僕と彼女と時々兄
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少し恥ずかしそうに笑う名前に
愛おしさが溢れる
ホントはもっとしたかったケド
兄ちゃんもそろそろ帰ってくるだろうし
こんなとこ誰かに見られるのもイヤだったから
すぐに唇を離した
『蛍くん・・意外と大胆だね』
「・・そんなふうにしたの、名前デショ」
少し遠くを見つめながら、ストローを咥えた
久しぶりに飲んだソレは甘くて酸っぱい
これが名前との 初恋の、味・・?
いや、なに考えてんのっ
自分の気持ちが舞い上がっているのを自覚する
普段ならこんなこと絶対思わないのに
ホント呆れる
「おーい!」
少し先の角から兄ちゃんが手を振って歩いてくる
『おかえりー、先に頂いてます』
「兄ちゃん遅かったね」
「コーヒー出来るまでちょっと掛かったからな」
フーッと息を漏らしながら名前の隣りに行き、壁にもたれかかる
ズズッとコーヒーをひとくち啜って、訝しげにカップを睨んだ
「わー、イマイチだなこのコーヒー」
『美味しくないの?アップルジュースは美味しいよ』
「俺もそっちにすれば良かったな、暑いしジュースの方がサッパリしそう」
そう呟いて、チラッと名前の手元を見る
「なぁ、名前」
『ん?』
「ちょっとソレ飲ませて」
片手を差し出す兄ちゃんに
名前は当然のように はい、と
自分の持っているカップを兄ちゃんに渡した
それはあまりに自然で あまりに突然過ぎて
反応が遅れた
「ちょっ・・!なにしてんの!」
『えっ』
僕の視線の下で振り返った名前の向こう側
兄ちゃんはなんの遠慮もなく、ストローを咥える
音を立てて、ジュースを啜り
満足気な顔をして僕の方を見た
「やっぱコーヒーより今の時期はコッチの方が良いな」
僕の声は聞こえなかったのか、いつもの様に笑う兄ちゃんに
胸が騒つく
『どうしたの?蛍くん』
突然声を荒げたからだろう
目をまん丸にした名前が声をかけてきた
「いや・・何でもない」
そう言いつつ、兄ちゃんに詰め寄る
兄ちゃんはまだストローを咥えていて
そのまま視線だけ、コチラに寄越した
「・・兄ちゃん」
「なに、」
蛍、とストローから口を離した瞬間
兄ちゃんからカップを奪い取った
「ちょっ!蛍・・!」
空いたその手に素早く自分のカップを押し込む
「コッチも美味しいから飲んでみてよ」
有無を言わせない 満面の笑みで言ってやった
呆気にとられた兄ちゃんは
お、おう・・、と返事をし、僕のオレンジジュースをしぶしぶ飲む
「ま、まぁコッチもウマイな」
「デショ、良かったらあげるよ」
「いや、別に・・」
「名前、」
兄ちゃんのことはお構い無しに、彼女の方へ振り返る
『なに?』
「やっぱり僕、名前のアップルジュース飲みたいからさ、貰っていい?」
キョトンとした名前の前にカップをかざす
『別に・・良いけど』
「ありがとう、その代わりにさっき欲しいって言ってたペンギンのぬいぐるみ、買ってあげよっか」
僕の言葉に途端に表情が明るくなって、身を乗り出してきた
『いいの!?やった!』
善は急げだ、行こうっ!と興奮した様子で、ショップの方角を指差し歩き始める名前
ぬいぐるみなんか欲しがる、こう言う所は子供っぽい
僕はその後ろ姿を眺めてから、未だ僕が渡したカップを握り締めている兄ちゃんに向き直った
「・・さっきみたいなこと、止めてくれる?」
「さっきのって?」
「・・名前が飲んでる飲み物、直接飲んだりすること」
「あーらら、蛍はそんなこと気にするんだね、意外だなぁ」
ダメだぞー男はドンと構えてないと、と胸を張る兄ちゃん
「前は・・小さい頃はそんな事気にならなかったケド・・もうそう言う年齢じゃないんだし、簡単にああ言うこと、しないで欲しい」
真剣に 兄ちゃんにこんなこと言うの
なんだか違うような気がするケド
僕だけじゃなく、名前も尊敬してる兄ちゃんだからこそ
僕の大切な人に 僕がイヤだと感じてること
して欲しくなかった
「ふーん・・蛍もそんなこと言うようになったんだな」
無表情でそう言って、次の瞬間にニカッと笑った
「わかったわかった、気をつけるよ」
それだけ言って、よっ!と上体を起こし僕の肩をポンポンと叩いた
でも 横を通り過ぎる時
「俺の方はね」
と聞こえたのは
本当に兄ちゃんの声だったのだろうか