プロローグ

授業が終わり、放課後になって校舎を出ていた月音は商店街を歩く。
そして思い出すのは、あの夢。


「ライダー大戦っぽいよなぁ…」


小さく呟き、馴染みのスーパーに入ると買い物を始めた。
その間にも考えてしまう。

平成二期のライダー達が二人いて、片方は一期のライダーと一緒にもう片方と戦っていた。
ディケイドにそっくりだが色の違う、見慣れない仮面ライダー。
まるでライダー大戦のようで、けれど違うような戦い。

彼女は思わずため息を吐き出した。
六年ほど前から彼女はこの夢を何度か見ていた。
きっかけは覚えていない。
ただ、気づいたら仮面ライダーという番組を見ていた。
初めて見た仮面ライダーが何かは、覚えていないが。


「あとは…」


最後にお菓子のコーナーに行って、いつものものをカゴに入れてレジに行く。
空いてるレジに入り、精算と支払いをして袋詰めにするとスーパーを出た。
そして、家に帰ろうと道を歩き始めた時。


「ねぇ、あれ…」

「撮影か何かか?」

「ママー、あれなにー?」

「あら…」


そんなざわつきと、人だかりが見える。
不思議に思った月音は人だかりに近づき、その隙間から見ようとする。
が、見えない。
仕方ないので近くにいる男性に尋ねた。
 


「すみません、何かあったんですか?」

「ん?ああ……なんか特撮の怪人がいるんだよ。でもカメラやマイクとかのスタッフがいなくてさぁ」


ほら、と男性が場所を少し移動して月音にも見えるようにする。
月音は礼を言って、そこから人だかりの視線の先を見た。
そこにいたのは、灰色の怪人とステンドグラスのような怪人。
何かを探すように見渡している、見覚えのある二体に言葉が漏れた。


「オルフェノクとファンガイアだ…」

「お、知っているのかい?」

「はい。仮面ライダーが好きでして…」


そんな会話をしていると、オルフェノクが人だかりを見た。


「見つけた……!」


オルフェノクがにやりと笑みを浮かべると瞬時に触手を出して、人だかりの何人かに突き刺す。
え、と声を漏らした者や、自分に突き刺さった触手を見る者。
彼らの体内で心臓が青い炎で燃やされ、消えた。
すると彼らは灰になった。


「え、嘘」

「もしかして、あいつら……本物?」

「そんな」


ざわつきが起こり、今度は透明な牙のようなものが別の人物に突き刺さった。
その牙に生命力───ライフエナジーを吸われたその人は透明になり、倒れる。
あり得ない異常な光景に全員が固まってしまう。


「き…キャアアアアアアアアア────!!」


女性の悲鳴が響き渡る。
それと同時に人々は逃げ出した。
月音も逃げながら、嫌な感覚を覚えていた。
オルフェノクが、自分を見ていたような感覚を。
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