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『フゥー…!』
ボフンっ!とソファへダイブし、クッションに顔を埋めた
そのまま足をバタバタと泳がし、仰向けになると思いっきり伸びをしてみる
『んーっ!……はぁっ、……ヤバっひろっ』
【続。憂い隠し、ひとり静かにキミ想う】
明日は休み
お風呂にこれでもかと、ゆっっっっくり浸かって
綺麗さっぱりしてから、お酒の蓋を開け
禁断のポテチへ手を伸ばす
いつもは3人か2人で座っているソファを独り占め
テレビも観たいモノを好きなだけ
お菓子も独り占めして
寝転んだままソレを口に入れる
多少行儀悪くても、誰の目もない
『なんか……スゴくぼーっとする』
これはリラックスしているからだろうか
だけど何故か、テレビの内容も頭に入ってこないし、お酒もお菓子もどこか味気ない…
なんか
そう
んー
ぽっかりと穴が空いた様な……
空虚…?
でも良いんだ
また、ふたりが帰って来たら変わらない日常が戻って来るんだし
今はおひとり様を満喫しよう
そう思った1週間目
『ウソ……』
また1週間が過ぎた
ヘトヘトになって家に着くと
あり得ない光景が飛び込んで来て……
いや、あり得ない事はないんだけど
だって全部自分がしたんだから
散らかりまくった部屋を呆然と見回しながら、ひとり呟く
『えー……こんな、散らかしたっけ?』
ふたりが居なくなってから、晩ご飯はほぼコンビニや簡単なモノしか食べなくなった
栄養なんて毎日あれ程考えていたのに、自分だけになると、ホントどうでも良くなる
そして何より、自分の為だけに料理をする事が
究極にメンドクサイ
あっ!そう言えば歯磨き粉、朝使った時絞り出したけど、予備はあるんだろうか?
疲れた身体で洗面所に向かう
座り込んでガサガサと洗面台の下を漁ると、歯磨き粉を見つけた
『あった、あった』
予備はあった
しかも3つ
手に持った3種類の歯磨き粉をジッと見つめる
ピンクのピーチリーフミントは私
ホワイトニングに重きを置いてるのは月島くん
爽やかミントが1番強いのが影山くん
『コレ……初めて買いに行った時、揉めたなぁ……』
ソレを眺めていると、暮らし始めの最初の買い物を思い出した
ひと通り日用品やらをカゴに入れて、あと買い忘れは無いかなぁと店内を見回す
「あ、歯ブラシと歯磨き粉は?」
『あっホントだ。月島くんナイスっ』
丁度その前を通っていた私たちは足を止めると、影山くんも押していたカート止めて、陳列棚に目を向けた
『んーと、どれにしよう?』
「オレはいつもコレ使ってる」
そう言って手に持った歯磨き粉をズイッとこちらに出してくる影山くん
そこには“強烈ミント!!痺れる辛さも病みつき!”なんて書いてあって
とてもじゃないが、そんな歯磨き粉……私は…口に入れる勇気は無い
「病みつきになる痺れる辛さのミントって何?それ絶対ミントじゃないヤツ入ってるデショ、僕はヤだ」
苦笑いしていた私の後ろで、月島くんがこれまた嫌そうな顔をしている
「全然辛くねぇよ。スゲェ、スースーはするけど」
「キミの強靭な口の中と、僕たちのデリケートな口の中が一緒なワケないデショ。たぶん使ったらスースーするどころか、もう口の中の感覚が無くなりそう」
「ミントって口の中の感覚、なくなんのか?」
「ミントのせいなんて言ってないデショ」
『あ、じゃあ月島くんは何がいいの?』
顔を歪める月島くんに声を掛けると
「僕はコレ」
とパッケージも白い、ホワイトニングに力を入れてる歯磨き粉を手に取った
『あ、コレ使ってるから月島くんって歯が綺麗なんだね』
「コレ結構、歯が綺麗になるし白くもなるんだよ。僕のオススメ」
『へぇ、』
「オレは絶っっっ対にヤダ!」
いいね、と言おうとしたところで影山くんが拒否の声を上げる
『え、なんで?』
「イヤなもんはイヤだ」
そっぽを向いて唇を尖らせる影山くんに、『ミントが足りない?』と聞くと
「そうじゃねぇけど……、月島と同じ歯磨き粉なんて使いたくねぇ」
しかもソイツの好きなヤツとか……絶ってぇムリ
ボソッと呟いた言葉に
ああ、なるほど。と月島くんを見た
「それはコッチの台詞。僕だって王様と同じなんて死んでもヤだね」
コレはヤバい
また始まってしまう
お互いを睨み合う2人の間に立ち、どうどうと宥めて
『あ!じゃあさ、皆んなそれぞれ違うの使えばいいじゃん』
私の言葉にふたりとも、えっ、とコッチを見た
『だってこれじゃ、いつまで経っても歯磨き粉でずっと揉めそうなんだもん。だからもう自分のお気に入り買おう』
ねっ!とサッサとこの問題を終わらせたかったのと、その方が都合が良い私はワザと満面の笑みで語りかける
だけど影山くんは
「名前はどれが良いんだよ、オレはそれでも構わねぇけど」
とこちらを見てくる
ええーっ!ここで私の聞くのー…?
