ルームシェアのすゝめ
春頃・前
春にしては少し涼しい夜、夕飯を終えて寛いでいたキラーは自室から出ると、リビングにいる二人に呼び掛ける。
「湯船入れたら入るひとー」
「はーい」「入る!!」
方やソファに座り本から目を離さず同じノリで返すドレークと、方やソファではなくラグの上で胡座をかき画面の中で白熱した戦いをこなすあまり元気な返事になったキッドに、キラーは満足気に微笑みながら浴室へと向かった。
「っしゃオラァ!!」
「ようやく一勝か」
雄叫びと共に力強いガッツポーズを決めるキッドに、本を読みつつもその様子を伺っていたドレークが声を掛ければ目を爛々とさせたキッドが振り返る。
「ようやくコツ掴んできたんだ、今までの借り返してやる」
「散々煽られてたしな」
「初心者狩りしやがって、クソだせぇ」
「ボコボコにしてやれ」
「おうよ」
悪い笑みを浮かべると、キッドは再びテレビ画面に向き直る。が、画面はいつの間にかマッチング待機状態になっており、キッドは思わずがなった。
「はあ?!あいつ逃げやがった!!」
「よほど悔しかったんだろ」
「しょうもねぇな。あー、やる気削がれた。ドレークなんかやろうぜ」
「別のゲームならいいが」
「マリカ」
「いいだろう」
別のゲームを準備し始めるキッドを横目に、ドレークは本を閉じてテーブルに置く。そのタイミングで戻って来たキラーが再び声を掛けてくる。
「なあ入浴剤入れても良いか?」
「おれは構わないが」
「いいぞ」
「よし、すげぇの入れとくな」
「ちゃんと入浴剤なんだろうな……?」
「大丈夫だ」
前髪でいくらか隠れているものの口元にはにっこりと笑みを浮かべるキラーに、ドレークは少々心配しつつもレースゲームに参加すべく、キッドからコントローラーを受け取った。
「いや、赤過ぎる」
浴室へ入ったドレークの第一声はそれだった。誰か殺されたのかと見紛うほどの鮮やかな赤に、ホラー映画やゲームのワンシーンが頭を過ぎる。記憶の奥にあるあまり思い出したくないものまで出てきそうで、ドレークはシャワーを頭から被り意識を逸らした。そもそも、血はこんなに明るい色ではないと言い聞かせながら。
身体を洗い終え湯船に浸かっていると扉の向こうに人の気配が現れ、かと思えば遠慮もなしにがらりと開かれる。驚くドレークに構わず、キッドは眠たげな顔をしたゾロを浴室へと押しやった。
「こいつこのまま寝ちまいそうだから世話してやれ」
「あ、ああ」
起きてはいるのかコックを捻りシャワーを浴びるも、目が覚めることはなくゾロは座ったままぼうっと顔にお湯を浴び続ける。見かねたドレークは湯船から出ると、ゾロの後ろに周りシャンプーに手を伸ばす。
「目、閉じててくれ」
「ん」
大人しく洗われるゾロに、まるで介護のようだと思いながらドレークはなるべく優しく手を動かす。流石に全身を洗ってやるのは気が引け、ボディタオルを渡してやれば洗われていないとこをもたもたと洗い始めた。
「今日は随分と遅かったな」
「しあいちかいからな」
「無理はするなよ」
「んー、なんか、最近、めちゃくちゃねみぃ」
ここ数日のゾロの様子を思い返し、確かに常に眠たそうにしていたなとドレークは首を傾げる。同じクラスのキラーが授業中も眠そう、というか寝ていると言っていたことを思い出し、夜更かしでもしてあるのかと問うも首を横に振る。睡眠の質でも悪いのだろうか、と思いそれならば湯に浸かるべきだとゾロを促し、肩まで浸からせた。
「ねそう」
「見ててやるから、少し暖まれ」
「んー」
折角だからとゾロを見守りつつ浴室を掃除し、十分経った頃にゾロを上がらせ、リビングに声を掛ける。
「ロロノアの世話の続き頼んだ」
「任せろ」
やって来たキラーにゾロを託し、ドレークは掃除の仕上げに取り掛かった。
