団体客

コーヒーなどの飲み物を作り終えてから、少しして。


「娘よ、お父さんが来たぞ!」

「写真館へ帰れ」

「本当にすみません、月音ちゃん…」

「落ち着かせようとしたんだけど出来なかった…ごめん…」


やたらテンションを高くして茶髪の長身の青年──門矢士が出入り口から入ってくる。
そんな彼に対して即座に月音は冷たい声で返す。
頭が痛いと言わんばかりに士に続くように長い茶髪の女性──光夏海と、人懐こそうな青年──小野寺ユウスケなどが入ってくる。


「いえ、夏海さんとユウスケさんのせいじゃないので……」

「えっと………席はこちらです」


自分の父親であり、オリジナルの言動に少し頭痛を覚えながらも月音は首を横に緩く振る。
あれ、ディケイドってこんな奴だったか?と思いつつ、ハルトは来客達を席へと案内した。
 

「月音も大変だね、士の親バカ具合に」

「大樹おじさん…」

「いい加減におじさん呼びはやめたまえ!悲しくなる!」


最後尾で入ってきた黒髪の青年──海東大樹が声をかける。
記憶が無く、視聴者だった頃と旅をしていた頃は名字で呼び捨てにしていたが…。


「ごめん…直そうとしたけど直らなかった…」

「士、君のせいだ…!」

「どうどう、師匠」


九歳の頃に父からの刷り込みによるものか、記憶を取り戻してからはおじさん呼びが復活してしまった。
申し訳なさそうな月音から、しれっとした表情で席に着いた士を海東は睨む。
そんな彼を道着を着た少年──アスムが落ち着かせようとする。
まぁ、いつものことだなと思いつつ、ユウスケが店内を見回す。


「意外と広いな…」

「確かにな……俺としては雰囲気的にも入りやすくて助かるが」

「レトロな雰囲気だからな」


ユウスケの言葉に頷きつつ本音をこぼす男性──芦河ショウイチに、穏やかな雰囲気の男性──ソウジが僅かに笑む。
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