欲望と罪と世界

体のところどころから白煙を上げ、不安定な体勢だったのもあって尻餅をついたカザリ。
ライドブッカーを向け、銃撃したディリンクは接近するとカザリへと蹴りを放つ。
吹っ飛ばされたカザリを追うように接近し、追いつくと地面に叩きつけるように上から拳を放った。
が、 体を捻らせてカザリは避け、ディリンクから距離を取ってから体勢を整える。


「ディリンク……っ!」

「…………な…」

「…何……?」


怒りを込めて睨めば、小さな声で何かが呟かれた。
思わず聞き返せば、ディリンクがマスク越しにまっすぐに見返した。


「貴様が、笑うな……!!」


低く、強い声で言葉を紡ぐ。


「月音……」


上体を起こしたヴァルツが、ディリンクを見上げた。
けれどディリンクはカザリをまっすぐに見て、言葉を放つ。


「お前が、こいつの何を知っている?お前よりは少し長く一緒にいる私だって知らないことの方が多い。だがな……こいつが、苦しくても、辛くても、痛くても、前に進もうとしてるのは感じることが出来る。そんなこいつを…」


言葉を一度切り。


「貴様が笑うな!!」


言い放った。
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