他校
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「お前、かわええとこあるやん」
その言葉を聞いて少し照れくさそうに
でも嬉しそうな顔で『いつも可愛いんですーっ』とツッコむ彼女に
ホンマに好きなんやなぁ…
と複雑な気持ちでそれを見つめた
【“エサ”と書いて“侑”と詠む】
『ね、治くんもそう思わない?』
「せやな、まぁツムがアホなんはもともとや」
「あ!?俺がアホなん今関係ないやろっ!」
ツッコムところそこかいな…
おい聞いとるんかサムっ!と突っかかってくる侑の横で、くすくすと小動物みたいに笑う名前
名前は侑と話ししてる途中で必ず俺にも話をふってくる
そこはやっぱり侑とふたりっきりで話してて本人に気があることを気づかれてしまっては恥ずかしいからだろう
たとえ侑と2人で喋っていても俺を見つけて絶対に誘ってくる
だから必然的に3人でよくダベっていた
今日もそうして部活後に体育館裏の地べたに座り込んで漫才を繰り広げる
『侑くん、ホントおもしろいよね〜からかい甲斐があるわー』
名前が侑にじゃれつく
「はぁ〜?オモロイのはそっちやろ、お前の変顔ピカイチやもんな」
それにちゃんと応えてやる侑
そう言うとこは関西人…ってだけやなく
名前やから応えたるんやろな、律儀な男や
ま、好きなもん同士やねんから当たり前か
それを眺めながら楽しそうな名前に微笑んだ
ホンマ…いじらしい程かわええ
恋する女子っちゅうのはこんなにキラキラしとるんもんなんやな
その眩しいほどの眼差しが、決してコッチに向くことは無いことを
自分自身が1番ようわかっとる…
だからこそ、この時間は俺にとって最高の時間やった
3人で居れば、名前と一緒におれる
話しが出来る
笑う彼女の顔がすぐ隣で見れる…
それだけでも俺にとっては大切な時間で
幸せな瞬間やった
だから…このままでええねん
このまま隣で…
その顔見れるんなら
なんだって……ええねん
『治くんっ?』
幸せを噛みしめてひとり浸っていたら
名前が心配そうに声をかけてきて顔を上げた
『大丈夫?』
ああ…そんな眼、俺に向けたらアカンで
そんなキレイな瞳
俺にはもったいないやん…
『治くんっ?ホントにどうしたの…?』
眉毛を下げて、何も言わない俺を心底心配そうに顔を覗き込んでくる名前に
俺は堪らず笑った
「アホっなんでもないわ、ただ……ホンマにかわええなぁ思うて見とっただけ」
ふっ、と笑ってそう言ったあとすぐ、しまった…!と口を押さえる
アカンっ…つい言うてもうたっ
俺が言うセリフちゃうやろっ…!
口が滑ってしまったのを後悔しながら、名前の反応を確かめるために視線を移した…ら
…はぁ?な、なんやねんその顔…
名前は…顔を真っ赤に染めながら、同じく口元を隠していた
侑ん時と全然ちがう、予想してなかったその反応に困惑していると
少し潤んだ目とぱちっと視線が合った
口を真一文に結んで名前はササッとそっぽを向く
はっ?え…?な、なんやねんなその反応
意味わからへん…
「いやいや、照れすぎやで自分〜!そないな反応してたらさすがにバレてまうやろ」
『ばっ…!!な、なに言ってんの侑くんっ!!』
からかうように侑がヤラシイ顔で笑うてるのを名前が慌てて制止しようと両手を振っている
…どうゆうことや
なんやこの状況…あり得へんことが起こっとるように感じる
だって…ありえへんやろ、そんなの…
「俺は知らんで〜、名前が素直になれへんのが悪いんやし。…ホンマ毎回毎回俺誘ってサムおびき寄せよって、俺はエサちゃうでっ」
よっと、と立ち上がって侑は俺たちを見下ろす
「サムもサムやっ!お前、こんっっっな分かり易いアプローチいつまで気づかへんのやっ!鈍感にもほどがあるで、アホ!」
ま、不器用もん同士お似合いやけどな!
そう捨て台詞を吐いて、るんるんとヤツは少し先にある自販機へ去って行った
いや、まぁ…
不器用なんはこの際認めるけど…
アホは余計や
じとっ、とその背中を見送って
隣りの縮こまったソイツに声をかける
「…なぁっ!」
『はっ、はいっ!』
視線は前のまんま、ビシッと背筋を伸ばす名前
緊張しすぎやろ…と笑いが込み上げてくる
「さっきツムが言うたこと…ホンマなん?」
『え、や、うっ…!』
「俺…おびき寄せられてたんやな、ツムがエサで俺がエモノ?ははっ、オモロいねんな」
口開けて笑うた後、すっと真顔で彼女を見据える
「…で、見事に釣られた俺は…お前に食べられてまう、っちゅうことでええんか?」
どっちかってゆうたら、食べたい方やけどな
『たべっ…!その…えっと…や、あー…』
歯切れワルっ
どんだけ慌ててんねん
そんな悠長なことしてたら…イタズラしたなるやん
悪い顔を隠してぐいっと肩を引き寄せると顔を近づける
名前は目ん玉飛び出るんちゃうか言うぐらい、両眼を見開いて
あわあわと唇を動かしていた
なんやねん、その顔
せっかくのかわええ顔がオモロい顔になってんで
初めてみるたいそうな慌てぶりの名前に、貴重なモン見れとる優越感を感じながら
吹き出しそうになるのを堪えて
さらに顔を近づけた
「なぁ…早う返事してくれんと、その前に俺、いらん事してまうで?」
鼻先をネコみたいにすりっと擦り付ければ
びくん、とカラダが跳ねて
そのままフリーズした
あ、あれ?
