kid + killer × zoro
『それが最上』
現パロ
まだ付き合ってない
────────────────────
居酒屋の個室内、そのテーブルの上に邪魔くさく突っ伏すキラーは、お通しを持って来た定員をビビらせてもなお、顔を上げない。さほど待たずして酒も来たというのに動く気配もなく、頭頂部にジョッキをぶつけて乾杯し、お通しのしゃらくさいポテトサラダをつまむ。
「ンなショック受けるほどか?」
驚きはしたがここまで落ち込んでいない自分としては、何故ここまで打ちひしがれているのかわからなかった。らしくない、とも思う。
事の発端はロロノアからのメッセージで、そこには一言『恋人ができた』とだけ書かれていた。その辺りからキラーは落ち着きをなくし、衝撃を受けつつおれが性別を聞けば『男』と返され、そこから概ね現在の状態に至っている。
そういうことに興味があったのか、とか、男もいけるのか、とか、思うことは沢山あれど、おめでとうと言いたいはずもなくよくわからないスタンプを送り、静かになってしまったキラーを引き摺ってここへとやって来た。
「奪えばいいだろ、奪えば」
ロロノアの恋人というポジションはなにも、何処の馬の骨かもわからない男で完全固定されたわけではない。いくらでも奪い取る権利や機会はあるだろうに、何をこんなにも悄気ているのか。
おれが頼んだものが次々と運ばれる中、ようやくキラーは身体を起こす。表情は思ったよりも沈んでいないが、元気はない。あまり長くその顔を見せてくれるなと、焼き鳥を齧りながら考える。
「全部欲しかった」
「あ?」
「ロロノアの初めては、おれが全部欲しかった……!」
予想とだいぶ違う理由に面食らう。こいつそんな性癖あったっけ、などとこれまでが走馬灯のように流れていくが、そのような特性は見受けられなかった。死にそうな声で何言ってんだこいつ、と呆れつつビールを飲み干し注文パネルでおかわりを注文する。
「付き合って速攻かけるような奴じゃなきゃ大丈夫だろ」
「あんなエロい奴を前にして手を出さないとかあるのか?」
「あんだろ。相手が童貞とか」
「童貞ほど狂わされると思うけどな」
ノーコメントで。端末が通知を知らせてきたので画面をタップすると、いつの間にかキラーがロロノアにスタンプで返事をしていた。馬鹿正直に大泣きするスタンプを送る奴があるか。
「キッドならまあノーカンだし許せたんだけどな」
「ノーカンって、お前なぁ」
「寝取るしかなくなっちまったよ」
「嫌われんぞ」
「おれのテクの方がすご、いや、比べられるってことはもうヤってんじゃねぇか。許せねぇ」
言うや否やさっきのスタンプなどなかったかのように『今キッドと呑んでるけど来るか?』とロロノアへ誘いのメッセージを送り出した。幸いなことにここはロロノアともよく来るから、迷わず辿り着けることだろう。
「ここを選んだおれに感謝してもいいんだぜ」
「ありがとう、初フェラの権利は譲ってやる」
「それは別にいらねぇよ」
信じられない、という顔を向けてくるな。ロロノアの返事は早く、今から向かう旨のスタンプが返される。このままだとキラーがロロノアを喰いかねないだろう。
「手ぇ出すんならちゃんと伝えること伝えてからにしろよな」
「そうなったらキッドはどうする?」
思わず、手が止まる。元より本心を告げるつもりはなく、じわじわとあいつの生活を侵食できればいいと思っていた。何を誘うにも、誘われるのも気兼ねなくできるような、そんな関係を望んでいた。それでいいと思っていた。だが、現実はどうだ。ロロノアの隣に誰かがふんぞり返っていると思うだけで、舌打ちしそうになる。そんな相手ができるとも思っていなかったおれは、ロロノアを深く理解できていなかったということだ。悔しさすらある。
「そうだな……」
ロロノアの隣がキラーである分には、嫌悪はない。ただ、独り占めしてんじゃねぇよ、という思いが不思議と他よりも強かった。つまり、だ。
