欲望と罪と世界

ディリンクとディケイドがぶつかりあい始めた頃。
勝利とエイジは、勝利がこの世界に現れた場所……路地裏へと来ていた。


「見つからないね…」

「ですね…」


手掛かりになりそうなものはないかと探していたが、何も見つからなかった。
仕方ないのでそこから出て、歩き始める。


「そういえば、椿くんってどうやって月音ちゃんと会ったの?」

「あー……この世界に来た時に…」


エイジからの問いに勝利が答えようとした時。
何かの鈍い音が響いてきた。
それは後ろから聞こえてくる。
思わず足を止めて互いに見合ってから、後ろを振り向いた。

そこにいたのは、こちらに向かって走ってくる人型の“何か”。
とても素早いそれに、思わず驚くがエイジがすぐに勝利の腕を掴んでその場から離れる。
同時に、彼らが立っていた場所を“何か”が通りすぎた。
が、少し離れた場所で立ち止まった“それ”は、こちらへと振り向く。

細く、しなやかな胴体と長めの四肢は茶色の斑点が散る金色の毛に包まれている。
頭部は小さめで黄褐色な目の内角から口にかけて、黒い筋模様が入っている。
口は開かれ、鋭い歯が丸見えになっていて爪は剥き出しだ。
その姿はまるで、チーターを無理矢理に人型へと歪めたようなもの。

何回か似たような存在と戦っているエイジは、すぐに気づいた。


「ヤミー……!」

「え、ヤミー?」


ヤミーとは何なのかと勝利が尋ねようとした時。
“それ”……チーターヤミーの隣に、別のモノが現れる。

頭部はドレッドヘアーのように編まれたライオンの様な鬣を持ち、鋭い牙が口元から見えている。
虎の様な縞模様のボディを、黒いパンクパッションで包んだような存在。
───猫科動物の特徴を持つ、黄のグリード・カザリ。
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