団体客

厨房に「ささめゆき」の店長と店員が入ってから少しして。
水を飲む士へと、ソウジが声をかけた。


「それで?」

「……いきなり何だ?」

「俺達を集めてここに来たのは理由があるんだろう?」


その言葉に少し黙ってから、士が口を開く。


「……………まぁ、な。月音の店に興味があって来店も構わんが、近々俺だけはしばらくはここに来ることが出来ない気がしてな」

「え、何で」

「それは分からん。が、おそらくだがその『しばらく』が終われば気兼ねなく来れるだろうな」


夏海の質問にそう返し、士は絵を見る。
自分が夏海や、この場にいない光栄次郎とともに光写真館で旅をしていた時、次の世界を示す絵が描かれたスクリーンがあった。
この喫茶店「ささめゆき」では、月音が買ってきた桜の絵がその代わりとなっている。
それは変わることがなく、ただただそこにある。


「何があるかは知らんが、月音に………娘に害があるものは俺が破壊する。だが、俺が動けない時はお前らに任せる。座標は覚えただろ」

「確かに覚えましたが…」


思わずワタルが苦笑してしまう。
月音との“繋がり”を持ったせいだろうか。
士と海東、月音以外にもリ・イマジネーションの方のライダー達は、世界を越えての移動が出来るようになってしまったのだ。


「なるほどね……ま、僕も介入出来るかは分からないけど」

「お前には期待していない」

「それはどういうことかな?」


再び士を睨む海東を見つつ、多分師匠が介入して頑張ってもおじさん呼びはされ続けると思う…、とアスムは内心で呟く。
口に出したら自分も睨まれるので、絶対に言う気はないが。

その後、料理が運ばれてきたが「家族割引で半額にするが、お父さんが払えよ?」と娘に言われた父親がいたらしいが……誰なのかは記さないでおく。
ただし支払いの時にワタルとアスム以外で割り勘にしたとかしてないとか…。
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