリウス班が集合し、捕縛対象となる集団について話し合われている最中だ。
「今回の出動は、五日前に第三管理世界・ヴァイゼンにあるカレドヴォルフ・テクニクス社の修理工場から観光用小型航行線を略奪し、逃走したアクガイア一家の捕縛や。コイツらは修理工場の職員と、局の執務官を含めて数人を負傷させ、地球に逃亡しとる」
一課の司令官と執務官は後から合流することになっている。その間、スパーク班隊長である蔵ノ介が指揮を執って任務遂行することになり、事件の詳細を説明していた。
「アクガイア一家の中に、他人の魔力を収集して他のエネルギーに変換する奴がおる。航行船のエネルギーにも変換可能や。そいつがおる限り、延々と逃げらるっちゅうことやな」
光はそう言ってエアーモニターを拡大し、隊員たちに見えるよう変換魔力保持者のプロフィールをブラックリストからピックアップする。
「地球じゃ魔法は非現実だけど、教導隊のエースと航行部隊の夜天の騎士は地球出身でしょう。彼女たちのようにリンカーコアを持ってる人はいるはずよ」
地球で暮らす人々の中にも体内に魔力を取り込む魔法機関──リンカーコアを持つ者がいる。教導隊に所属している『エースオブエース』『空の英雄』と二つの称号を持つ魔導師と、局局内で極秘扱いとなっている闇の書事件、その当事者でもあった『夜天の騎士』は管理局の中でも数々の功績を挙げてきた実績を持つ地球出身者だ。光莉は他にも魔法を扱う要素を持つ者はいるのではないかと思っている。
「局から連絡きてへん?」
ミッドチルダから出航する前、略奪された観光船の発進記録がアメリカの観光地の一つであるカリフォルニア近辺に着港したと局から通信が入っていた。その後、マクガイア一家の足取りはどうなっているのか、蔵ノ介は会議に参加していた通信オペレーターの隊員に確認を取った。
「略奪された観光船は長距離用で、ステルス機能を搭載しています。カリフォルニアで一度確認して以降、消息を辿れてはいないようです」
「そうか、時間かけたないし。まだおってくれたらええんやけど……」
蔵ノ介は、これまでマクガイア一家が起こした犯罪履歴を見ながら返答を返す。履歴にはマクガイア一家よって死者もでていたのだ。
管理世界であれば情報も入りやすい上にソイルでの入国も連絡一つで済むのだが、地球は管理管轄外。情報の入手も困難で、ソイルもステルス機能を使い隠密で動かなくてはならない。
(局があてにならんとなると……)
ずっと思案していた光はふと、あることを思いだした。
「光莉、景くんに連絡は入れたんやろ?」
「え? それはもちろん……あっ!」
光の問いかけに、突然何を言い出すのかと思った光莉だったが、その真意に気づいたようだ。
「すっかり忘れてたわ。ハル、景兄に繋いで」
『Yes,master』
光莉は自身の魔法補助機であるインテリジェントデバイス『ハルシオン』に義理兄との通信を頼み、応答した愛機は通信を開始する。
「なんや、良い案でもあるんか?」
双子のやり取りを見ていた蔵ノ介は光に声をかけた。
「おん、地球なら局よりあてになる所があるやろ」
不在だったために忘れていたが、一課の司令官。彼ならばきっと調査をしているであろう