シェアハウス・・?始めちゃいました
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こ、これはっ・・・わ、私、一体どうしたらいいんだろう・・
目の前のバラエティ番組の内容も入ってこない状況に、私はただテレビ画面を睨むしかなかった
【背中のぬくもり】
あー・・今日も疲れた
改札を出て、マンションまでトボトボ歩く
先輩にはもっと周りを見てって言われるし、ミスばっかりして迷惑かけるし・・・
ハァー、とため息をついて重い足を引きずった
明日はひとつでもミス減らして、しっかり動かなきゃ・・・
玄関の扉まで来て、もう一度ため息をつく
『・・よしっ』
気合いを入れて扉を開け、靴を脱いで上がった
皆それぞれ大変なんだから、私がこんな暗い顔して帰っちゃダメだ
なるべく元気に!笑顔で!いつもの様に!
『たっだいまー!』
「おかえり、・・・どうしたの?」
「なんかあったか?」
『えっ!?』
ドアノブを掴んだまま、2人の言動に固まってしまった
『えっ、あ、ん?・・・なんで?』
「なんでって、いつもと違ぇだろ」
「うん、仕事で嫌な事でもあった?」
ええー・・・マジですか
なんなのこのふたり エスパーですか
『・・・・』
まさかのふたりの反応に、言葉が出ず黙っていたら
「・・・取り敢えずさ、これからご飯作るから名前はゆっくりしてなよ」
月島くんが何かを察したように、エプロンを取ってキッチンに向かう
『え、待って!今日は私の・・・!』
当番!と月島くんを追いかけようとした私の腕を、ガッチリと掴まれ振り向くと
『か、影山くん・・!』
「お前はコッチ」
そのままグイッと引っ張られ、テレビの前に座らされた
『ちょっ!ダメだよ、こんなの・・!』
昨日も少し残業して帰ったら、月島くんがもうご飯を作ってくれていた
明日は作るからゴメンねと言ったばかりなのに・・・
立ち上がろうとした私の身体の後ろから、逞しい腕が伸びてきて、抱き竦められ、そのまま影山くんの足の間にストンっと収められた
『ーー〜!!』
何がなんだか分からない内に、影山くんが私の背後に居て、曲げられた長い脚が目の端に映る
これは・・・一体どういう状況なのでしょうか・・・!
『あ、あのっ、影山、くん・・?』
少しだけ後ろを振り向き、声を掛けたけど
「テレビ、なんか見るか?」
『へっ?あ、そのっ・・』
影山くんが喋ると耳元がくすぐったい
「ん、リモコン」
『え、でもっ・・』
「うるせぇ」
ピシャリと嗜められて
でもその声はとても優しく聞こえるのは何故だろう・・
「好きなの見ろ」
『・・・ありがとう』
受け取ったリモコンで、ポチポチとチャンネルを変えてみたけど、テレビなんてそんなことに今は気が回るはずもなく、無難なバラエティ番組を選んだ
うわぁ・・・ヤバい
身動き出来ないよっ・・・
テレビからは笑い声が聞こえてくるが、内容なんて頭に入るわけがない
私に出来ることはただ、小さく体育座りをして、なるべく影山くんの身体に触れてしまうのを阻止するだけ
なのに
すぐ耳元で彼の吐息を感じる
ひゃー・・、緊張し過ぎて、これだけで身体がビクッとなりそう・・!
目をギュッと瞑って、それに耐えている後ろで、影山くんがジッと私を見ていただなんて
そんなこと知らない私は更に身を縮め、ふとキッチンに立たせてしまった月島くんを思い出し、チラッと横目で見ようとした瞬間
『わっ』
肩をグイッと後ろに引っ張られ、トン、と背中に影山くんの広い胸板が当たる
「何小さくなってんだよ、もっとリラックスしろ」
せっかく一緒にゆっくり出来んのに、と影山くんの不服そうな声が上から降ってきて
お腹に腕を回される
あわわわ・・・!うそっ・・!
お腹はヤバいって!
ガッシリとした腕がお腹を包んでいるのを見て、こんなにも自分の脂肪を恨んだのは、いつ以来だろう
こんなのでリラックスなんて出来ないよっ・・!