「おれも、言うか」
「ほう?」
「何をだ?」
キラーの後に続いた言葉、もとい声に顔を向けると、ロロノアが既に到着していた。近くにでもいたのか、思っていたよりも早い到着に驚かされつつ適当にはぐらかし、端に少し寄ってやればいつも通り隣にやって来る。ちなみにキラーはロロノアと向かい合いたいタイプなので、ロロノアをどこに座らせるかで揉めることはない。
「恋人とはどうだ?」
ロロノアの分の酒を注文してやっていると、キラーが単刀直入にぶっ込んだ。ちらと伺った表情は凪いでおり、とても脳内でロロノアを抱き潰している奴とは思えない。
「ん?ああ、さっき別れた」
「はあ?」
さっきの今で、何が起こった。いや、知らされたのが今日なだけで付き合い自体は前からあったかもしれないが。同じことを思ったキラーがそれを問うと「今日」という一言を返され流石に困惑する。
「何があったらンなことになる」
酒を前にして機嫌良くしていたロロノアが、途端に顔を顰める。それほどのことがあったらしい。
「前から付き合ってくれってしつこくてよ、あまりにもしつこいから一週間だけって約束で付き合ったら、速攻で襲いにきたからぶん殴って別れてきた」
「……そりゃあ、災難だったな」
良い知らせと悪い知らせが同時に来たような、そんな気分だった。意図せず牽制に成功しているロロノアに対してどのような一手を繰り出そうか考えているであろうキラーが顎に手を当てる。
「すぐ別れるのに恋人できた、なんて言ったのか」
「ああ、あれな。あらゆる奴に同じ文面で送ってる。何されっかわかったもんじゃねぇから、何かあった時にそういえば、って思ってもらえるようにな」
「ンなやべぇ奴なのかよ……」
「あ、もう必要ねぇから訂正しなきゃなんねぇのか」
「いや、その必要はない」
面倒くさそうにしていたロロノアに、キラーが待ったをかける。なんとなく何を考えているのか察してしまうが、とりあえず見守るため言葉を飲み込み枝豆を口に運ぶ。
「そんなやべぇ奴が簡単に別れに応じるとは思えねぇ。そうだろ?」
「まあ、そうだな」
「そこでだ、もうおれと付き合ってることにしとけ」
「キラーと?」
「ついでにキッドも」
「ついでかよ」
「つまり、どういうことだ?」
「おれ達は見た目が厳ついだろ?そんな奴二人と付き合ってるってなったら、抑止力にはなる。違うか?」
「なるほど、やべぇ奴にはやべぇ奴をぶつけるって寸法か」
「おい」
とんでもないことを言われたわりに、ロロノアは納得している様子でキラーは満足気だった。もうそいつ警察に突き出した方がいいだろ、と思いつつ事がおれ達に良い方に転ぶならば、利用しない手はない。
「まあ、おれは構わねぇけどよ」
「訂正するのが面倒なら、嘘じゃなくしちまえばいい」
提案する体で誘導するような言葉に対し、ロロノアはさほど考える間もなく笑みを浮かべた。
「なら、頼んだ」
「ああ、任せておけ」
「なるべく一人にゃさせねぇからな」
「そうだ、今夜泊まりに来たらどうだ?家がバレてたら危ないと思うが」
「確かに。そうさせてくれ」
ナチュラルに話が纏まりロロノアがトイレに席を立ったところで、ご機嫌なキラーをからかいつつ釘を刺す。
「ハジメテはしばらく無理そうだな?」
「知ってるだろ、キッド」
目を細め、口角を上げる相棒は本当に、愉しそうだ。
「おれがゆっくりじっくり味わうのも、好きだってこと」
「……遠慮しねぇからな、おれも」
「勿論だ」
さて、どうなるか。とりあえず偽りとはいえ恋人という関係を得たのだから、全力で落としにいかねばならない。
「負けねぇからな」
「違うぞキッド」
人差し指を唇に当て、静かに、とでも言うようにキラーが声を潜める。
「何かやる時は二人で、だ。そうすりゃどっちか、じゃなくてどっちも、になる」
ああ、なるほど。おれかキラーか、の二択ではなく、おれとキラーと付き合うか否か、の二択にさせるということか。
「てっきり最終的には取り合うもんかと思ったぜ」
