プロローグ

白とイエローの体に青の複眼。
胸に描かれた黒の外側に白の内側で十字が描かれたという戦士。
自分の体を見下ろし、確認してから月音はライドブッカーをソードモードに変える。
刃が現れたそれを構え、ロイミュードにすぐに接近する。
ロイミュードは月音──ディリンクを攻撃しようとするが、彼女は避けるとライドブッカーで斬りかかった。
それを受けたロイミュードが後退り、ディリンクはバックルを展開させるとあるカードを取り出す。
カードをバックルに入れて閉じると、何かの衝撃波のようなものが放たれた。
それは重加速……通称は「どんより」と呼ばれている、ロイミュードの持つコア・ドライビアによって発生する現象。
ロイミュード以外、全ての動きがまるでテレビのスローモーションのようにゆっくりと動くが……。


『カメンライド』


バックルがカードの認証を終えることに、支障はなかった。


『ドライブ!』

『ドライブ!タイプ、スピード!』


するとディリンクの姿がドライバー以外が変わる。
タイヤを襷のように斜めにかけた、赤いスポーツカーを模したような戦士──仮面ライダードライブ・タイプスピードへと。
ディリンクドライブは自動的に搭載されたシフトカーによって重加速の影響を打ち消し、動きのスピードを取り戻す。
戸惑うロイミュードを無視し、ライドブッカーで連続で斬りつける。
傷つくロイミュードは逃亡しようとするが、Dドライブはバックルを開いて新たなカードを取り出して入れ、閉じる。


『ファイナルアタックライド、ド、ド、ド、ドライブ!』


どこからかタイヤを積み重ねたような形状のエネルギー波が四連続で射出され、四方向から猛回転させてロイミュードを抑え込んだ。
またどこからか赤い車、トライドロンが現れる。
トライドロンはロイミュードの周りを超スピードでぐるぐると回って走る。
Dドライブはメリーゴーランドのように走り続けるそれの壁面を蹴り、真ん中にいるロイミュードに何十発もの蹴り───必殺技「スピードロップ」を素早く浴びせまくる。
そして着地するとすぐには止まらずに滑り、その摩擦でドライブの足の裏から炎や煙が上がった。
同時にロイミュードが爆散し、ふよふよと三つの数字───コアナンバーが浮かんだかと思うと儚い音を立てて砕けた。

バックルが開いてカードが飛び出てくると、それを掴む。
Dドライブからディリンクの姿に戻りながら描かれたその絵を確認し、小さく呟く。


「ドライブの力が消えたか」


描かれていたドライブの色が消えている。
意味を知ってるために気にせずにライドブッカーに仕舞うと、体に衝撃が走った。
衝撃があった方向を見れば、ドーパントがいた。
ドーパントは素早く動き、ダメージを与えていく。


「ドーパントにはこの人達の力だな」


後退し、距離を取って別のカードを取り出してバックルに装填し、閉じる。


『カメンライド、W!』


ディリンクの姿が首にマフラーのついている緑の右半身、黒の左半身というアシンメトリーな戦士───仮面ライダーW・サイクロンジョーカーへと変化する。
ドーパントの動きにDWは対応し、拳や蹴りを浴びせる。
風を纏った素早く鋭い攻撃に、徐々にドーパントが押されていく。
ハイキックを食らわせて距離を取り、バックルを開いて取り出したカードを装填、再び閉じる。


『ファイナルアタックライド、ダ、ダ、ダ、W!』


渦巻く緑の風を纏い、マフラーをひらめかせてDWが上昇する。
そして両足での蹴りの体勢に入るとドーパントへと向かっていく。
その途中で真ん中から縦に真っ二つとなってずれ、左半身が手前に動いた。
そのままドーパントにまずは左半身、遅れて次に右半身による二連続の蹴り───必殺技「ジョーカーエクストリーム」を食らわせた。
ドーパントが爆散し、元の体に戻って着地するとDWからディリンクに姿を戻す。

飛び出したカードを掴んで仕舞いながら、隠れることもしなかった聖を見た。
彼は薄く笑みを浮かべ、そこに立っていた。


「聖…さん、でしたね。あなたはこの世界で何が起こっているのか、知っているんですか?」

「まぁ、知っているね。けど、その前に場所を変えようか」


聖はそう言うと、ぱちんと指を鳴らす。
二人の近くに銀色のオーロラが現れ、揺らめきながらそのまま二人を飲み込んだ。


「変身が解けてる……それに、ここって…」


ディリンクから元の姿に戻った月音は、オーロラから出た場所を見て驚く。
閉店し、片付けがされている喫茶店───自宅であり、現在は自分が店長をしている店だ。
聖は勝手にテーブルに逆さに乗せられていた椅子の向きを戻して下ろし、座る。


「さて、説明しようか。あの怪人達はこの世界に隠されたとある“モノ”を探して現れた」

「とある“モノ”?」

「そう。そしてその“モノ”はディリンク……つまりは君の存在が“鍵”となる」


自分が“鍵”?
どういうことなのか分からず聖を見ていたが、彼は薄く笑みを浮かべたまま。


「さぁ、月音君。君が育ったこの世界を救いたいのなら……九つの世界を巡ってもらうよ」


月音に何かを言わせることはせず。
再びオーロラが現れ、その店を飲み込んだ。









▽▽▽▽▽





とある世界。
二人の男が向かい合わせに立っていた。
一人は白い服を着て、ストールを巻いた男。
もう一人はマゼンタ色のトイカメラを首にかけた男


「───ディケイド、彼女がディリンクに目覚めました」

「…そうか」

「今度こそ、彼女を消さなくてはいけません」


ストールの男の言葉に、カメラの男はただ。
何も言わずに目を閉ざした。
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