欲望と罪と世界

素早く走り続けていたチーターヤミーが、動きを止めた。
キキッ、という音を立てて地面には二本の黒い筋が残る。
チーターヤミーの前にいるのはエクスライザーを持ってカプセルホルダーを装着した勝利と、ディリンクドライバーを装着した月音だ。


「いいか?なるべく手筈通りに頼む」

「分かったけど、気をつけろよ」


ああ、と月音が勝利に返す前にチーターヤミーが二人に襲いかかる。
月音は片足を庇いながら右へ、勝利は左へ避ける。
着地しながらリヒトカプセルとドゥンケルカプセル、ディリンクのライダーカードを取り出した。
カプセルを起動させ、ホルダーやドライバーへと装填する。


《リヒト!》

《ドゥンケル!》

「変身!」

《デュアルフュージョン!ヴァルツ!ベーシック!》

『カメンライド、ディリンク!』

《光と闇のマリアージュ!今こそ立ち上がれ最強のライダー!! 》


ディリンクとヴァルツに姿を変えた二人。
チーターヤミーは素早く離れ、二人を睨む。
ガンモードのライドブッカーを構えるディリンクへと、チーターヤミーが襲いかかる。


《リヒト!バースト!》

「ふっ!」


が、フォトンダッシュで高速移動が可能になったヴァルツが弾いた。
弾かれたチーターヤミーは体勢を整えると、二人の周囲を走り回る。
時折、攻撃をされるがフォトンダッシュの副次効果で視認が出来るヴァルツが捌き、自分とディリンクを守る。


『椿、ヴァルツには高速で動ける技があるか?もしくは速く動く相手を普通に見ることが出来る技』

『ちょうど、その二つが合わさったやつがあるけど…』

『なら良かった……お前には、私の“目”になってもらいたい』

『目?』


「ささめゆき」で体を休めながらの作戦会議を思い出す。
真剣な表情をしていた月音は少し苦いものに変えると、頷く。


『ああ……一番いいのは私が高速で動く相手を見抜くことだが、対応が出来そうなカメンライドやフォームライドのカードが無い』

『でも何で俺が月音の“目”に…』


少し分かっていなさそうな勝利に、月音は。


『私は足留めを担当するから、タイミングと位置を見てもらいたいんだ。失敗しても責任は私が取る、だからその合図だけをしてほしい』


戦士としての雰囲気で、そう告げた。
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