「好きなもんをお前と分かち合うのが好きなんだ、おれは」
そういえば昔から、何でもかんでも共有したがる節がある。まさか好きな相手までそうとは。おれの相棒ってやつは。
「最高だな」
「だろ」
(2024/12/30)
現パロ
まだ付き合ってない
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居酒屋の個室内、そのテーブルの上に邪魔くさく突っ伏すキラーは、お通しを持って来た定員をビビらせてもなお、顔を上げない。さほど待たずして酒も来たというのに動く気配もなく、頭頂部にジョッキをぶつけて乾杯し、お通しのしゃらくさいポテトサラダをつまむ。
「ンなショック受けるほどか?」
驚きはしたがここまで落ち込んでいない自分としては、何故ここまで打ちひしがれているのかわからなかった。らしくない、とも思う。
事の発端はロロノアからのメッセージで、そこには一言『恋人ができた』とだけ書かれていた。その辺りからキラーは落ち着きをなくし、衝撃を受けつつおれが性別を聞けば『男』と返され、そこから概ね現在の状態に至っている。
そういうことに興味があったのか、とか、男もいけるのか、とか、思うことは沢山あれど、おめでとうと言いたいはずもなくよくわからないスタンプを送り、静かになってしまったキラーを引き摺ってここへとやって来た。
「奪えばいいだろ、奪えば」
ロロノアの恋人というポジションはなにも、何処の馬の骨かもわからない男で完全固定されたわけではない。いくらでも奪い取る権利や機会はあるだろうに、何をこんなにも悄気ているのか。
おれが頼んだものが次々と運ばれる中、ようやくキラーは身体を起こす。表情は思ったよりも沈んでいないが、元気はない。あまり長くその顔を見せてくれるなと、焼き鳥を齧りながら考える。
「全部欲しかった」
「あ?」
「ロロノアの初めては、おれが全部欲しかった……!」
予想とだいぶ違う理由に面食らう。こいつそんな性癖あったっけ、などとこれまでが走馬灯のように流れていくが、そのような特性は見受けられなかった。死にそうな声で何言ってんだこいつ、と呆れつつビールを飲み干し注文パネルでおかわりを注文する。
「付き合って速攻かけるような奴じゃなきゃ大丈夫だろ」
「あんなエロい奴を前にして手を出さないとかあるのか?」
「あんだろ。相手が童貞とか」
「童貞ほど狂わされると思うけどな」
ノーコメントで。端末が通知を知らせてきたので画面をタップすると、いつの間にかキラーがロロノアにスタンプで返事をしていた。馬鹿正直に大泣きするスタンプを送る奴があるか。
「キッドならまあノーカンだし許せたんだけどな」
「ノーカンって、お前なぁ」
「寝取るしかなくなっちまったよ」
「嫌われんぞ」
「おれのテクの方がすご、いや、比べられるってことはもうヤってんじゃねぇか。許せねぇ」
言うや否やさっきのスタンプなどなかったかのように『今キッドと呑んでるけど来るか?』とロロノアへ誘いのメッセージを送り出した。幸いなことにここはロロノアともよく来るから、迷わず辿り着けることだろう。
「ここを選んだおれに感謝してもいいんだぜ」
「ありがとう、初フェラの権利は譲ってやる」
「それは別にいらねぇよ」
信じられない、という顔を向けてくるな。ロロノアの返事は早く、今から向かう旨のスタンプが返される。このままだとキラーがロロノアを喰いかねないだろう。
「手ぇ出すんならちゃんと伝えること伝えてからにしろよな」
「そうなったらキッドはどうする?」
思わず、手が止まる。元より本心を告げるつもりはなく、じわじわとあいつの生活を侵食できればいいと思っていた。何を誘うにも、誘われるのも気兼ねなくできるような、そんな関係を望んでいた。それでいいと思っていた。だが、現実はどうだ。ロロノアの隣に誰かがふんぞり返っていると思うだけで、舌打ちしそうになる。そんな相手ができるとも思っていなかったおれは、ロロノアを深く理解できていなかったということだ。悔しさすらある。
