ウィザードの世界
黒い服装の男と、明るい色の服装の男。
二人の男にディリンクは見覚えがあった。
「剣崎一真……城戸真司……」
剣崎はディケイドの時のか…。
小さな声の呟きは聞こえなかったのか、誰も反応しない。
黒い服装の男───剣崎一真は無表情にディリンクを見て、僅かに目を細める。
明るい色の服装の男───城戸真司はディリンクを見て辛そうに表情を歪めていたがすぐに戻し、ウィザードの方へと向き直る。
二人の手には、ディリンクにとって見慣れたものがあった。
嫌な予感を覚える彼女と、不思議そうにするウィザード。
剣崎はそれ───ブレイバックルにカテゴリーAのラウズカードをセットして腰に押し付け、真司はそれ───カードデッキを突き出すとベルトが出現して固定される。
「まさか…」
「変身」
『Turn up』
『EVOLUTION K』
予感が的中した彼女の呟きは、剣崎と真司の声に掻き消される。
ターンアップハンドルを引いた剣崎の、カードデッキをVバックルに装填した真司の姿が変わる。
青のスーツに重厚感ある黄金の鎧、赤い複眼という姿────仮面ライダーブレイド・キングフォーム。
赤のスーツに銀の軽鎧のようなアーマー、多くスリットの入った仮面から覗く赤い複眼という姿────仮面ライダー龍騎。
原典 である仮面ライダーが二人、この場に君臨する。
思わずライドブッカーを構える。
「龍騎、分かっているな?」
「……ああ」
「なら、いい」
重醒剣・キングラウザーを構えたブレイドKFは、躊躇いなくディリンクへと接近、得物で斬りかかる。
構えていたライドブッカーで防ぐが、変身していてもなお伝わる衝撃で腕に僅かに痺れが走る。
すぐに距離を取るが、その重厚な見た目とは違い、意外にもブレイドKFは素早く詰めていく。
『ソードベント』
驚くウィザードに接近した龍騎は召喚したドラグセイバーで斬りかかる。
が、ウィザーソードガンで防いだウィザードは蹴りで反撃を仕掛ける。
すぐに龍騎は後退して距離を取った。
「おい、ディリンク、こいつらお前の仲間か!?」
「どうやったらそう見えるんだ!?てか、私は明らかにもっと強い方に現在進行形で攻撃されてるんだぞ!!」
思わず敬語を外してツッコミを入れながらも、ブレイドKFからの攻撃をなんとかいなしたり防ぐディリンク。
その間にも、ブレイドKFは容赦なく攻撃していく。
「くそっ、何なんだ、お前らっ!」
「仮面ライダー」
龍騎が静かな声で、ウィザードの言葉に答える。
ウィザードだけでなく、避難を始めていた女性とリンコはその答えに驚く。
仮面ライダー。
基本は指輪の魔法使いと呼ばれてたり、自称するウィザードでも時折、そう名乗ることがあるもの。
人類の自由と平和を──ウィザードは希望──を守る戦士達へ送られる、呼称。
それを、龍騎が告げたのだ。
動揺するウィザードへと、彼は知らないが本来ならば明るい性格のはずの龍騎には似合わない声で、龍騎は告げる。
「俺達はあの子を、……ディリンクを倒さないといけない。あの子が何も知らないうちに、何も、気づかないうちに」
あの子。
ディリンクをそう呼ぶ、変身する前の龍騎の表情を思い出す。
辛そうに歪めた表情。
それを思い出した瞬間に、体が動く。
息も上がりきり、ふらつき始めた体をなんとか動かし、ディリンクはブレイドKFの斬撃をかわす。
限界が近いことを悟ってマスクの下で歯噛みする。
だが、それは無理もないことだった。
ディリンクは平和な世界で平和に生きて、訓練もなく戦い始めたばかりな上にミノタウロスと二度の戦闘やほぼ防戦していたとはいえウィザードとも戦ったのだ。
しかもミノタウロスとの初戦はダメージによる強制解除がされた直後、再変身までしている。
短い時間に合計で四度も戦っている。
これで負担が少なかったら、おかしい話だ。
「……ぁ…っ…」
ブレイドKFから後退して距離を取った瞬間、再び目眩を覚えたと思えば足の力が抜ける。
片膝を地面につけ、ライドブッカー・ソードモードを地面に突き立てて完全に倒れるのを防ぐ。
