欲望と罪と世界

カザリは舌打ちし、二人を見た。
忌々しい、鬱陶しい、邪魔だ……様々な負の感情が彼の中で渦巻く。
グリード……その名の通り、欲望の化身である彼の中で…。


「何なのさ、君達は……!?」


怒りを込めた声で問い掛ける。


「別に。お前に答える必要がない」


静かな声でディリンクが答えた。
と、彼女のベルトに装着されてるカードホルダーから一枚のライダーカードが飛び出した。
空中で掴むと、何も描かれていない無地のカードに、絵柄と文字が浮かび上がる。
全身が描かれたヴァルツの絵に、「MASKED RIDER VALZ」と「SUMMON RIDE」の文字。
ヴァルツのサモンライドカードだ。
即座にそれを仕舞っていると、ヴァルツがカザリへと接近する。


「はぁっ!!」

「ぐぅう…っ!」


ヴァルツの拳が正確に捉え、吹っ飛ばす。
怒りなどで冷静な思考が出来なくなったカザリは体勢を整えて着地、反動を利用して飛び上がると彼に襲いかかる。
銀のオーロラが生まれ、ディリンクとヴァルツの位置が入れ替わる。
ソードモードのライドブッカーでカザリの攻撃を防ぎ、腹部へと膝蹴りを放った。
再び吹っ飛ばされるカザリ。
ライドブッカーを仕舞ったディリンクが、新たなカードを取り出してバックルに装填する。
隣へと並び立ったヴァルツが、カプセルホルダーをエクスライザーにスキャンさせる。


『ファイナルアタックライド』

《エクスライザーバースト!》

『ディ、ディ、ディ、ディリンク!』


ヴァルツの右足にエネルギーの奔流が集中し、白熱して光り輝く。
ディリンクの前には金色の光で出来たカードが何枚も現れ、道筋となる。
二人が飛び上がり、体勢を変え……カザリへと向かっていく。
体勢を立て直したカザリは、目に怒りを宿らせたまま迎え撃とうというように構えた。


「はぁああああああ────っ!」

「…っ!!」


ヴァルツの裂帛の気合いと、ディリンクの静かなる闘志。


「絶対に許さない……どちらも…!」


憎悪に染まったようなカザリの声。
そして……ヴァルツの必殺技である「エクスライザーバースト」と、ディリンクの必殺技である「ディメンジョンキック」が、カザリへ炸裂した。

しかし、当たった直後にカザリの体に何かが巻き付き、瞬時に引っ張ったことで彼が喰らったダメージは二つの必殺技であったにも関わらずになるべく最小限で済んだ。
それでも気絶してる彼を抱えながら、魚のような姿の怪人は姿を消した。
誰にも知られないように、そこから静かに。
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