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疲れた……
足が…ダルい…
今日はみんな遅くなるから、ご飯は各自でってことになってたけど
それでもと思い、デザートにコンビニのケーキを買って帰った
…まだ誰も帰って来ない
もうちょっと待ってたら帰ってくるかな……
【昨日のケーキは幸せで甘くなる】
「ただいま」
灯りのついた部屋に、誰かが先に帰っている事を物語っているリビングのドアを開けた
でも、返事は無い
代わりにソファで名前が寝ているのを見つけた
珍しいその姿に目を丸くして、近寄った
テーブルにはコンビニの袋
中を覗いたら、ケーキなどのデザートが入っていた
待ちくたびれちゃったんだね……
そっと寝ている彼女の前に屈んで、寝息をたてている顔を覗き込んだ
目の下にクマが出来てる…
唇は乾燥してカサカサ、口元にニキビも
好きな女性がこんなにもボロボロになって、目の前に横たわっている
少し胸の奥が締め付けられた
いつもそうだよね
限界まで頑張って…
最後には力尽きて、倒れちゃうんだから
指先で頬に触れてみる
滑らかだケドどこか強張っている肌の上を耳元の方まで滑らせて、夢の中深くに居る名前の頭を優しく撫でた
いつも…
いつも仕事に家のこと、それに僕や影山の相手
ずっとバタバタ動いていて、今日の朝も忙しなく家を出て行ったキミ
最近は職場で病欠など休む人が重なり、元々ハードな上に人手不足の為、更に忙しくなって帰りも遅くとても疲れているはずなのに
それでも僕たちの前では、常に笑顔で居てくれる…
「……いつもありがとう」
キミの元気な姿に
キミの優しい微笑みに
キミの心地良い言葉に
いつも……癒されてる
ドスドスドス、と廊下から無遠慮な足音がして来た
ガチャっとドアが開くと「うっす」と影山の顔が覗いた
その目が僕と合うと、人差し指を口に当て、子どもにでも分かるサインを影山に送る
影山は「あ?」と怪訝そうな顔をしたが、僕がソファに視線を移すと、気付いたのかゆっくりとコチラへ近づいてきた
「…寝てんのか?」
「僕たちを待ってたみたいだケド、力尽きちゃったみたいだね」
腰を屈めて、影山も覗き込む
「……初めて見た」
「え?」
「名前が寝てるトコ」
心配そうな顔で名前を見る横顔に
ホント…そうだ、と納得する
こんな無防備な姿、一緒に住みだしてからも、一度も見た事はない
どんなに疲れていても、ちゃんと家のことしようとするし、お風呂にも入って必ず自分の部屋で寝てる
その辺の事は暗黙の了解で、もちろん僕たちも弁えていたケド……
影山はしょっちゅうリビングで寝てることがあるし、僕も…たまに呑んだりした時、ついウトウトする事があったりするのに…
名前はいつの間にか、僕たちに布団をかけ、自室に帰っている
だから、影山の言う通り彼女の寝顔なんて、初めて見た
「…少しでも、心を許してくれたって事かな」
「…どう言う意味だ?」
「だから、僕たちの前ではいつも明るく振る舞ってる名前だけど、疲れてるとは言え、僕たちが帰ってくるリビングの、ましてやソファで横になってるなんて……少しは弱い部分も僕たちに見せれる様になったのかなって」
影山は少し考える素振りをして、名前を見つめる
それから彼女の指先に触れ、爪を撫でた
「……爪、いつもキレイにしてんのに、こんなボロボロになってる」
少し哀しげに、影山はポツリと零した
愛おしそうに爪をなぞる行為に、彼らしいなと思う
あれだけ自分の指先に拘りがあるのだ、影山にとっても好きな女性である名前の指先にも目が行っていたのは当然だ
そしてそんな彼女の指先が見るも無惨な姿に変わり果てている事へ、心を痛めている
「…影山、」
「なんだよ」
「薄手の毛布、取って来て」
それだけ言った僕は立ち上がる
影山は名前の手を取ったまま、横目で僕を一瞥し
「わかった」と短く返事をすると握っていた手をそっと置き、肩に掛けたままのカバンを降すと毛布が仕舞ってある場所へ向かった
僕は折角名前が疲れた身体で買って来てくれたケーキが、溶けて崩れないように、ソレを冷蔵庫へ持って行く
起きたら、みんなで一緒に食べれる様に…
***
『……ん』
あー……、なんかスゴい寝た様な気がする…
ここ最近、仕事が気になって寝れなかったりしたしなぁ…
…………
……今…何時?