が、顔を上げた時には既に、ブレイドKFが接近していた。
振り上げられたキングラウザーが振り下ろされ…。
『コネクト、プリーズ!』
背後に現れた魔法陣から手が生え、ディリンクの首根っこを掴んだ。
かと思えば、そのままぐいっと引っ張る。
ブレイドKFはぎょっと驚き、ディリンクがいなくなったせいでキングラウザーは空を切る。
体勢を立て直し、ウィザードの方を見れば。
────────ウィザードに大人しく首根っこを掴まれたままのディリンクと、「バインド」の魔法によるものらしく魔法陣から生えた鎖に拘束された龍騎がいた。
龍騎に関しては、ご丁寧にドラグセイバーにも鎖が巻き付いていた。
ガンモードのウィザーソードガンの銃口を向けられ、マスクの下で舌打ちする。
「失敗、か」
「そーみたい……あの、助けてくださ」
「自力で抜け出せ」
「ちょっ!?あー……ドラグレッダー!」
頼みをブレイドKFが一刀両断と言わんばかりに断られた龍騎は、少し考えてから何かの名前を呼ぶ。
すると独特の高い音が鳴り、それまで大人しくしていたディリンクが自分を掴むウィザードの腕を引っ張って伏せた。
「はんぐり~」のドーナツが入ったショーケースのガラスから、何かが飛び出てくると器用に龍騎を拘束する鎖だけを破壊する。
東洋のものによく似た、短い手足を持つ黄の瞳の赤い龍───無双龍ドラグレッダー。
ミラーモンスターであり、龍騎と契約しているドラグレッダーは彼を自分の背へと乗せる。
ブレイドKFは銀のオーロラを出現させる。
そして、ぼんやりとドラグレッダーを見上げてるディリンクを見た。
「……ん?」
「…ディリンク、忘れるな。俺は、俺達はお前を必ず倒す」
「………」
視線に気づいたディリンクへ告げるが、彼女は無言でいた。
既にオーロラへと入った龍騎とドラグレッダーに続くように、彼も入っていく。
と、緊張が解けたのかディリンクの変身が解除され、あっさりと意識を手放してしまう。
「え?女の、子?」
驚愕したような、ウィザードの声を最後に聞いて。
二人の男にディリンクは見覚えがあった。
「剣崎一真……城戸真司……」
剣崎はディケイドの時のか…。
小さな声の呟きは聞こえなかったのか、誰も反応しない。
黒い服装の男───剣崎一真は無表情にディリンクを見て、僅かに目を細める。
明るい色の服装の男───城戸真司はディリンクを見て辛そうに表情を歪めていたがすぐに戻し、ウィザードの方へと向き直る。
二人の手には、ディリンクにとって見慣れたものがあった。
嫌な予感を覚える彼女と、不思議そうにするウィザード。
剣崎はそれ───ブレイバックルにカテゴリーAのラウズカードをセットして腰に押し付け、真司はそれ───カードデッキを突き出すとベルトが出現して固定される。
「まさか…」
「変身」
『Turn up』
『EVOLUTION K』
予感が的中した彼女の呟きは、剣崎と真司の声に掻き消される。
ターンアップハンドルを引いた剣崎の、カードデッキをVバックルに装填した真司の姿が変わる。
青のスーツに重厚感ある黄金の鎧、赤い複眼という姿────仮面ライダーブレイド・キングフォーム。
赤のスーツに銀の軽鎧のようなアーマー、多くスリットの入った仮面から覗く赤い複眼という姿────仮面ライダー龍騎。
思わずライドブッカーを構える。
「龍騎、分かっているな?」
「……ああ」
「なら、いい」
重醒剣・キングラウザーを構えたブレイドKFは、躊躇いなくディリンクへと接近、得物で斬りかかる。
構えていたライドブッカーで防ぐが、変身していてもなお伝わる衝撃で腕に僅かに痺れが走る。
すぐに距離を取るが、その重厚な見た目とは違い、意外にもブレイドKFは素早く詰めていく。
『ソードベント』
驚くウィザードに接近した龍騎は召喚したドラグセイバーで斬りかかる。
が、ウィザーソードガンで防いだウィザードは蹴りで反撃を仕掛ける。
すぐに龍騎は後退して距離を取った。
「おい、ディリンク、こいつらお前の仲間か!?」
