秘密から始まる青い春
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
影山と日向が坂道ダッシュで暴走して、帰って来た所を烏養コーチと澤村さんにこっぴどく叱られた後のミーティング
先生が東京合宿の詳しい話しを始めると、2人の顔つきは真剣なものに変わった
あんなに怒られた後なのにもう切り替わっている
ホント単細胞には呆れる
そんなに合宿が良いのだろうか
コッチとしては、一日中ずっと煩い連中と一緒だし、寝床が変われば寝付きにくいし、何より
そんなに頑張って何になるのだろうか
……まぁ、ひとつだけ
ひとつだけ、良い事と言えば
苗字と一緒に居られる所だろうか
バレー部のマネとなって、話しはするケド
やっぱり前みたいにはいかない
だから練習が終わった後とか…ご飯ぐらいは一緒に食べたり出来ないだろうか
そんな事を思ったが、心の中で頭を振る
合宿となればバレー漬けの毎日になる
やはりそんな事は無理なのだろう
…少し気が重い
「えー、合宿自体は来月になります。そして来月になったら……期末テストがあるの…分かるよね?」
分かるよね?と貼り付けた様な笑顔で言う、先生のセリフに固まった4人を見る
だけど、その4人はギギギギッ…と首から音を鳴らしながらソッポを向いた
「もちろん、赤点の評価がある場合…合宿には行けません。補習がその週末にあるので」
あーあ、ご愁傷様
王様、魂抜けてるし
「影山が息してないです!」
隣の山口が慌てた様子で叫んだ
「赤点って何点からですか!?」
「いや、ソコからかよっ!」
日向の問いに菅原さんが突っ込んだ
「校長先生に行けれる様に一生懸命頼んでみる!!」
「まずは一生懸命赤点を避けなよ」
突っ込むだけ無駄なのは分かっているが、余りにも馬鹿バカしくて可笑しかったので、今度は僕が日向に突っ込んでみた
田中さんと西谷さん達は逃亡を図り
影山はもう真っ白になって再起不能
日向は日向で次は烏養コーチに勉強を教えてくれと頼み込んでいる
そんな烏養コーチは真面目な顔で
「この俺が勉強が出来るタイプに見えるか?」
と堂々とキメた
4人が次々と喚き始める
まさにこの状況
「阿鼻叫喚」
耐え切れなくなって笑いながら揶揄した
***
ヤバい…
本気でヤバい…!
このままだと本当に合宿に行けなくなるっ!
それだけは絶対に回避しないと…
部室で着替え終わったオレは、何としても赤点を回避させなければと、思い悩んでいた
だけど、一体どうすればそんな事が出来んのか
良い案なんて……当然思いつくはずも無く
「…おい、影山!」
正座のまま固まっていたオレに同じく隣に正座している日向が小声で呼ぶ
耳を貸せとジェスチャーするから寄せると、とんでもない事を言い放った
「月島に勉強教えてもらえる様に頼みに行くぞっ…!」
「はぁ!?イヤだっ!!」
何を言い出すんだコイツ、と言わんばかりに大声で拒否の声を上げる
「イヤだってお前…!ワガママ言うなっ!このままだと合宿に行けなくなるんだぞっ!それで良いのかよっ!」
食い下がる日向の言葉に、顔が歪む
それは……絶対にイヤだっ!
昼間、白鳥沢の牛島さんにもあれだけの啖呵を切って帰って来たんだ
より強くなる為に
より強いヤツと試合する為に…!
オレは何としても合宿に行かなければならない
でもっ…!
よりによってアイツに頭下げるなんて……想像しただけで頭が爆発しそうだ…っ!!
だけど、このままだと本当に…
「行くぞっ!影山!」
荷物を持ち、出ようとする日向に、意を決したオレは「…チッ!」と舌打ちをしてカバンを引っ掴むと部室を飛び出した
***
「影山も勉強出来ないなんて意外だよなぁ、頭の回転速そうなのに」
隣で山口が他人事の様に呟く
「頭の中完全にバレーのことだけなんデショ」
それにキッパリと他人事だと吐き捨てる様に応えた
丁度そのタイミングで
「月島ァァァーー!!……さん!!」
背後からいきなり大声で名前を叫ばれ、思わず身を縮める
山口と共に振り返ると、そこには赤点デコボココンビがいた
2人の様子に嫌な予感しかしない僕は眉を顰める
「勉強っ、教えてくれェェー!!……さい!!」
「え?イヤだけど」
嫌な予感は当たった
僕の即答に日向は苦悶の表情を浮かべる
でもその目はまだ諦めてはいない
「……部活前後にちょっとぐらいならいいんじゃない?」
日向の様子にたまらず山口が助け舟を出した
余計な事を…、と思いながらも
……まぁ、ここまで真っ直ぐに素直に頼まれれば、少しぐらいは手を貸しても仕方の無い事だと割り切れる
僕も鬼じゃないし
でもだとしたら、ひとりに恥をかかせて、隣りで黙りこくっているヤツにも、ちゃんと頭を下げさせないと何も始まらない
「…チョット!小さい方にばっか頼ませるって卑怯じゃないの?そっちのデッカイ方」
僕の言葉に今度は影山の肩がピクリと揺れた
ひとりだけ知らん顔なんて、させないよ
「…影山っ、頼めよ!」
日向の声に、影山が何やらボソボソと呟きだした
「はい?」
耳に手をかざす
それでも影山の声は拾えない
分かるよ、僕に頭を下げるの死ぬ程嫌なんだろうね
険しくなっていく影山の顔に僕の悪い癖が出てくる
「良く聞こえないんですけどぉ?」
ワザとらしく挑発してみれば
「…勉強をーー!!教えて下さいっ、コラァー!」
叫びながら、およそ人に物を頼む様な言葉遣いとは程遠い言葉を語尾に付け足し、直角に折れ曲がった影山に、その場に居た全員が後退った時
「うるっせぇぞお前らっ!!近所迷惑だぞ!!」
突然開いた坂ノ下商店の扉から烏養コーチが鬼の形相で顔を出した
「早く帰りやがれっっ!!」
「「す、すみませんっ!」」
僕らの顔を見回して、怒鳴り散らす姿に
「なんで僕まで…」
と、思わず溢してしまった