と言うか、出来ればそれは聞かないで欲しい………
「僕も名前がいつも使ってるモノなら、それでいい」
『あ、いや……私のは……多分ダメだと思う、よ……』
「何で?」「何でだよ」
何故そこでハモるの
でもたぶんコレ言うと絶対引かれる……
『えっと……だって私の使ってるのは……』
ええい、どうせバレるんだったらこの際っ……
泳ぐ視線はそのまま、ゆっくりとそちらを指差す
『コレ、なんだもん……』
「は?」
「え、コレ?」
『うん………』
分かる 分かるよ
キミ達が言いたい事は
だって私が指差したその歯磨き粉は………
「「子ども用……?」」
だから
ハモらないでっ……!
大人になってまでこんなの使ってるなんて、恥ずかしい事だと分かってるよ…!
分かってるけどっ
『だ、だって……仕方ないでしょ!私、歯磨き粉の味って言うかミントがホント苦手なのっ!だから刺激の少ない、子供用の使ってて……』
恥ずかし過ぎて、捲し立てる様に早口で言う私に
ふたりは目をまん丸にしてパチパチしたかと思うと
「何で?いいんじゃねぇの」
『えっ』
「世の中そう言う人も居るデショ」
ウソ……
ふたりは静かにそう言った
『へ、変だって……思わないの?』
私の問いに、「別に」とまたハモった返事が返ってきた
ああ……中学の時に、友達とお泊まり会したあの夜
子ども用の歯磨き粉を使ってて大笑いされたあの苦い思い出が……
ここに来て、まさかサラリと流されるなんて……
「早くソレカゴに入れなよ。流石に僕は子ども用のは使わないから、名前が言った様にそれぞれ好きなの買おう」
月島くんの促しに『うん!』と感動したまま返事をして、歯磨き粉を手に取る
エヘヘ、と笑いながら振り向くと
月島くんが俯いていた
その横で影山くんは固まったまま、口の端をピクピクとしている
『え、どうしたの?』
ふたりの不可解な様子に、顔を覗き込もうと近寄るけど
「あ、いや、可愛いなぁと…思って…ふ、」
ふ?……え?
よくよく見れば月島くんの身体がプルプルと揺れている
そして隣の影山くんも
それは明らかに何かに耐えている様子で……
え、もしかして……ふ、ふたりともっ……
笑ってる
それも猛烈に
そう、ふたりは笑いを必死に耐えていたのだ
身体が震えるくらいに
月島くんも
影山くんなんて曲げた口許がピクピクしてて、変な顔になっている
さっきまでの感動が
音を立てて 崩れてゆく……
ヒ、ヒドイ……
そんなに笑わなくてもっ…!
