僕と彼女と時々兄
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『幻滅したよね・・。年上なクセにこんな子どもみたいなことして振り回して、蛍くん怒らせて・・。ふたりの仲・・・めちゃくちゃにして・・』
歩きながら話そう、と言ってきたのは意外にも名前の方からだった
店の外に出て西陽の当たらない木陰を、ゆっくりと歩く彼女に合わせて、僕も歩幅を調整しつつ、隣りを歩く
でもやっぱり始めは沈黙で
どう切りだそうかと、思慮していたところ
名前の方から口を開いた
その自らを責めるセリフに、僕は黙ったまま歩く
『・・明光くん、最後までこんな私のこと庇ってくれようとしてた。本当、最低だ・・。こんなことして、今まで通りなんて私も蛍くんも許せないよね』
くるっとワンピースの裾を翻して、僕の正面に立つ名前
『ここまで・・だね、私たち』
ギュッと腕に力が入ってペンギンの顔が歪んでいる
『短い時間だったけど・・楽しかった』
さっき見せた時と同じように
口角を上げた哀しい表情で
『・・・ありがとうっ』
震える声でそう言って
哀愁を漂わせたワンピースの裾を、哀しげに揺らし
僕に背を向け 立ち去ろうとする
何故だろう
自分の答えを その人の応えだと
勝手に決めつけるとこ
前の僕と似てる だからこそ
そんなの納得出来るワケ ない
彼女の腕を掴んで
強引に引き寄せ
逃げてしまわないように
抱きすくめた
「・・人の話し聞かないとこ、昔から今も変わらないよね」
僕の声が聴こえるように
少し甘い香りのするその耳元で呟く
「僕の応え・・聞かないの?」
行き場のない手が掴んだ僕のシャツを、名前はギュッと握り締める
「それこそ僕のキモチ、蔑ろにしてるデショ」
少しだけ 身体を離して
顔を上げた彼女を覗き込む
その綺麗な瞳は潤んで
不安そうに僕を映して揺れていた
いつも笑っていて
いつも楽しそうな彼女の
見慣れないその表情に
「キミの弱音、初めて聞いた。いつも・・手を引かれるままリードされて、からかわれて・・悔しい思いしてきたから」
本音が溢れでる
だって こんな顔
「反則・・」
『えっ・・』
「そんなしおらしい、女の子みたいな顔も出来るんじゃん」
少し憎たらしい顔で笑って言うと
眉根を寄せて唇を噛みしめた彼女が見返してくる
その悔しそうな表情に
嬉しいのと同時に、僕のからかいの言葉に反応してくれる名前に、してやったり感が込み上げてきて
「くくっ・・」
『・・なんで蛍くんが笑ってるの』
思わず笑ってしまった僕に、また名前が睨んできた
「ゴメン、つい」
『ついって・・・・なんかヒドい』
こんな顔も出来るんだ
そんな事を思いながら、名前の頭を撫でた
なんでか良くわからないケド
胸の引っ掛かりが取れたようで清々しい
これで彼女と対等になれた気がする
もう一度ちゃんと彼女の瞳を見据える
「前に言ったデショ。今も昔もこれからも・・」
ずっと好きだって
今度は僕らしくない優しい声で
名前に伝える
「何度も言わせないでよ」
『ーー・・っ』
堪えきれない様子で僕の胸に飛び込んで来た彼女
『嫌われたと・・思った・・』
絞り出すように言葉を発する
こんなにも小さかったっけ?と錯覚するぐらい身を縮めて
必死に縋り付いてくる名前の肩を
ぬいぐるみごと、包んだ
ふたつの違う柔らかさに心が落ち着つく
「離す気なんて さらさらないよ」
目を閉じて
2度目の告白を
彼女に囁いた