魔法使いな従業員
「厄介な性質ですね、この世界のファントムは……仲間を増やして再びファントムだけの国を作ろうとして………だったか」
「そうそう。ドラゴンはそこにいるだけで絶望させてしまって、カーバンクルみたいにゲートじゃない人間をファントムに変えちゃう特性もあったから、また利用したいみたいだし…」
二人揃ってため息を吐き出す。
カーバンクルとドラゴンの厄介な特性……ゲートではない人間すらもファントムへと変化させるもの。
それによってドラゴンは王とは名ばかりのファントム生成用の存在として捕らえられていた。
カーバンクルはむしろその力を利用、ファントムにとっての理想郷を生み出して人間を虐げていた。
ドラゴンと、ドラゴンを助けた人間──魔法使い達によって国は無くなったが、どうやら再び作ろうとしているらしい。
「だからそうなると就職とかどうしようかと…………こよみはシュンペイさんの骨董店で働いてるけど、指輪も作ってくれてるのに俺まであそこで働くのはちょっと…」
「完成品の新作指輪をすぐに試せるのに?」
「それでもなぁ…そもそもあそこはシュンペイさん自身が強い結界張ってるから、すごい安全だし」
そう言いながら頭を抱えるハルト。
本気で悩んでいるようだ。
ふむ、と月音は考える。
タイミング的にもそうだが、月音とハルト、両方にとっての利益がある。
「なら……ハルトさん、ここで働きます?私も従業員が欲しくてポスターとか出そうと思ってましたし」
「……いいのか?」
「もちろんです。それに私も仮面ライダーで事情を知ってるので、ファントム関連の事件が起きた時にはハルトさんに休みを出せますし」
「本当に助かる………!!」
本気で嬉しそうなハルトの表情に、月音は笑みを浮かべる。
「勤務は明日か明後日からになりますが……ハルトさんって料理は出来ます?」
「あまり凝ったのは作れないかな。フレンチトーストとかしか」
「いや、それは充分ですよ…」
思わず苦笑しながらも、エプロンとか買わなきゃと月音は考えた。