さっきの感動の反動もあって、羞恥心が倍増になり私に襲い掛かってきた
耐え切れなくなった私は、その歯磨き粉を持ったまま
『……もういいっ!』
と叫び、ふたりをその場に置いて走り去った
「名前!」とふたりが名前を呼ぶけど、ハンカチをキー!と噛み締める勢いの私は、悔し涙に頬を濡らしながら振り返ることなく、それだけ買うと店から出たのであった
『ホント……一緒に住む前から色んな事あったなぁ』
3つ並んだ歯磨き粉を指で撫でて呟く
『結局、それぞれの歯磨き粉で丸く治ったんだよね』
今更だが、私も少しミントを克服し、今ではちゃんと大人用を使っている
……あんまりスースーするヤツじゃないのだけど
『…早く……会いたいな…』
心の声が
いつの間にか零れ出て
視界がうるうると少し歪んだのに気づいた
咄嗟に「あ、ダメだ」と思った私はゴシッと目を拭うと顔を上へ上げた
ダメだ ダメだ
ここで泣くともう多分止まらないくらい泣いてしまう
そして泣いてどうにかなる問題でもない
だから
泣くな、自分
『…よしっ!』
スクッと立ち上がった私は覚悟を決める
そう、泣いてる暇があるなら、やらなきゃならない事が沢山ある
皆んなが帰ってくる前に、何とかしないと…
腐海(リビング)の……掃除だ
***
そして1か月ーー
玄関の扉がガチャっと音を立てて開いた
前もって帰る時間を教えてくれていた2人を玄関で待ち構えていた私は
ドキドキ、ソワソワ
落ち着かない
そしてその扉が開いて
現れた見知ったふたりの顔に、嬉しさが止まらなくて
「ただいま」「うっス」
変わらない端正な懐かしい顔、安心する声と雰囲気に
『…おかえりっ!』
少し潤んだ目元を隠す様に、満面の笑みで出迎えた
そして帰って早々…
「つーか、お前、オレの間違えて持ってったろ!?」
「は?先に持ち出したのはそっちデショ!?」
いつもの言い合いが始まった
何でも、お互いの歯磨き粉を間違えて持って行ったらしく
散々だったとお互いガミガミ言っている
「口ん中スースーしねぇから、磨いた気になんねェでずっと気持ち悪かった」
「それぐらい良いデショ!王様のせいでこっちは死にそうな目にあったんだから…!」
そう言いながら歯磨き粉を取り出して、ぺっと影山くんに投げつける月島くん
「おかげでその日は何も食べられなかったし!」
慌ててソレを受け取った影山くんに、月島くんは腕を組んでソッポを向いた
「テメェっ!投げんなよ!」
噛みつかんばかりの影山くんと月島くんの遣り取りに「ああ…日常が戻って来たなぁ…」としみじみして安心する様な、呆れる様な……
取り敢えず仲裁に入る
『まぁまぁ、帰って来て早々ケンカしないの』
と、手をヒラヒラさせた私をジッと見つめる影山くんの視線に気づいた
それに、ん?と首を傾げた所で月島くんが反対側から声を掛けてくる
「そう言えば名前、意外と部屋片付けてるね」
『はい?』
想像もして無かったその台詞に心臓がドキッとして素早く彼を見たが
当の本人は関心するかの様に部屋を見回していた
な、なんだろ……
意外にって……お前片付けなんて出来たのかと言いたいのか……
そりゃ確かに片付けは殆ど影山くんにやってもらってるし、ホントは散らかしまくってたし……
うぅ…グゥの音も出ないが…
『が、頑張って片付けました…』
バツが悪そうにそう言うとその態度に気付いた月島くんが「あ、そう言う意味じゃなくて」と苦笑いする
「だって名前、僕らの前じゃ我慢したり、なんだかんだで気を使ってたデショ?だから僕らが居なくなったら、気が緩んだりして部屋もそれなりに散らかってるかと思ってたんだけど…」
もう一度くるりとリビングを見回して
「王様の仕事は無さそうだね。えらいね、仕事もしてるのに。綺麗にして待っててくれたんだ」
少しだけ、イタズラな笑みを浮かべて振り返る月島くんから、ふわっと柔らかな空気が漂ってきたのを感じて
思わず見惚れてしまった
『あ、いや、その…ひ、ひとりなんだから片付けぐらいしないとね』
あーヤバイ
久しぶりに会ったもんだから、免疫がっ……
恥ずかしさにモジモジと視線を彷徨わせていた私に月島くんは楽しそうな声で更に続けた
「でも、コレは頂けないデショ」
え、と我に返りまた彼を見上げる
月島くんは笑顔のまま、何処かに向かって指を指していた
その先を追うと…
『あっ、』
影山くんが何故かゴミ袋を手に持ち、コチラを見ている
そしてその袋の中身は……
『いや、コレは……ち、違うの!』
「何が違うの?」
いや、何も違わないですっ…!
