秘密から始まる青い春
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「集合ー!」
大地さんの掛け声で練習をしていたメンバーが鵜飼コーチの元に集まる
「よし!じゃあ今日はここまで」
「「あっしたー!」」
それぞれがバラバラに散った頃、僕は片付けを始める影山を見遣った
あの後
「ねぇ、」
何も言わず、スタスタと部室に向かう影山に僕は声をかけた
「・・ホンキでまたあそこに来る気?」
ピタッと影山の足が止まる
「苗字と約束した!」
行くに決まってんだろと言いたげに振り返りまた僕を睨みつけてくる
・・いや、この顔が普通なのか
「知らなかったよ、キミがピアノに興味あるなんて」
「ピアノ・・」
「ああ、王様だからお城で毎晩演奏会でもしてたりするの?」
影山をバカにするように笑って言ったのに
当の本人は何か考えているようだ
「・・・ナニない頭、回転させてんの」
「・・じゃねぇー・・」
「は?」
「ピアノに興味があるんじゃねぇ」
「苗字に興味があんだよ」
真っ直ぐ
僕を見て
当然のように 言ってくる
影山が天然でバカなのは知ってる
だからこそ
ウソのないそれは
僕の何かに火をつけるには
充分だった
***
「おい!月島ぁ!」
「・・だから!声がデカいって」
「すまん!」
ホントにわかってるんだろうか・・
音楽室近くの廊下で影山が足早に駆け寄ってきた
影山に秘密を知られてから
またひと月が経とうとしている
一応、影山もここに来る条件として
苗字がしていることは誰にも言わない
という約束を守らせている
「・・前にも言ったけど、誰にもバレてないよね?」
「しつけーし!俺に限ってそんなヘマはしねーよ」
イヤ、それが一番心配なんだよ・・
ココロの中でツッコミながら音楽室の扉を開けた
『待ってたよー』
ひらひらと手を振りながら笑顔で出迎えてくれる苗字
「うっす!」
「お疲れ」
『お菓子食べる?』
部活前に、ハイ!少ないけど、と小包装のチョコを3つずつ僕と影山の手に置いた
「サンキュー!苗字!」
食べ物を与えられた影山はヨダレを垂らしそうになりながら礼を言う
『ううん、お腹空くもんね!月島くんも良かったら食べてね』
「・・ありがと」
嬉しそうに笑う彼女にやっぱり
どうしようもない感情が渦巻く
『それでは、聴いてください・・』
今日も彼女の演奏が始まる
心地いい・・
目を閉じていれば、いつもと変わりのない
2人だけの空間・・
だったのに
現実は
もらったチョコを一気食いしているコイツがいる
今じゃなくて、あとで食べればいいのに・・
でも
あのウルサイ影山が、本当に真剣な表情で音楽を聴いている
いや、
正確には彼女、苗字を見ているのか
今更ながら1番厄介なヤツに見つかったな、と思う
出来ることなら影山に見つかる前に戻りたい
・・気に入らない
瞬きすらしない影山は口だけモグモグと動かしながら、苗字に見入っていた
***
・・キレイだ
率直にそう思う
ここに通いつめて1カ月が経つ
だけど芽生えたこの感情は初めて会った時と変わらない
なんつーか
バレー以外でこんなに夢中になれるものがこの世にあるなんて
思いもしなかった
初めて経験する気持ちに少し戸惑う
だけど全然嫌じゃない
ずっと見ていたいし
苗字のことが知りたくて堪らない
同時に自分のことも知って欲しい
この1か月の間必ずここに来て
少ししかないこの時間に色々と話してぇんだけど、、
チラッとイスに座っている月島を盗み見た
集中するように目を閉じている
相変わらず何考えてんのか良くわかんねー・・
分かることと言えば、コイツも苗字に興味があるってことぐらい
初めて苗字と出会った日
月島は頑なに俺を追い出そうとしていた
そして俺がここに来るようになって、苗字と会話しようとすると
月島が邪魔をする
でもその理由が最近なんとかなくわかったような気がする
視線を苗字に戻した
こんなにも人の心を揺さぶってくる彼女の存在
それがなんなのか
俺は知りたい