秘密から始まる青い春
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『今日はお邪魔しました』
歩きながらペコッと頭を下げた
「何言ってんの?これからずっとお邪魔するのに」
余計な気遣いはいらないよ、と月島くんはまたぶっきらぼうに毒を吐いている様にみえて私を気遣ってくれる
優しいな・・月島くんは
思わず笑みが零れる
あの時も・・
初めて月島くんと喋った日
スゴく恐かった
何を言われるんだろう
また辛辣なことを言われるのだろうか
"ヘタクソ" "胸クソ悪イ"
その言葉が脳裏に蘇って
ただただ月島くんが近寄ってくるのを身を固めて、息を呑むしか出来なかった
でも月島くんは私を罵倒するどころか、予想を裏切り、あの条件を出してきた
しかもその条件、私には得があるけど月島くんには何の意味もないように感じて・・
身構えていた私は月島くんの条件にただはい、と返事していた
それでも始めは疑っていた
いつ月島くんが先生に友だちに、このことをバラして
みんなの笑い者にされる
そんな日が来るんだと、思っていたのに・・
いつも真剣に
気持ち良さそうに
必ずあそこに来てくれて
私の演奏を聴いてくれる
それがとても
嬉しくて
嬉しくて・・
疑っていた自分が本当にバカみたい
クラスの違う影山くんともこのことがキッカケで仲良くになれた
そして
あの時間がいつも楽しみだった
3人で過ごす
たった数十分の
かけがえのない時間
幸せだった
でもその時間が突然の終わりを告げて
何か考えがあったワケじゃない
ただ2人とこのまま何事も無かったように
過ごすことがイヤで・・
だから一緒に居たいと願った
そんな私の願いに
月島くんはまた応えてくれる
バレー部、と言うのが少し・・引っかかるけど
たぶんマネージャーをしていたら
あの人たちに
いずれは 会ってしまう
私が裏切ったあの人たちに・・
「・・・何考えてるの?」
『えっ・・!』
「せっかく一緒に帰ってるのに、心ここにあらずって顔してるケド?」
『え、あっ・・ゴメンなさい』
月島くんの不満そうな声で我に返ると、その言葉とは裏腹な少し心配している顔に気付く
『ちょっと考え事しちゃってた』
「それって・・マネージャーのこと?」
『あー・・、そうそう!これから頑張って月島くん達のサポートしていかないといけないなぁと思って』
誤魔化すように慌てて月島くんの話しに乗っかる
「・・ふーん」
そんな私を訝しむように見下ろす月島くん
その後の言葉が
出てこなくて
沈黙が流れた
あー、私のバカ
月島くんの言う通りだよ・・
せっかく楽しくお喋りしてたのに
また昔のことなんか思い出したりして・・
月島くんに失礼だ
何か言おうと口を開きかけた時
「苗字さんってさ、」
先に口を開いた月島くんを見上げる
「ウソつくの、ヘタだよね」
『えっ・・』
瞬間
彼に腕を掴まれる
そのまま 肩を押され
背中に冷たい感触と少しの衝撃が加わる
咄嗟に目を瞑っていた私は
自分の前にある気配に恐る恐る 瞼を開けた
目の前には
上から見下ろす眼鏡越しの彼のあの瞳
その瞳はこの前と同じように
綺麗でどこか影がある
街頭の灯りを背に月島くんの顔は影で暗かったのに
瞳だけは妖しく
そこにあって
心臓の鼓動が速い
私は息をするのも忘れて
何も言えずにその瞳を見続けた
フッと腕を掴む手が緩み
彼の瞳も閉じられる
「・・車」
『・・へっ?』
「気をつけないと轢かれるよ」
スッと月島くんの体が離れた
く、くるま!?全然気付かなかった・・
『あ、あり、ありがと・・です』
明らかに動揺している私に
「苗字さん、意外と隙だらけだよね」
注意しなよ、とイジワルっぽく笑う
心臓が破裂してしまう・・
私は心臓の鼓動を隠すように胸の前で掴まれた方の手首を掴んだ
この人は
なんて心臓に悪いひとなんだ
「大丈夫?顔、真っ赤だけど」
ヒョイッとまた顔を覗き込む月島くん
『へっ・・!いや、何でも、その・・!』
「ウソ」
今度は少年のような顔で
「さっき、ウソつかれたお返し」
肩を竦めて笑った
その無邪気な笑顔で
本当に私の体温が上がる
ど、どうしちゃったんだろう私の心臓
音楽室では見たことのない月島くんの表情、しぐさに
ドギマギしてしまう
というか、なんでウソだってバレたんだろう
『か、からかわれたー!』
「だって苗字さんの反応面白いんだもん」
『ひ、ひとで遊ばないでくださーい!』
「動揺しすぎですー」
さっきの考え事や気まずい沈黙はどこへやら
月島くんがこんなにお喋りだなんて
知らなかった
月島くんがこんなにステキなひとだなんて・・
知れて良かった