欲望と罪と世界

カザリが自分の胸を見た。
二本の刃が胸から生えている。


「な……っ」


ぼろぼろと出てくるセルメダルが地面に落ち、甲高い音が響く。
さらに勢いよく刃が押し込まれて、さらにセルメダルと黄色のものが出てきた。
と、同時にカザリの体から力と色が抜け、黒になる。


「まさか……!?」

「油断したのはお前だ、カザリ!」


背後から、ヴァルツの声が聞こえた。


『カザリが邪魔するだろうから、一芝居うつ必要がある』

『芝居を?何で?』


首を傾げる勝利に、月音は少し嫌そうな表情をする。
まだリ・イマジ平成二期の世界が九つだった頃や、視聴者側だった頃での「オーズ」の世界でのカザリの行動を思い出して。


『カザリは悪知恵が働くというか、頭がいいというか、用心深いというか………奴は自分が生み出したヤミーの周りをうろつくことがある。だから芝居が必要なんだ』


なるほどと頷く勝利。
作戦会議の時の月音の読みは当たっていた。
カザリはチーターヤミーの周りをうろついていたのだ。
故にシャドーヴァイパーを使った際、ヴァルツはチーターヤミーを羽交い締めにして自分がその技を使っている時に羽交い締めしてるから動けないというフリをし。
月音はわざと大きく隙を作った。

拘束技が使える仮面ライダーは、大きく分けて二種類に分かれる。
一つは自分の体や武器などで拘束することで、動きや攻撃に制限がかかりやすくなる者。
もう一つは自分の体や武器などから切り離せるもので拘束することで、自由に動ける者。
カザリがヴァルツを後者であると知らなかったが故に、出来た作戦である。

動きにくい体に鞭を打って、月音は自分の横に溜まったメダルに手を突っ込む。
目当てのもの――――トラのコアメダルを見つけると、それを勢いよく投げた。
こちらに向かってくる人影・・・・・・・・へと。


「―――受け取って!!エイジ・・・さん!!」


人影……オーズドライバーを装着した、無傷のエイジは投げられたトラコアメダルを掴んだ。


『カザリが現れたら私が囮になるから、椿はヴァルツクロー…だったか?それでカザリを後ろから胸を突き刺して、トラのコアメダル………黄色いメダルを奴から抜いてほしい』

『それはいいけど、そのメダルはどうするんだ?』

『俺が使って…ヤミーになった人を助けるよ…』

『!?』


作戦会議の途中から目覚めたエイジの声に、二人が驚く。
二人で止めたものの、彼は自分が変に説明したからその責任だと言って止まらなかった。
せめてもと勝利がリヒトカプセルを起動させ、傷や体力を回復する技────フォトンヒーリングで治療したことで無傷となった。
14/26ページ