「どうやったらそう見えるんだ!?てか、私は明らかにもっと強い方に現在進行形で攻撃されてるんだぞ!!」
思わず敬語を外してツッコミを入れながらも、ブレイドKFからの攻撃をなんとかいなしたり防ぐディリンク。
その間にも、ブレイドKFは容赦なく攻撃していく。
「くそっ、何なんだ、お前らっ!」
「仮面ライダー」
龍騎が静かな声で、ウィザードの言葉に答える。
ウィザードだけでなく、避難を始めていた女性とリンコはその答えに驚く。
仮面ライダー。
基本は指輪の魔法使いと呼ばれてたり、自称するウィザードでも時折、そう名乗ることがあるもの。
人類の自由と平和を──ウィザードは希望──を守る戦士達へ送られる、呼称。
それを、龍騎が告げたのだ。
動揺するウィザードへと、彼は知らないが本来ならば明るい性格のはずの龍騎には似合わない声で、龍騎は告げる。
「俺達はあの子を、……ディリンクを倒さないといけない。あの子が何も知らないうちに、何も、気づかないうちに」
あの子。
ディリンクをそう呼ぶ、変身する前の龍騎の表情を思い出す。
辛そうに歪めた表情。
それを思い出した瞬間に、体が動く。
息も上がりきり、ふらつき始めた体をなんとか動かし、ディリンクはブレイドKFの斬撃をかわす。
限界が近いことを悟ってマスクの下で歯噛みする。
だが、それは無理もないことだった。
ディリンクは平和な世界で平和に生きて、訓練もなく戦い始めたばかりな上にミノタウロスと二度の戦闘やほぼ防戦していたとはいえウィザードとも戦ったのだ。
しかもミノタウロスとの初戦はダメージによる強制解除がされた直後、再変身までしている。
短い時間に合計で四度も戦っている。
これで負担が少なかったら、おかしい話だ。
「……ぁ…っ…」
ブレイドKFから後退して距離を取った瞬間、再び目眩を覚えたと思えば足の力が抜ける。
片膝を地面につけ、ライドブッカー・ソードモードを地面に突き立てて完全に倒れるのを防ぐ。
が、顔を上げた時には既に、ブレイドKFが接近していた。
振り上げられたキングラウザーが振り下ろされ…。
『コネクト、プリーズ!』
背後に現れた魔法陣から手が生え、ディリンクの首根っこを掴んだ。
かと思えば、そのままぐいっと引っ張る。
ブレイドKFはぎょっと驚き、ディリンクがいなくなったせいでキングラウザーは空を切る。
体勢を立て直し、ウィザードの方を見れば。
────────ウィザードに大人しく首根っこを掴まれたままのディリンクと、「バインド」の魔法によるものらしく魔法陣から生えた鎖に拘束された龍騎がいた。
龍騎に関しては、ご丁寧にドラグセイバーにも鎖が巻き付いていた。
ガンモードのウィザーソードガンの銃口を向けられ、マスクの下で舌打ちする。
「失敗、か」
「そーみたい……あの、助けてくださ」
「自力で抜け出せ」
「ちょっ!?あー……ドラグレッダー!」
頼みをブレイドKFが一刀両断と言わんばかりに断られた龍騎は、少し考えてから何かの名前を呼ぶ。
すると独特の高い音が鳴り、それまで大人しくしていたディリンクが自分を掴むウィザードの腕を引っ張って伏せた。
「はんぐり~」のドーナツが入ったショーケースのガラスから、何かが飛び出てくると器用に龍騎を拘束する鎖だけを破壊する。
東洋のものによく似た、短い手足を持つ黄の瞳の赤い龍───無双龍ドラグレッダー。
ミラーモンスターであり、龍騎と契約しているドラグレッダーは彼を自分の背へと乗せる。
ブレイドKFは銀のオーロラを出現させる。
そして、ぼんやりとドラグレッダーを見上げてるディリンクを見た。
「……ん?」
「…ディリンク、忘れるな。俺は、俺達はお前を必ず倒す」
「………」
視線に気づいたディリンクへ告げるが、彼女は無言でいた。
既にオーロラへと入った龍騎とドラグレッダーに続くように、彼も入っていく。
と、緊張が解けたのかディリンクの変身が解除され、あっさりと意識を手放してしまう。
「え?女の、子?」
驚愕したような、ウィザードの声を最後に聞いて。