欲望と罪と世界

着地したヴァルツとディリンクは、後ろを振り向く。
コアメダルどころかセルメダルすら一枚も無い。


「……なるほど、脱け出した…もしくは誰かに助けられたか。どっちにしろ、途中で手応えが無かったのはいなくなったからか」

「いや、何を納得してんだよ。倒さなくていいのか?」

「……………正直、私としては勝利への慰謝料代わりにコアメダルを二枚くらい抜き取りたかったが、基本的に奴はエイジさんの相手だ。それにちょっとだけとはいえ、必殺技を二つも喰らったんだからダメージも相応にあるはずだ」


ディリンクがどこかぼんやりしているような声で返すとヴァルツが、じぃっと彼女を見た。
緩慢な動作で首を傾げていると、チーターヤミーを倒して通常形態であるタトバコンボに戻したオーズが駆け寄ってくる。


「そっちも終わった?」

「なんとか…けど逃がしちゃったみたいで…」

「……まぁ、カザリは素早いしなぁ…俺も何回か逃がしちゃったことあるし」


マスクで見えないはずなのに、遠い目をしているのがなんとなく察せられる。
そんな会話をしつつ変身を解いた瞬間。
月音が意識を失い、倒れてしまった。
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