ウィザードの世界
喫茶店を出るとオーロラが現れ、通過していく。
月音は自分の服装を確認する。
黒のロングコートにボタン部分に沿うようにフリルがあるイエローのYシャツ、膝丈の黒のプリーツスカート。
頭に触れると髪飾りのような、小さいシルクハットがある。
「地味な女マジシャン……?いや、普通な感じかな?」
女マジシャンの衣装の基準が分からず、首を傾げる。
けど、気にすることなく予定を確認する。
「まずはコンビニや商店街に行って物価とかの確認しつつ情報収集だな」
そう呟き、店から離れて歩き始める。
目立つ服装に少々げんなりとした表情だが、これがこの世界での役割ならば仕方ないと割り切る。
適当に歩いてみるが、月音にとってこの世界にあるここは、土地勘どころかまったく知らない場所。
とりあえず帰りに必要な、途中までの道にある特徴は携帯のカメラで撮影する。
「………………やっぱり」
携帯で撮影したいくつかの写真を確認し、ため息を吐き出す。
どの写真も被写体は歪んでおり、ぼやけていたり二重になっていたりする。
まるで、仮面ライダーディケイドの主人公である門矢士のように。
昔から月音が撮影した写真や、描いた風景画などは必ずこのように歪んでしまう。
昔は悩んでいたが、今は元が何なのか分かればいいや精神で気にしなくなった。
迷いかけてきてる自覚が出たため、一度立ち止まる。
そこはどこかの広場らしき場所で、疲れてきたので休憩しようと座るところを探す。
と、ピンク色の移動販売車を見つける。
ガラスケースの中には様々なドーナツがあり、移動販売車の前にはいくつかの椅子とテーブルがある。
情報収集を兼ねた休憩にしようと決め、その車へと近づく。
「すみませーん」
「はーい!」
一人の女性が笑顔で現れる。
「いらっしゃいませ~、ドーナツ屋「はんぐり~」へようこそ~!どのドーナツにいたしますか?」
「そうですね…」
言われ、ガラスケースの中に並べられたドーナツを見る。
プレーンにチョコ、イチゴなど色々とある。
しばらく悩んでいたが、決めきれなかったのか苦笑して女性を見上げた。
「すみません、何かオススメとかありますか?どれも美味しそうで…」
「嬉しいこと言ってくれますね。知り合いの常連のお客様はプレーンシュガーを買いますね~。ちなみに私のオススメは…」
女性は何故か車の中に引っ込むと、皿を持ってきて。
「本日のオススメスペシャル!バーコードドーナツで~す!」
皿には太さが違う、線のようになったチョコをイチゴチョコがかかったドーナツに乗せたそれがあった。
ドーナツに乗せられたチョコは隙間がほぼ無くて、バーコードのようになっている。
「なるほど、確かにバーコード………これにします。あ、食べていきます」
「はーい、お席に着いて少しお待ちください。お会計は二百円になります」
「えっと……これで」
「はい、ちょうどですね」
嬉しそうな女性の様子に微笑み、椅子に座って待つ。
少しすると、女性がドーナツの乗った皿と水の入ったグラスが運んできてくれた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
皿とグラスを受け取り、自分の前に置く。
流れるようにドーナツを手に取り、口に近づけると一口食べる。
「美味しい…」
「そう言っていただけて嬉しいです」
「あ……それと、聞きたいこともあるのですが大丈夫でしょうか?」
「大丈夫ですよ」
ありがとうございますと礼を言い、自分の隣の椅子に座るように促す。
少しの間だけ悩む女性だが、他に客が来ていないのもあってか素直に椅子に座った。
「実は、昨日ここに来たばかりでして………コンビニや商店街とかの場所が分からなくて…」
「あら、そうなんですね。ここから行くのと、簡単な地図で良ければ描きましょうか?」
「いいんですか?」
「ええ」
「なら、その…お願いします」
少し恥ずかしそうにしながら頼む月音。
女性はメモ帳とペンを取り出すと、さらさらと簡易的な地図を描く。
メモ帳から切り離したそれを月音に渡すと、彼女は安心したような表情になる。
「ありがとうございます………ええと…」
「あ、私はこの「はんぐり~」の店長で門倉 リンコです。お客様は?」
「私は星宮月音と申します。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
門倉リンコ……つまりは、大門凛子のリイマジか。
察した月音は挨拶しながらも考える。
リンコということは、彼女がゲートの可能性がある。
どうしたものかと内心で呟き、ドーナツを食べながら話していく。
話していくうちに女性―――リンコは、少しずつ砕けた口調になっていく。
「私ね、昔からドーナツ屋をするのが夢だったの」
「そうなんですか?」
「そうなの。ドーナツが好きだからっていう理由だけど」
ふふっ、と笑うリンコ。
「大変な時もあるけど、すごく楽しいわ。好きな物に囲まれてるっていうのもあるけどね」
「分かります、すごく分かります」
うんうんと頷く。
現在は高校生でありながら喫茶店の店長をしている月音も、喫茶店が好きなので好きな物に囲まれて楽しい気持ちが分かるのだ。
「だから言っちゃうと、「はんぐり~」は私の希望かな」
照れたような表情のリンコ。
微笑ましい気持ちで月音は見ていたが。
