文化祭

ある程度、腹を満たした後は校舎内にある遊戯系の出し物や、喫茶店系統の模擬店に向かおうとしたが。
歓声が聞こえてきた。
驚いて互いに見合わせてから、歓声の聞こえてきた方へと移動する。
移動した先には体育館があり、中に入ると人が多くいて、舞台にも誰かが立っている。
その手にはマイクがある。
後ろにあるスクリーンには何かの映像が流れ、音楽やマイクを持つ人の歌声に合わせてモノクロの文字が青に染まっていっては新しいものになる。


「あぁ、カラオケ大会かぁ」


シンジが納得して呟くと、ちょうど終わったのか歌っていた人の歌声が余韻を残して止まり、舞台袖に引っ込んだ。
すると舞台の上に司会が現れて次に歌う人を呼んでから。


『あ!飛び入り参加もOKなので、参加したい方はぜひともスタッフに声をかけてください!』


そう言い残してから舞台袖に引っ込んでいくと、新たな歌い手がやってくる。


「飛び入り参加OKかぁ…シンジさん、やってきても大丈夫ですか?」


好奇心に満ちた瞳で月音が彼を見上げた。
思わず苦笑しながらシンジが頷けば、彼女は嬉しそうにスタッフの生徒へと声をかけに行った。
 

「飛び入り参加ですね、了解しました。あ、着替えますか?」

「?うん……?」

「着替えるんですね、了解しました~」


何故か着替えるか尋ねられ、疑問の声を漏らしたら了承と取られてしまった。
訂正する前に舞台裏へと連れてかれ、大量の何かの衣装が納まった移動式のハンガーラック達がある。
近くにある、着替え用らしき仕切りスペースに入れられると突然、女子生徒に服を脱がされた。
声にならない悲鳴を上げる月音を無視して、女子生徒達はテキパキと動く。


「この子が歌う曲名って何でしたっけ?」

「たしか、「Chain Break」って歌のはずだよ!ほら、あの、「ダーク系中2異能バトル」とかってジャンルのアニメの!」

「あー、演劇部と家庭部の一部がそれを持ってきてたような…」

「たしか、「蒼薔薇ノ乙女ブルーローズメイデン」が茶髪だし、この子くらいの身長だから彼女のにしましょう!」

「了解!」


流れるような会話に口を挟むことも出来ず、されるがままになってしまう。
着替えるか尋ねられた時、ちゃんと断れば良かったと本気で後悔した。
6/11ページ