秘密から始まる青い春
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遅くなった・・!
階段を駆け上がる足がいつもより早い
僕は焦っている
全ては山口のせいだ
今日も委員会だからと言っていた山口から
何故か話があると言われ
あの場所に行くのに足止めをくらった
「・・で、なに?」
「あ、えっえと〜・・」
自分から話しがあると言った割には、なかなか話そうとしない
痺れを切らした僕は再度口を開いた
「自分から声かけたんデショ、さっさと話しなよ」
「ゴメン!ツッキー!」
バッと頭を下げたかと思うと予想外の言葉を放った
「オレ!好きな人が出来た!」
「・・はっ?」
「い、今までずっと委員会だって言ってたんだけど、実は部活前に彼女に会いに行ってたんだ」
そう言われて確かに委員会とやらがそんなに頻繁にあるのかと思ってはいたが
僕の方も彼女に会える口実が出来るのでスルーしていた
「委員会があるのは本当だよ、で、その委員会で仲良くなった人が居て・・ただ毎回それを言い訳にするのが苦しくなったから」
ウソついててゴメンね、ツッキー・・と肩を落とす山口
「・・別に、怒ってないし、良かったじゃん」
頑張んなよとメガネの位置を直した
「ツッキー・・!ありがとう!」
感極まった山口が抱きつこうとしてくるので、ヒョイっとそれを交わし
「早くカノジョの所、行ってあげたら?」
と言えば うん!ホントありがとうツッキー!と、嬉しそうに去っていった
まさか 山口からこんな話が出るなんて
それに全然気が付かなかった
・・と言うか、そのひとの話、一言も聞いてないんだケド
少しモヤモヤとしながら立ち尽くしていたが、我に返り音楽室に急いだ
このままだと、影山の方が先にあの場所に着いてしまう
それだけは絶対に避けたかったし、それを今まで一度も許したことは無かった
なんか・・イヤな予感がする
キュッと上履きを鳴らし廊下の角を曲がって
音楽室の近くまで来ると
楽しそうに笑う苗字の声が聞こえた
***
「僕が来ない間に随分と楽しそうにしてるね」
少し陰のあるその声に
影山くんと一緒に振り返る
『月島くん、お疲れ様』
私たちの近くまで来る月島くんに
遅かったけど、何かあった?と尋ねたけど
別に、と普段からあまり元気に聞こえない声が更に低いように感じた
具合でも悪いのかな・・?
顔色はいつもと変わらない綺麗な白だけど
表情は心なしか不機嫌そう・・?に見える
「・・で、なんの話ししてたの?」
笑い声廊下まで聞こえてたんだけど、と何処かトゲのある言い方をする
月島くん心配して怒ってるのかな
バレないように気を遣ってくれてるのに
私の方が気をつけなくちゃダメだよね・・
ゴメンね、と言おうとした私に
「イヌだよ、苗字が飼ってるイヌの話し」
影山くんが月島くんの質問に応えた
「イヌ?苗字さん犬飼ってるの?」
『う、うん!そうチワワなんだけどね、ウチのイヌ普通のチワワよりちょっと大きいんだ』
「俺も前にばあちゃん家で飼ってたチワワ居たけど、苗字んとこのはデカかった」
こんぐらい、と両手を広げて説明するけど
余りに大きく表現するものだから面白くて
『それは大き過ぎだよ』
と影山くんにツッコむ
『それで影山くんがそれはチワワじゃなくて、デワワだなって真面目な顔して言うから可笑しくて・・』
影山くんとの会話を思い出し、また笑いがこみ上げた時
「待って」
月島くんの冷たい声が響いた
「・・なんで、影山が苗字さんのイヌのこと知ってるの?」
『えっ・・、それは・・』
「この前、部活の帰りに散歩してる苗字と会った」
ピクッと月島くんの眉が動いたような気がする
「ふーん、そうなんだ」
納得したように言ってるけど、影山くんを見る瞳は少し怖い
「それで?どこで会ったの?」
張り付けたような笑顔をこちらに向け
「なんの話ししたの?」
質問をしてくる月島くん
こ、コワイ・・
初めて話した時に見せた笑顔も怖かったけど
この顔も有無を言わせない何かが含まれているようで・・
「別に、お前には関係ねーだろ」
「関係・・大アリなんだケド」
「はぁ?」
久しぶりに2人が言い合いを始めた
今までは来てすぐピアノを弾いて
その後サッと2人とも部活に向かっていたから、あまり揉めている所は見てなかった
『あー、あのっ!ほら、ケンカはダメだよ』
「これはケンカじゃないよ、王様と話しをしてるだけ」
目で
制止させられた
口をつぐんだ私に気付いた月島くんが
ため息をついて後ろ頭を掻いた
「・・ごめん、そういうつもりじゃなかった」
申し訳なさそうに視線をそらして呟く
「時間、きちゃったからもう行くよ」
影山も、とクイッと顎で廊下を指す
「・・チッ」
時計を見た影山くんは、またな、といつもより小さな声で言って扉に向かう
そんな影山くんを見送ったあと、月島くんはこちらを真っ直ぐに見て
「困らせてゴメン」
ともう一度謝った
『ううん、こっちこそゴメンね』
「苗字さんが謝ることは1つもないデショ」
じゃ、といつものように片手を上げて音楽室を後にした
月島くん・・どうしたんだろう
私はただいつものように2人を見送ることしか出来なかった