「そうか、それが貴様の希望か」
一つの声が、降ってきた。
月音は自分の服装を確認する。
黒のロングコートにボタン部分に沿うようにフリルがあるイエローのYシャツ、膝丈の黒のプリーツスカート。
頭に触れると髪飾りのような、小さいシルクハットがある。
「地味な女マジシャン……?いや、普通な感じかな?」
女マジシャンの衣装の基準が分からず、首を傾げる。
けど、気にすることなく予定を確認する。
「まずはコンビニや商店街に行って物価とかの確認しつつ情報収集だな」
そう呟き、店から離れて歩き始める。
目立つ服装に少々げんなりとした表情だが、これがこの世界での役割ならば仕方ないと割り切る。
適当に歩いてみるが、月音にとってこの世界にあるここは、土地勘どころかまったく知らない場所。
とりあえず帰りに必要な、途中までの道にある特徴は携帯のカメラで撮影する。
「………………やっぱり」
携帯で撮影したいくつかの写真を確認し、ため息を吐き出す。
どの写真も被写体は歪んでおり、ぼやけていたり二重になっていたりする。
まるで、仮面ライダーディケイドの主人公である門矢士のように。
昔から月音が撮影した写真や、描いた風景画などは必ずこのように歪んでしまう。
昔は悩んでいたが、今は元が何なのか分かればいいや精神で気にしなくなった。
迷いかけてきてる自覚が出たため、一度立ち止まる。
そこはどこかの広場らしき場所で、疲れてきたので休憩しようと座るところを探す。
と、ピンク色の移動販売車を見つける。
ガラスケースの中には様々なドーナツがあり、移動販売車の前にはいくつかの椅子とテーブルがある。
情報収集を兼ねた休憩にしようと決め、その車へと近づく。
「すみませーん」
「はーい!」
一人の女性が笑顔で現れる。
「いらっしゃいませ~、ドーナツ屋「はんぐり~」へようこそ~!どのドーナツにいたしますか?」
「そうですね…」
言われ、ガラスケースの中に並べられたドーナツを見る。
プレーンにチョコ、イチゴなど色々とある。
しばらく悩んでいたが、決めきれなかったのか苦笑して女性を見上げた。
「すみません、何かオススメとかありますか?どれも美味しそうで…」
「嬉しいこと言ってくれますね。知り合いの常連のお客様はプレーンシュガーを買いますね~。ちなみに私のオススメは…」
女性は何故か車の中に引っ込むと、皿を持ってきて。
「本日のオススメスペシャル!バーコードドーナツで~す!」
皿には太さが違う、線のようになったチョコをイチゴチョコがかかったドーナツに乗せたそれがあった。
ドーナツに乗せられたチョコは隙間がほぼ無くて、バーコードのようになっている。
「なるほど、確かにバーコード………これにします。あ、食べていきます」
「はーい、お席に着いて少しお待ちください。お会計は二百円になります」
「えっと……これで」
「はい、ちょうどですね」
嬉しそうな女性の様子に微笑み、椅子に座って待つ。
少しすると、女性がドーナツの乗った皿と水の入ったグラスが運んできてくれた。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
皿とグラスを受け取り、自分の前に置く。
流れるようにドーナツを手に取り、口に近づけると一口食べる。
「美味しい…」
「そう言っていただけて嬉しいです」
「あ……それと、聞きたいこともあるのですが大丈夫でしょうか?」
「大丈夫ですよ」
ありがとうございますと礼を言い、自分の隣の椅子に座るように促す。
少しの間だけ悩む女性だが、他に客が来ていないのもあってか素直に椅子に座った。
「実は、昨日ここに来たばかりでして………コンビニや商店街とかの場所が分からなくて…」
「あら、そうなんですね。ここから行くのと、簡単な地図で良ければ描きましょうか?」
「いいんですか?」
「ええ」
「なら、その…お願いします」
少し恥ずかしそうにしながら頼む月音。
女性はメモ帳とペンを取り出すと、さらさらと簡易的な地図を描く。
メモ帳から切り離したそれを月音に渡すと、彼女は安心したような表情になる。
「ありがとうございます………ええと…」
「あ、私はこの「はんぐり~」の店長で
「私は星宮月音と申します。よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
門倉リンコ……つまりは、大門凛子のリイマジか。
察した月音は挨拶しながらも考える。
リンコということは、彼女がゲートの可能性がある。
どうしたものかと内心で呟き、ドーナツを食べながら話していく。
話していくうちに女性―――リンコは、少しずつ砕けた口調になっていく。
「私ね、昔からドーナツ屋をするのが夢だったの」
「そうなんですか?」
「そうなの。ドーナツが好きだからっていう理由だけど」
ふふっ、と笑うリンコ。
「大変な時もあるけど、すごく楽しいわ。好きな物に囲まれてるっていうのもあるけどね」
「分かります、すごく分かります」
うんうんと頷く。
現在は高校生でありながら喫茶店の店長をしている月音も、喫茶店が好きなので好きな物に囲まれて楽しい気持ちが分かるのだ。
「だから言っちゃうと、「はんぐり~」は私の希望かな」
照れたような表情のリンコ。
微笑ましい気持ちで月音は見ていたが。
「そうか、それが貴様の希望か」
一つの声が、降ってきた。