一人と一羽と一匹の珍道中
『これでも悪魔なので』
旅の道中、とある部屋にて
────────────────────
勢い良く開いた扉に危うくぶつかりそうになったドレークは、しかし飛び出してきたそれを避けることはできず小さな塊から突進を食らう。痛みに呻きつつ視線を下ろすと、自分の腹に顔を押し付ける小さな主がいた。
「どうした?あいつに何かされたか?」
警戒と心配、まだ訳も聞いていないうちから半分決め付けによる怒りを抱きつつ尋ねると、顔を上げたゾロが紅潮した顔と潤んだ瞳で、ドレークを見上げた。
「……く」
「く?」
「くちの中、舐め回された」
「……は?」
「やだって言ったのに……!!」
小さな手がドレークのシャツに皺を作り、ぎゅうと握られた手の力にゾロの憤りを悟る。照れではなく困惑と酸素不足、そして怒りであるとわかってはいるものの、その表情から確かに婀娜を感じてしまい自己嫌悪すると同時に、そうさせたキングへの怒りが湧き上がる。やはり二人きりにさせるべきではなかったと多大なる後悔と反省をしつつ、ドレークはゾロにうがいしてくるように言って大股で部屋を進んだ。
ソファで優雅に本を読むキングの姿を認めると、ドレークは真っ直ぐに近付き躊躇なく拳を振るう。が、それは容易く本でいなされ、ドレークは舌を打つ。
「なんだ、唐突に」
言葉に反して驚きはなくむしろニヤついているキングに、ドレークは嫌悪と怒りを隠さずに向けた。
「あの子が嫌がることをするな」
「嫌がる?善さそうに見えたがな?」
悦を滲ませ耽美な笑みを浮かべるキングに、ドレークは青筋を浮かべ拳を握り込む。
「よほど死にたいらしいな」
「先を越されたからと言って当たってくるな、みっともない」
「おれはそんなこと一言も言ってないが?」
「美味かったぞ?」
「……血が美味いんだから、そうに決まってるだろ」
「精液もさぞ美味いに違いない」
唇を舐めて目を細めるキングは冗談で言っている訳ではなく、それがわかっているドレークは殺気すら滲ませながら睨み付ける。
「それやったら本気で殺すからな」
「お前も欲しいんじゃないのか?何を遠慮する必要がある。人間なんぞ、おれ達の餌に過ぎないだろうが」
「おれにとってはそうじゃない」
「散々食ってきたくせに、何を偉そうに」
「……魂を貰ったことはあるが、手を出したことはない」
「そこまでの腰抜けだったか。それならあいつはおれだけで楽しませてもらおう」
「だから!せめて成人するまで待て!」
「……は?」
我慢できずついに大きな声を出したドレークに、キングは一瞬理解できず呆けてしまう。それを後目に切々と教育に悪いだのなんだのと、キングが思ってもいなかった方向から説教を垂れるドレークは真剣そのものだった。
「つまり、なにか?お前もあいつが成人したらする気だったと?」
「そ、れは、本人が良いといえば、あるいは……」
目を逸らし微かに顔を赤らめさせながら言うドレークに、キングはこれでもかと引いた。
「お前の方がやばい」
「はあ?!どこがだ!」
「ガチで惚れてるのか、あれに」
「そんなわけないだろ!」
「いや、きっつ……」
「言い掛かりはやめろ!」
「ああ、だからあんなに怒ってたのか。悪かったな、処女にはしておいてやる」
「殺す」
体格の良い大人二人が大人気なく取っ組み合いを始め、部屋は更に騒がしくなる。うがいついでに歯も磨いていたゾロは戻った先の大惨事に少し引いた。
「うわ、何してんだお前ら」
「こいつもキスしたいんだとよ」
「言ってない!言ってないからな!」
「思ってはいると」
「黙れ!」
否定はしないのか、と思いつつ二人が距離を取り対峙したタイミングでゾロはドレークに歩み寄り、両手を上に伸ばす。こうすることでドレークが己の身体を抱え上げることを、ゾロは学んでいた。狙い通り、ドレークはすぐに屈んでゾロを抱え上げる。
「どうし」
言葉を喰らうように、ゾロはドレークの口に噛み付いた。先程されたように、とはいかないまでも短い舌を口内に突っ込み、ドレークの舌に擦り付けてさっと離れる。何が起きたのか理解出来ず固まるドレークに、ゾロは一人頷いていた。
「まあ、好き勝手されるよりはマシだな」
脳の処理が追い付いていないドレークの様子に、キングは笑いを堪えながらそのリアクションを静かに待っていた。
(2024/12/06)
旅の道中、とある部屋にて