私の背中を影山くんに預ける形になって、影山くんは大丈夫なのだろうかと思った後に、後ろにソファがあった事を思い出す
たぶん影山くんはそれに身を預けているのだろう
良かった、無駄な労力を使わせてなくて、とホッとする
「・・・腹、減ったな」
ボソッと呟く影山くんに、そうだね、と返事をした
キッチンから美味しそうな匂いが漂ってくる
ふたりの気遣いにこんなに幸せで良いのだろうか・・・と思う
さっきまでの疲れが飛んで行く
背中・・・あったかい・・
私と違って硬い筋肉の、彼の胸元
それでもじんわりと暖かい影山くんの体温が背中に伝わってきて
なんだか 安心する・・・
そんなことを思ってたら、頭にグッと重たい物が乗っかってきた
『か、影山くんっ・・?』
それは彼の頭で、丁度頭のてっぺんには影山くんの顎がきていた
「あー、この体勢すげぇ楽」
『ちょ、ちょっと・・・!』
「抱き枕みてぇ」
『そ、そんなグリグリしたら痛いよ』
「あ、悪ィ」
私の言葉にすぐに離れてくれた影山くん
でもすぐに
「なら、コッチな」
『えっ?』
痛かった頭を指先でスリスリしていた私は、その声に後ろを振り返ると同時に、私の肩に顔を乗せた影山くんの横顔が
どアップで、映し出されて
思わず、声を上げそうになった
唇が触れそうなこんな距離で、影山くんの顔を見たのは初めてかもしれない
ひ、ひぇ〜・・!
影山くんの端正なお顔に心臓のドキドキが止まらない
心の中で叫び声を上げ、平静を装おうとしたのも束の間
今度は首筋に顔を埋めて、スゥーっと鼻で息を吸われた
ゾクゾクゾクっ・・と背筋が震えて、さらに強く身体をホールドされる
も、ムリ・・・
たぶん真っ赤な顔で涙目になりながら、そう思っていると
「・・・名前の匂い、スゲェ落ち着く」
そう呟いてから、もう一度、今度は長めに匂いをかがれる
お、お風呂にも入ってないのにー・・!
『んっ・・かげ、やま、くっ・・!」
耐えられなくて、両手を握りしめ、ぶるぶるっと身体を震わせて呼べば
ガンっ!と何かが当たる音がして
「ーーってぇ!!」
その直後、後ろの影山くんが叫びながら頭を抱えていた
そしてさらに後ろのキッチンで、黒いオーラを出す月島くんに気付く
「言ってることと、やってることが無茶苦茶過ぎ。そんなんで名前がリラックス出来るワケないデショ」
キッチンに立つ月島くんの眼鏡の奥の瞳が、鋭く光っている
つ、月島くん、怒ってる・・・
ふと足元で何かが光った
それはお玉で そして多分
影山くんの頭に当たった物
「ー・・ってぇな!何すんだよ月島ぁ!」
「それはコッチのセリフ、名前に何してたの」
「なにもしてねぇよ!・・・ただちょっとだけ、匂いかいだだけだっつーの」
「それが余計なことデショ。・・・とにかく、あともう少しでご飯出来るから、それまで大人しく名前を休ませてあげて」
じゃないと・・、と手に持っている包丁を顔まで上げる
「次はもっと危ないモノが、飛んでくるかもしれないよ」
キラッと包丁の先が光った
マジの目だ・・・
影山くんもそれが分かっているのか、少し睨んでいたけど、フンっと鼻を鳴らしてそれ以上は何も言わなかった
再びさっきの体勢で影山くんの膝元にいるけど、積極的に密着してくることはしなくなった
その後はクイズ番組を見ながら、影山くんと楽しく雑談して、主に私はツッコミ役だったけど・・でも明日も頑張れるパワーをいっぱいもらえた気がする
「ご飯出来たよー」
『はーい』
「おー」
離れていく影山くんの身体
立ち上がってキッチンに行くその後ろ姿を見て
本当はね
少しだけ
背中の体温が恋しかった・・
内緒だよ