烏野高校
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「ねぇ、苗字さんってもし片想いの相手が両想いだって分かったら、何したいの」
ある日の
部活の昼下がり
学校は休みの日で
洗濯物を干している私に、月島くんが話しかけてきた
【恋するユニフォーム】
よっと、と声を出しながら体育館の入り口に腰掛ける月島くん
中から皆の騒がしい声が聞こえてくる
一体何に盛り上がっているのか
どうやら月島くんはソコから逃げてきたらしい
『・・え、と・・それってつまり、』
「恋人になったらって意味」
・・・ふーん、なるほど
月島くんは私がもし彼氏なんてモノが出来たら、どうしたいのか
それを知りたいと
バンっ!と手に持っていたユニフォームを振って、心の中で叫んだ
なんでっ、月島くんがそのようなことを知りたがっているのーーっ!!!
月島くんに心の内を悟られないように
背を向け、ユニフォームを物干しに掛けながら
『そうだなぁ、やっぱり始めは手を繋いで帰りたいよね』
と、自分なりに動揺を隠し応えた
「他は?」
ボソッと呟いた声に思わず『え、』と振り返った
でも月島くんはコッチを見ていなくて、ドリンクで水分補給中
ほ、他?他って・・・
『んー、キス・・・したりとか?』
少し首を傾げながら次のユニフォームを手に取る
「他には?」
さっきと同じようなセリフに、顔を上げる
するといつの間にか、コチラをジッと見つめる視線とぶつかって
ビックリした私は、持っていたユニフォームを握りしめ、背筋を伸ばした
『え、えっとー・・・やっぱりキスとか』
彼のその瞳に、視線が泳ぐ
な、何なんだろう・・・
月島くんは一体なんで私にこんなこと聞いてくるの
「次は?」
更に彼はその瞳に私を捕らえたまま聞いてきて
『・・・キ、キス・・かな?』
「そればっかりじゃん」
『だって・・・!』
少しバカにしたように笑う月島くんに、眉根を寄せた
そんな私に、仕方がないな、とでも言うように立ち上がって
ゆっくりと近づき、私の前に立ち塞がる
「・・そんなに、キスしたいの?」
間近で私を見据える
その距離は余りにも近くて、首を真上に上げないと月島くんの瞳と視線が合わない
『しっ・・したいよ、だって両想いなんでしょ?・・憧れだし』
彼の圧に負けないように、両手を握りしめ瞳を見返す
月島くんは「あ、そう」と短く返事をしたと思ったら
限界まで顔を上げている私の唇に
そのまま キスを落とした
バタバタバタ・・・
ユニフォームが風に煽られる音がする
目の前の短い彼の髪も、爽やかに揺れていて
「・・はい、憧れのキス」
『ーーー〜なっ!!』
唇を離した月島くんは、満足そうに口角を上げた
キス、されたっ・・・月島くんに・・・なんでっ
「したかったんデショ?キス」
『しっ・・!したいとは言ったけど、それって両想いになったらって話で・・・!』
「あれ?違った?」
『えっ・・・』
とぼけたように小首を傾げる月島くんに、胸の奥から熱いモノが湧いてくる
それって・・・まさか・・
「言わなきゃ、分からない?」
ニンマリ、正にその言葉が相応しい笑い方をして、月島くんが腰に手を当てる
うそっ・・・!月島くんが、私を・・
ずっと私の片想いだったひとが・・・
その顔にたまらず、手に持っていたユニフォームで顔を隠した
すると
ちょっと、と月島くんの声が上から降ってくる
「喜んでるとこ悪いんだケド、」
今の顔を見られたくない私は、目だけを覗かして見上げた
「そのユニフォーム、ちゃんとシワ伸ばしといてよ」
月島くんの言葉に、慌てて自分が握りしめているユニフォーム広げると
そこには”11“と言う数字が並んでいる
あっ、コレ月島くんのだ・・・!
「よろしく」
ポンっと頭を優しく撫でて、彼は体育館に向かう
その後ろ姿を呆然と見ながら
よろしくって・・・どっちの意味っ!?
ちゃんとシワ伸ばしとけよ、ヨロシク?
それとも・・・
「あ、もちろん、これからよろしくって意味ね」
体育館に上がって、振り向いた月島くんが言う
「一個飛ばしちゃったから、帰り道手を繋いで帰ろうか」
それを言った所で、中から月島くんを呼ぶ声が聞こえて、返事をした彼は
「じゃ、また後で」
いつも通りの月島くんのまま、消えていった
私は青空の下、ただひとり
また彼のユニフォームを握りしめている事にハッとして
急いでシワを伸ばし
綻ぶ顔で
『こちらこそ、よろしくお願いします』
とソレに呟いた
2020.5.10