ガバッと身体を起こして、横を見る
だけどそこには、いつもあるはずのサイドテーブルと時計が無くて
代わりに下の方に視線を移すと…そこには
影山くんが…布団を掛けて寝ていた
『……っ!!』
な、なんでっ…!?
声にならない声を上げそうになった時
「おはよう」
と後ろから優しい声が聞こえて振り返る
そこにはキッチンに佇む月島くんが穏やかな笑みを浮かべていて
「良く眠れた?」
『え…』
「疲れてたんデショ?昨日、そのまま寝てたから」
その言葉に自分を見た
毛布が掛けてある自分の身体は、昨日の格好のままだ
あ、うそっ…!私、あのままここで寝ちゃったんだ
恥ずかしいっ…
お化粧もしたまま、寝ぐせもついてるしっ!
し、しかもっ寝顔見られてるよねっ!
ああ、ヤダっ!こんな姿…!
「名前」
『はひっ!』
恥ずかしくて頭を抱えていた私は、月島くんに変な声で返事をしてしまった
「大丈夫?」
少し笑いを堪えながら、両手にお皿を持ってダイニングテーブルに近寄る月島くん
中身は美味しそうなワンプレートの朝食だ
その横には飲み物も置かれていて
でもそれはいつものコーヒーじゃない
あの紫で少しドロッとしたモノは…
『スムージー…?』
「分かる?そうだよ」
私が零した言葉に月島くんは嬉しそうに返事をしてくれた
「寝不足や肌にイイモノ、調べて作ってみた」
『え、コレ…月島くんが自分で作ったの?』
「まぁね、一応ストレスにも効くみたいだよ」
気休めだケドね、自嘲気味に笑う彼の気遣いが
疲れ切った心と身体に染みて、目頭が熱くなる
『月島くん…』
感極まわり毛布をギュッと握り締めた
けどそんな私のお腹は、テーブルの上から漂ってくるイイ匂いに正直に鳴ってしまい、急いでお腹を覆う
ひゃー…雰囲気台無しだっ…!
でもその音を聞いた月島くんはまた微笑んだ
「朝ごはんにしよう、影山起こしてくれる?」
『あ…う、うん』
「影山も疲れてそこで寝ちゃったんだよ」
『そうなの?』
月島くんは頷くとそのまま影山くんを覗き込んだ
「昨日、一生懸命キミの爪磨いてたから」
『えっ…』
月島くんの思いもよらぬ言葉に、驚いて自分の手を見る
もうずっと指先のケアなんてしてない
ハンドクリームも塗ってないし
爪にクリアのネイルをしてたけど、それも剥げかかっていた
なのに……
『うそ……』
私の指先はまるで宝石の様に、ピカピカで艶々と輝いていた
『これっ、影山くんが?』
「あの王様が寝る間も惜しんで、ずっと磨いてた」
感心する様な呆れた様な顔でため息をつく月島くん
私はもう一度、綺麗に磨かれた指先を少し上に掲げ見つめた
自分の手じゃないみたい…
見惚れる程のそれは本当に綺麗で丁寧に
いつも影山くんが自分でしているみたいにしてくれたんだ…
しかもそれに全然気付かないで、爆睡してたなんて…
「仕方ないデショ?名前、最近ずっと疲れてたんだから、起きなくても無理ないよ」
涙を堪える様に唇を噛みしめていた私に気付いて、月島くんはそう言ってくれた
影山くんはまだ夢の中
たぶんコチラが起こさないと起きる気配はない
『…月島くん』
「なに?」
『昨日ね、ケーキ買って帰ったの』
「うん」
『ケーキって言っても、コンビニのだから美味しいか、わからないんだけど』
「うん」
『ご飯は一緒じゃなかったけど、せめてデザートぐらいは一緒に食べたいなって…思って』
「……うん」
『昨日のだけどケーキ、3人で一緒に……食べてくれますか?』
今にも零れ落ちそうな涙を堪えて、笑うと
月島くんは包み込むような微笑みを浮かべ、隣に座ると私をそっと抱き寄せた
「…お疲れ様」
耳元で聴こえる彼の声が
私を抱き締めてくれる彼の体温が
とても心地良かった