秘密から始まる青い春
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「この前の、東京って言ってたケド」
「あ?」
「あれ、なに」
インターハイ予選を勝ち進み、いよいよ及川さんと当たる直前の練習
体育館でアップをしていると
月島が話しかけてきた
つか、やっぱ聞かれてたのか・・
「・・別に」
「別にじゃないよね」
被せ気味に言葉を発するヤツは機嫌が悪いのだろう
「苗字さんについてのことデショ」
メガネを直しながらも、その目はオレを睨んでいる
「・・何でお前に言わねーといけねぇんだよ」
「全て知っておきたいからに決まってるじゃん」
「・・言わねぇ」
「言いなよ」
しつこい月島にコッチまでイライラしてくる
・・チッ
「前に言ったらお前めんどくさかったし」
「なんの事かなぁ」
両手をヒラヒラさせながら、悪びれる様子もない月島に
面倒くさくなったオレは前に苗字が東京から引っ越して来た、と言うことを聞いたとぶっきらぼうに言う
「・・へぇ、それをまた黙ってたんだ」
「別に黙ってた訳じゃねーし」
つーか、わざわざ言う間柄じゃねーだろと吐き捨てるように言った
「ま、そうなんだケド・・で、他は?」
「他?」
「他にも苗字さんから聞いてる話し、あるんデショ」
「ねーよ」
「・・どうだか」
「だから!これ以上はねぇって、!」
言ってんだろ!と言おうとした時
『影山くんっ!』
背後から声がして
月島が大きく口を開けたと同時に
振り向きかけた体に衝撃が走った
その勢いのまま今度は壁に後頭部を強打する
「ーーイッてぇ・・!」
頭を抱えて声を絞りだした
『影山くんっ!大丈夫!?』
苗字の声がすぐそばで聞こえる
涙目になりながら薄目を開けると
心配そうに覗き込む苗字の顔が目の前にあって
・・つーか、苗字がオレの上に乗っかっている
『だ、大丈夫?ゴメンね・・つまずいてそのまま影山くんに突っ込んじゃって・・』
申し訳なさそうに眉を寄せて言う苗字に
オレはまったく別の事を考えていた
こんなに近くで苗字を初めて見た・・
彼女の艶々としたピンク色の唇 吐息 シャンプーの香り
そして白い首元に窪む鎖骨
『影山・・くん?』
オレを呼ぶ優しい声
頭を打ったことなんて、もうとっくにどうでも良いのに
ぽんっ、と頭に温もりが乗っかってきたかと思うと
『頭・・痛い?』
優しく苗字が撫でてくれた
思わずその手を掴んで
彼女の目を見据える
少し驚いたように首を傾げる苗字に
掴んだ手を引こうとした瞬間
「いつまでその体勢で居るワケ」
ガッチリとオレの腕を掴んで止めに入る月島
「ほら、苗字さん立てる?」
『あ、うん・・ありがとう』
月島に手を引かれて苗字はゆっくりと立ち上がった
その様子を見て内心舌打ちをしながら、オレも立ち上がる
『影山くん、ホントに大丈夫?』
「苗字さん、そんなに心配しなくても影山は石頭だから大丈夫だよ」
「お前みたいに固くねーよ」
フンっ、と睨みつけてくる月島にソッポを向いてやる
『ま、まぁまぁ・・!さっきもそうやってなんか言い合いしてたでしょ』
ダメだよー、と言いながら下を向いて今度は黙る
その様子にオレも月島も彼女を見た
『・・さっき、東京がどうとか言ってたよね?私の話?』
さっきとはまるで違う、真っ直ぐな視線を向けてくる苗字に
「・・おう」
と短く答えた
オレの答えにしばらく考えていた苗字は
『・・今度、落ち着いたらちゃんと話すから、』
試合、頑張って!それだけ言って清水先輩のところへ駆けて行った
意味深な言葉を残して去って行った苗字に
オレたちは何も言えず
顔を見合わせて、最後の調整へと戻るしかなかった
苗字の過去
いつもはぐらかしてたのに
今更なぜ言う気になったのだろう
「おし!そろそろ時間だっ、行くぞ!」
キャプテンの声がかかった
苗字の事は気になるが、まずは及川さんを倒して
それから・・・
必ず、苗字と
向き合う
「おっし!」
声を出して、自分を奮い立たせた