How-to 影山くん
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【ぬくもりをにぎる】
『飛雄〜、みてみて〜』
「あ?」
その声に振り返れば
名前の姿が…
ではなく
何かのドアップが目の前に現れた
「うっ、お!」
『へへ〜、ビックリした?』
後ずさったオレに名前はイタズラに笑う
その手にはさっきオレの目の前に掲げていたものだろう
もふもふしたものがだらんと伸びていた
「お前、それ…」
『うん、ネコ!』
カワイイでしょー、と下に降ろして頭を撫でる
「ど、どうしたんだよそれ」
『ん?塀の上を歩いてたから、撫でて抱っこしたの』
「いや、そうじゃなくて…」
オレがうぐ…と唸ると名前は小首を傾げた
ネコ
それも首輪が無ェみてーだから野良ネコ
そんな生物を
何故名前は警戒される事なく撫で回し、いとも簡単に捕まえる事が出来るのか
そう、オレが知りたいのは…
どうやってそのネコを手懐けたか、だ
「どうやって捕まえた?」
『え、だから言ったじゃん。ゴロゴロさせて、ぐにぐにしてヨイショって』
ゴロゴロ、ぐにぐにヨイショ?
な、なんの呪文だ?
わけわかんねェ…
野良ネコなんかに手ェ出したら、普通逃げんだろ
彼女の不思議な言動に悩んでいると
『ほら、飛雄も触ってみなよ』
ネコを撫でながら、少し後ろへ下がる
いや、触りてェけど…
さっきまで名前に撫でられゴロゴロとしていたネコの雰囲気が
今の一瞬で、明らかに変わった
鋭い視線をオレに向ける目はギラッと光っている
…コイツ、ぜってぇオレの事狙ってやがるっ
ただならぬ気配を放つネコにたじろぐ
『ほら飛雄、そんな顔してないで近くに寄って』
コワイ顔してたらダメだよ、と笑う名前に促され
仕方なく膝を折ってしゃがみ込む
でも相変わらずヤツは睨みをきかせていた
手を出した瞬間、絶対にやられる…
オレの本能がヤバいからヤメテおけと警告する
さ、触れねー…
ネコの態度に口を曲げた
いつもこうだ
動物に近寄ったり、触ろうとすると
何故か嫌がられたり、逃げられたり…
挙げ句の果てには噛まれそうになった事も何度もある
そんなにオレ、嫌われる事をしてんだろうか…
いつもその理由が分からないから悩んでいた
ふとオレの手に暖かいものが触れる
ネコに気を取られていて気付かなかったオレは、暖かい感触がなんなのか、目を走らせた
『大丈夫、コワくないよ…』
そっと手を重ねてオレの手を取り、ネコへと誘導する名前の小さな手
『こうやって、優しく撫でてあげたら大丈夫』
オレの手が、ネコの頭に乗った
ネコは……逃げなかった
そしてヨシヨシ、と名前と一緒に撫でてやると気持ち良さそうに頭を押しつけてくる
『もふもふしててあったかいでしょ?』
ニコッと笑う名前
「…おう」
初めて触れたその毛並みに感動する
確かにもふもふしてて柔らかくて、その下からじんわりと暖かい体温が感じ取れた
でもそれより
オレの手に初めて触れた名前の手が
優しく重なり、温もりが伝わってきた時
その時の方が
今よりもっと
気持ち良くて、暖かった…
顔が、緩む
『次はさ、かわいいねーって、笑ってあげて』
楽しそうに言う名前の言葉に、マジか…、と思いながらも
「か、かわいい、な…」
少し引き攣りながら、にこぉ…っと言われた通り笑ってみた
途端にネコがまた警戒したオーラを醸し出し
シャーッ!とオレに向かって唸ったかと思うと
ダッシュで逃げて行った…
『あーあ、逃げちゃったね』
ネコの後ろ姿を見送る名前に、申し訳無さを感じる
せっかく、ネコと楽しそうに遊んでたのに
逃げてったのは、オレのせいだ…
「悪い名前、オレ…」
『良かったね、飛雄!ネコ触れて』
笑顔でこっちを振り向く姿に呆気にとられる
『好きなんでしょ?動物。いっつも触りたそうにしてたもんね』
ふふ、と笑う名前の顔でわかった
名前は自分がネコを撫でたいから戯れてたんじゃなく
オレの為にネコを手懐けて、触らせてくれようとしてたことに
…全部分かってたってことか
敵わねぇな…
そう思うと身体の力が抜けて自然に笑っていた
『帰ろ』
「…おう」
歩き始める彼女の横を歩き、とん、と指先が触れた手をギュッ掴む
驚いてこっちを見ているであろう名前の顔は見ずに
オレは前を見据えながら、歩幅を合わせて歩いた
そのうち、名前も遠慮気味にゆるゆると握り返してくる
柔らかい感触に、心ん中がほわっとして
名前の顔も自分の顔も
たぶん真っ赤なのだろうと感じた
そしてまたしっかりと握り返し、名前の分の温もりも自分のものにする
今度はすぐに離れない様に…
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