「名前ー…おーい」
カチンコチンに固まった彼女には何も聴こえてへんみたいや
「おーいっ、大丈夫か?」
刺激強すぎたか…
と思っていたら、ハッと意識を取り戻した名前が叫ぶ
『す、好きですっ!治くんっ!』
突然の告白に今度はこっちの方が固まった
ピタリと動かなくなった俺に名前はまた顔を真っ赤っかにして
自分がしでかしてしまった、この後悔を吐き出そうと口をパクパクと開いた
でもそれを
俺は見逃せへん
名前の口から、“違う”とか“ゴメン”とか否定の声を出す前に肩からうなじへ、練習の時よりも素早く動いた俺の手は
それを強引に引き寄せると
ぷっくりとした唇を 奪った
…ホンマはこないなことするつもりなかったんやけど
今のは…
今の告白は……反則やろ
キュッと俺の制服の襟を握ってくるいじらしい彼女に
俺の心臓も鷲掴みにされた
ああ、かわええ…
ホンマ、かわええ
夢にまで見たキラキラしたかわええ顔が
すぐそばにある
ずっと…侑んことが好きなんやと思っとった
でもそれがまさか自分のためやなんて…そんなの卑怯や
ホンマ信じられへん
夢みたいや…
せやけど現実でちゃんと名前は俺が好きと言ってくれた
それは夢やない
柔らかい唇から離れると
名前は上目遣いで俺を見上げて
恥ずかしそうに笑った
ああ…アカン、アカンってっ…
キスもするつもりもなかったけど
それ以上のことももちろんするつもりは無かった
ホンマやでっ…と、心の中で言い訳をしながら
しれっと彼女の胸を揉んだ
『ちょっ…!どこ触ってんのっ!?』
逆立ったネコみたいにシャーッ!と怒りながらわかり易く慌てて、胸を揉んでいる俺の手を掴む
「ええやろ、俺のなんやし」
『いや、違うしっ!なんでそうなるの!』
「なんやねん、減るもんちゃうやろ」
『そんな事の前にっ…!そもそも治くんから返事聞いてないしっ!』
「おん?…なんやキスだけやったら足りひんのか」
『そ、そう言うんじゃなくて…!わ、分かってるクセにっ!』
「わかっとるよー、せやからその前に揉まさせて〜」
ホンマからかい甲斐があるなぁ、とニコニコしながらまた手を伸ばそうとした時やった
『ホンっっト!そう言うところは侑くんと揃ってアホなんだからっ!』
ペシっと払いのけられてしまった可哀想な俺の手をよしよし、と撫でていたが
ん?と首を捻った
「は?なんでそこであいつが出てくるん?……まさかっ…ツムも触りよったんかいなっ!」
『さ、触ってはないけど……ふいに、触れてしまった…と言うか自分胸大きいなぁって…』
「ーーおいっ!コラッ!侑ーっ!!!」
自販機の前でうんこ座りしてこっちをウザそうに見ていた侑にガバッと立ち上がり叫ぶ
「なんやねんっ!大きい声出すなや、うっさいねん!」
「うっさいのはお前じゃボケェっ!!名前に何してくれとんのやっ!このド変態!」
「はあ!?なんのことやねんっ!っつーかお前が悪いんやろっ!さっさと告白せぇへんからっ!!あと、イチャつくんなら他所でせーやっ!お前のキスシーンなんか誰も見たないわっっ!!」
「ああ!?気付いとったのになんも言わへんお前も同罪やろがっ!それに同じ顔しとんのに何見たないとかぬかしよるんなっ!難くせつけんなや、クソツムっ!ずっと名前んことエロい目で見くさりよってっ!」
「難くせつけよるんわお前やろ、クソサムっ!それにしゃーないやろっ!名前がエロいんやからぜんぶそいつが悪いんやっ!!」
「ああんっっ!?………それは一理あるな…」
『なんでよっ!!』
ちゃんと背後からツッコんでくれた名前に顔だけそっちを振り向く
「せやから、そんな名前が大好きやでって話しや」
ま、これからよろしゅうなっ!と思いっきりにっこりと笑えば
面食らった名前が途端にうるうると大きい眼に涙いっぱい溜めて
『わたしも…治くん大好きだよ…!』
そう幸せそうに笑った顔は
一生忘れへん、と思った
2021.2.12