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勢い良く開いた扉に危うくぶつかりそうになったドレークは、しかし飛び出してきたそれを避けることはできず小さな塊から突進を食らう。痛みに呻きつつ視線を下ろすと、自分の腹に顔を押し付ける小さな主がいた。
「どうした?あいつに何かされたか?」
警戒と心配、まだ訳も聞いていないうちから半分決め付けによる怒りを抱きつつ尋ねると、顔を上げたゾロが紅潮した顔と潤んだ瞳で、ドレークを見上げた。
「……く」
「く?」
「くちの中、舐め回された」
「……は?」
「やだって言ったのに……!!」
小さな手がドレークのシャツに皺を作り、ぎゅうと握られた手の力にゾロの憤りを悟る。照れではなく困惑と酸素不足、そして怒りであるとわかってはいるものの、その表情から確かに婀娜を感じてしまい自己嫌悪すると同時に、そうさせたキングへの怒りが湧き上がる。やはり二人きりにさせるべきではなかったと多大なる後悔と反省をしつつ、ドレークはゾロにうがいしてくるように言って大股で部屋を進んだ。
ソファで優雅に本を読むキングの姿を認めると、ドレークは真っ直ぐに近付き躊躇なく拳を振るう。が、それは容易く本でいなされ、ドレークは舌を打つ。
「なんだ、唐突に」
言葉に反して驚きはなくむしろニヤついているキングに、ドレークは嫌悪と怒りを隠さずに向けた。
「あの子が嫌がることをするな」
「嫌がる?善さそうに見えたがな?」
悦を滲ませ耽美な笑みを浮かべるキングに、ドレークは青筋を浮かべ拳を握り込む。
「よほど死にたいらしいな」
「先を越されたからと言って当たってくるな、みっともない」
「おれはそんなこと一言も言ってないが?」
「美味かったぞ?」
「……血が美味いんだから、そうに決まってるだろ」
「精液もさぞ美味いに違いない」
唇を舐めて目を細めるキングは冗談で言っている訳ではなく、それがわかっているドレークは殺気すら滲ませながら睨み付ける。
「それやったら本気で殺すからな」
「お前も欲しいんじゃないのか?何を遠慮する必要がある。人間なんぞ、おれ達の餌に過ぎないだろうが」
「おれにとってはそうじゃない」
「散々食ってきたくせに、何を偉そうに」
「……魂を貰ったことはあるが、手を出したことはない」
「そこまでの腰抜けだったか。それならあいつはおれだけで楽しませてもらおう」
「だから!せめて成人するまで待て!」
「……は?」
我慢できずついに大きな声を出したドレークに、キングは一瞬理解できず呆けてしまう。それを後目に切々と教育に悪いだのなんだのと、キングが思ってもいなかった方向から説教を垂れるドレークは真剣そのものだった。
「つまり、なにか?お前もあいつが成人したらする気だったと?」
「そ、れは、本人が良いといえば、あるいは……」
目を逸らし微かに顔を赤らめさせながら言うドレークに、キングはこれでもかと引いた。
「お前の方がやばい」
「はあ?!どこがだ!」
「ガチで惚れてるのか、あれに」
「そんなわけないだろ!」
「いや、きっつ……」
「言い掛かりはやめろ!」
「ああ、だからあんなに怒ってたのか。悪かったな、処女にはしておいてやる」
「殺す」
体格の良い大人二人が大人気なく取っ組み合いを始め、部屋は更に騒がしくなる。うがいついでに歯も磨いていたゾロは戻った先の大惨事に少し引いた。
「うわ、何してんだお前ら」
「こいつもキスしたいんだとよ」
「言ってない!言ってないからな!」
「思ってはいると」
「黙れ!」
否定はしないのか、と思いつつ二人が距離を取り対峙したタイミングでゾロはドレークに歩み寄り、両手を上に伸ばす。こうすることでドレークが己の身体を抱え上げることを、ゾロは学んでいた。狙い通り、ドレークはすぐに屈んでゾロを抱え上げる。
「どうし」
言葉を喰らうように、ゾロはドレークの口に噛み付いた。先程されたように、とはいかないまでも短い舌を口内に突っ込み、ドレークの舌に擦り付けてさっと離れる。何が起きたのか理解出来ず固まるドレークに、ゾロは一人頷いていた。
「まあ、好き勝手されるよりはマシだな」
脳の処理が追い付いていないドレークの様子に、キングは笑いを堪えながらそのリアクションを静かに待っていた。
(2024/12/06)
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