春にしては少し涼しい夜、夕飯を終えて寛いでいたキラーは自室から出ると、リビングにいる二人に呼び掛ける。
「湯船入れたら入るひとー」
「はーい」「入る!!」
方やソファに座り本から目を離さず同じノリで返すドレークと、方やソファではなくラグの上で胡座をかき画面の中で白熱した戦いをこなすあまり元気な返事になったキッドに、キラーは満足気に微笑みながら浴室へと向かった。
「っしゃオラァ!!」
「ようやく一勝か」
雄叫びと共に力強いガッツポーズを決めるキッドに、本を読みつつもその様子を伺っていたドレークが声を掛ければ目を爛々とさせたキッドが振り返る。
「ようやくコツ掴んできたんだ、今までの借り返してやる」
「散々煽られてたしな」
「初心者狩りしやがって、クソだせぇ」
「ボコボコにしてやれ」
「おうよ」
悪い笑みを浮かべると、キッドは再びテレビ画面に向き直る。が、画面はいつの間にかマッチング待機状態になっており、キッドは思わずがなった。
「はあ?!あいつ逃げやがった!!」
「よほど悔しかったんだろ」
「しょうもねぇな。あー、やる気削がれた。ドレークなんかやろうぜ」
「別のゲームならいいが」
「マリカ」
「いいだろう」
別のゲームを準備し始めるキッドを横目に、ドレークは本を閉じてテーブルに置く。そのタイミングで戻って来たキラーが再び声を掛けてくる。
「なあ入浴剤入れても良いか?」
「おれは構わないが」
「いいぞ」
「よし、すげぇの入れとくな」
「ちゃんと入浴剤なんだろうな……?」
「大丈夫だ」
前髪でいくらか隠れているものの口元にはにっこりと笑みを浮かべるキラーに、ドレークは少々心配しつつもレースゲームに参加すべく、キッドからコントローラーを受け取った。
「いや、赤過ぎる」
浴室へ入ったドレークの第一声はそれだった。誰か殺されたのかと見紛うほどの鮮やかな赤に、ホラー映画やゲームのワンシーンが頭を過ぎる。記憶の奥にあるあまり思い出したくないものまで出てきそうで、ドレークはシャワーを頭から被り意識を逸らした。そもそも、血はこんなに明るい色ではないと言い聞かせながら。
身体を洗い終え湯船に浸かっていると扉の向こうに人の気配が現れ、かと思えば遠慮もなしにがらりと開かれる。驚くドレークに構わず、キッドは眠たげな顔をしたゾロを浴室へと押しやった。
「こいつこのまま寝ちまいそうだから世話してやれ」
「あ、ああ」
起きてはいるのかコックを捻りシャワーを浴びるも、目が覚めることはなくゾロは座ったままぼうっと顔にお湯を浴び続ける。見かねたドレークは湯船から出ると、ゾロの後ろに周りシャンプーに手を伸ばす。
「目、閉じててくれ」
「ん」
大人しく洗われるゾロに、まるで介護のようだと思いながらドレークはなるべく優しく手を動かす。流石に全身を洗ってやるのは気が引け、ボディタオルを渡してやれば洗われていないとこをもたもたと洗い始めた。
「今日は随分と遅かったな」
「しあいちかいからな」
「無理はするなよ」
「んー、なんか、最近、めちゃくちゃねみぃ」
ここ数日のゾロの様子を思い返し、確かに常に眠たそうにしていたなとドレークは首を傾げる。同じクラスのキラーが授業中も眠そう、というか寝ていると言っていたことを思い出し、夜更かしでもしてあるのかと問うも首を横に振る。睡眠の質でも悪いのだろうか、と思いそれならば湯に浸かるべきだとゾロを促し、肩まで浸からせた。
「ねそう」
「見ててやるから、少し暖まれ」
「んー」
折角だからとゾロを見守りつつ浴室を掃除し、十分経った頃にゾロを上がらせ、リビングに声を掛ける。
「ロロノアの世話の続き頼んだ」
「任せろ」
やって来たキラーにゾロを託し、ドレークは掃除の仕上げに取り掛かった。
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