漆黒の戦士、来訪
「何だ、あの怪人…カマキリか?」
いつの間にか来ていた少年が、カマキラスドーパントを見て呟く。
声が聞こえて思わずそちらを見て、少年の存在に気づいた月音は驚く。
だがすぐに声をかけた。
「何をやっている!?早く逃げろ!」
「いや、怪人の相手は俺の役目だ」
「は?」
何を言ってるんだ、こいつという目で少年を見る月音。
その隙を狙ってカマキラスドーパントは彼女に攻撃を仕掛ける。
気配に気づいた月音は嫌そうな表情になると。
「使いたくなかったが……!」
月音の前に銀灰色のオーロラが現れ、壁となってカマキラスドーパントの鎌を防ぐ。
カマキラスドーパントは呻き、僅かに後退りする。
ライドブッカーを構え直すと、少年が近づいてきて。
「お前が犯人か!」
「黙れ、うるさい」
「ごめんなさい」
少年の事情を知らないため、何のことなのか分からないが冤罪になりかけた。
本能的に理解した彼女が低い声で言うと、彼はすぐに謝る。
「と、そんなこと言ってる場合じゃないか」
そう言って真剣な表情になった少年は赤と黒のカラーリングに施された、握力測定の時に使われる道具みたいな機械──エクスライザーを取り出す。
そして左手首にカプセルを納めるようなホルダー──カプセルホルダーが自動で装着される。
二本のカプセルのような機械──ライダーカプセルを両手に持つ。
《リヒト!》
一本目のライダーカプセル、リヒトカプセルを起動するとホルダーに装填。
白の幻影が少年の隣に並び立つ。
《ドゥンケル!》
二本目のライダーカプセル、ドゥンケルカプセルも起動するとホルダーに装填。
黒の幻影も少年の隣に並び立つ。
「変身!」
二つの幻影が隣に並び立った時、彼はエクスライザーのトリガーを引き、読み込ませる。
《デュアルフュージョン!ヴァルツ!ベーシック!》
《光と闇のマリアージュ!今こそ立ち上がれ最強のライダー!! 》
白と黒、二つの幻影は少年に折り重なり、堅固な装甲へと構成される。
そして、その場に現れたのはところどころに赤と黄のラインが走る、闇に溶け込みそうな漆黒の鎧に炎のように燃えるような真っ赤な複眼の戦士。
───仮面ライダーヴァルツが、この世界に顕現した。