文化祭

適当に裏庭に出たディリンクは、んーと背伸びをする。
イベントの内容は聞いていたが、まさか隠れ鬼ごっこだとは思わなかった。


「さて、どこに隠れるか…」


正直、隠れ鬼ごっこという遊びをしたことないので困ってしまう。
うーんと悩んでいると、カシャッというシャッター音が聞こえた。
聞こえてきたのは後ろだ。
振り向くと、そこに女性がいた。
えっ、と思わず声が漏れた。
胸下までの、毛先が暗い赤になった黒髪にとても綺麗な顔立ちの女性はスマホを片手に持ったまま、もう片手をひらひらと振ってくる。


「こんにちは、つき…ディリンク」

「………こんにちは、ヒナさん…」


女性────紅羽あかばねヒナの挨拶に、マスクの下で顔をひきつらせた。
ディリンクや、今回の「ライダー隠れ鬼ごっこ」に参加している仮面ライダー達は、主催者である仮面ライダー部からイベント内容は秘密にしてほしいと言われている。
そのため、彼女はシンジにイベントの内容は何も言わずに手伝いをすることになってるとだけ告げていた。
だから、関係者だろうと開始した直後で自分を写真に撮る者はいないだろう。
そう、思っていたのだが…。


「……何で写真を撮ったか尋ねてもいいですか?」

「ライダー隠れ鬼ごっこは写真を撮る必要があるんでしょう?」


尋ねてみると尋ね返された。
確かにそういうルールではあるが、何でここに出たばかりの自分を撮影出来たのか。
そこが知りたい。


「本当はエ…オーズを撮りたかったんだけどね。オーズからある程度聞いてたし」

「聞いてたとは?」

「えっと……ドライブとディリンク、フォーゼ以外のライダー関係者は今回のイベントに参加してるライダーから、イベント内容を教えてもらってたんだって」


何してるんですか、皆さん!?

思わず心の中で叫び、頭を抱えるディリンク。
まさかほとんどが教えていたとは思わなかった。
ヒナから心配そうに大丈夫か尋ねられ、それに首を縦に振ることで返事をする。
と、二人の話し声が聞こえたのか、複数の人の声や気配が近づいてくるのが分かった。
おそらくイベント参加者だろう。


「私はもう移動しますね……オーズの居場所が分かったら連絡します」

「いいの?」

「撮られるなら恋人に早く撮られたいでしょうからね」


本音は、オーズはカッコ悪いところを恋人に見つかって撮影されればいいのにというものだが。
オーロラを展開しながらヒナに手を振り、人が増える前にそれに入り込んだ。
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