違わないけどっ…!
「随分お酒呑んだみたいだね。あとお菓子」
月島くんの目が……怖いくらい冷たくなっている
「別に呑むな、食べるなとは言わないし、いつも頑張り過ぎて無理する所あるから言わなかったケド…」
ハァ、とため息を吐き出した月島くんはまた冷ややかな視線を向けてくる
「お酒飲み過ぎ、お菓子食べ過ぎ。って言うかちゃんとご飯食べてたの?」
『…た、食べてまし「食べてないデショ」
語気の強い言葉で遮られて、小さくヒィッ…!と悲鳴を上げた
「ゴミ袋の中、コンビニ弁当やカップラーメンばっかりじゃん。身体壊すよ。ホント監視が必要なの影山より、名前の方だね」
腕を組んで見下ろしてくる月島くんにバツが悪そうに、たじろぐしか無い私
ああっ…!
バレてしまった
ゴミ袋もう少し入りそうだからと、取っておいたのが運の尽き
って言うか、何で示し合わせた様に影山くんはゴミ袋なんか持ち出して来たのっ!
焦る私の頭上に横から影が落ちて、無意識に顔を上げた
影の正体はゴミ漁りの影山くんで、何も言わずに突っ立っていたかと思うと
突然、私の頬を鷲掴みにして、グニッと引っ張った
『はひぃ!?』
「おっ、やっぱ前よりプヨプヨしてんぞ名前。…つーか、顔だけじゃなくて全体的に…」
影山くんの視線が下がる
え、待って
それって…
かの有名なゲームの名前じゃなくて…?
そっちの方が有難いんだけどっ…!
でも絶対そうだよね
言いたい事はソッチですよネっ…!
「お前、太っ…『言わないでぇー!!』
絶叫した私に驚いた影山くんが手を離すした隙に、顔を両手で覆うと床にへたり込む
『わかってる…!わかってたんだけど…そんなっ…』
「お、おいっ、どうしたんだよ名前、オレは別に太って良かっ『そのワード!後生ですからもう言わないで下さいっ…!反省してますからぁ…!』
喚く私の頭上で「コショー…?」と小さく呟く影山くんにツッコむ余裕などあるはず無く
確かにっ…!最近ちょっとズボンとかキツいなぁ…とか思ったりしたけど!
まさか影山くんに言われるなんてっ…!
ああ、人生が終わった
男の人に、お前太った?なんて言われた日にゃ、女子としてもうやってけない
…あ、いや、もう女子って年齢じゃないですが
いや、いつまで経っても女性は乙女
…って、そこじゃない!
ひとりノリ突っ込みをしていた私の肩にポン、と慰めるかの様に誰かの手が乗ってきた
ゆっくりと顔を上げてみると、月島くんと目が合う
そして、ニッコリと微笑まれる
絶望を感じるこの微笑みは
この後の月島くんのセリフが決して良いセリフでは無いことを物語っていて
月島くんは優しく語りかける
「僕らは全然気にならないケド、太ったその“理由”が1番良く分かってるのは名前なんだから、その事実が嫌なら…なんとかしようネ」
彼の言葉に冷や汗が…ダラダラと流れる
おひとり様の
ダラシない暴飲暴食の果て
と言う理由が1番良く分かっている私は
未だに笑みを浮かべる月島くんに、ぎこちない笑顔を返す事しか出来なかったのである
その後ーーー
食後の運動だと、影山くんのランニングに付き合わされたり
月島くんによる毎食のカロリー計算された食事のみを食べ、お菓子抜き、お酒抜き(でもたまの息抜きに呑んだ)などなど…血と汗と涙の努力により無事、元の身体へと戻った
………いや、むしろ戻ったと言うより、2人のお陰で引き締まった身体へと変貌(それも長くは保てなかったけどネ!)
今回により、もう2度とぐぅたらな暴飲暴食はしないと心に誓った私であった