「そうだな……」
ロロノアの隣がキラーである分には、嫌悪はない。ただ、独り占めしてんじゃねぇよ、という思いが不思議と他よりも強かった。つまり、だ。
「おれも、言うか」
「ほう?」
「何をだ?」
キラーの後に続いた言葉、もとい声に顔を向けると、ロロノアが既に到着していた。近くにでもいたのか、思っていたよりも早い到着に驚かされつつ適当にはぐらかし、端に少し寄ってやればいつも通り隣にやって来る。ちなみにキラーはロロノアと向かい合いたいタイプなので、ロロノアをどこに座らせるかで揉めることはない。
「恋人とはどうだ?」
ロロノアの分の酒を注文してやっていると、キラーが単刀直入にぶっ込んだ。ちらと伺った表情は凪いでおり、とても脳内でロロノアを抱き潰している奴とは思えない。
「ん?ああ、さっき別れた」
「はあ?」
さっきの今で、何が起こった。いや、知らされたのが今日なだけで付き合い自体は前からあったかもしれないが。同じことを思ったキラーがそれを問うと「今日」という一言を返され流石に困惑する。
「何があったらンなことになる」
酒を前にして機嫌良くしていたロロノアが、途端に顔を顰める。それほどのことがあったらしい。
「前から付き合ってくれってしつこくてよ、あまりにもしつこいから一週間だけって約束で付き合ったら、速攻で襲いにきたからぶん殴って別れてきた」
「……そりゃあ、災難だったな」
良い知らせと悪い知らせが同時に来たような、そんな気分だった。意図せず牽制に成功しているロロノアに対してどのような一手を繰り出そうか考えているであろうキラーが顎に手を当てる。
「すぐ別れるのに恋人できた、なんて言ったのか」
「ああ、あれな。あらゆる奴に同じ文面で送ってる。何されっかわかったもんじゃねぇから、何かあった時にそういえば、って思ってもらえるようにな」
「ンなやべぇ奴なのかよ……」
「あ、もう必要ねぇから訂正しなきゃなんねぇのか」
「いや、その必要はない」
面倒くさそうにしていたロロノアに、キラーが待ったをかける。なんとなく何を考えているのか察してしまうが、とりあえず見守るため言葉を飲み込み枝豆を口に運ぶ。
「そんなやべぇ奴が簡単に別れに応じるとは思えねぇ。そうだろ?」
「まあ、そうだな」
「そこでだ、もうおれと付き合ってることにしとけ」
「キラーと?」
「ついでにキッドも」
「ついでかよ」
「つまり、どういうことだ?」
「おれ達は見た目が厳ついだろ?そんな奴二人と付き合ってるってなったら、抑止力にはなる。違うか?」
「なるほど、やべぇ奴にはやべぇ奴をぶつけるって寸法か」
「おい」
とんでもないことを言われたわりに、ロロノアは納得している様子でキラーは満足気だった。もうそいつ警察に突き出した方がいいだろ、と思いつつ事がおれ達に良い方に転ぶならば、利用しない手はない。
「まあ、おれは構わねぇけどよ」
「訂正するのが面倒なら、嘘じゃなくしちまえばいい」
提案する体で誘導するような言葉に対し、ロロノアはさほど考える間もなく笑みを浮かべた。
「なら、頼んだ」
「ああ、任せておけ」
「なるべく一人にゃさせねぇからな」
「そうだ、今夜泊まりに来たらどうだ?家がバレてたら危ないと思うが」
「確かに。そうさせてくれ」
ナチュラルに話が纏まりロロノアがトイレに席を立ったところで、ご機嫌なキラーをからかいつつ釘を刺す。
「ハジメテはしばらく無理そうだな?」
「知ってるだろ、キッド」
目を細め、口角を上げる相棒は本当に、愉しそうだ。
「おれがゆっくりじっくり味わうのも、好きだってこと」
「……遠慮しねぇからな、おれも」
「勿論だ」
さて、どうなるか。とりあえず偽りとはいえ恋人という関係を得たのだから、全力で落としにいかねばならない。
「負けねぇからな」
「違うぞキッド」
人差し指を唇に当て、静かに、とでも言うようにキラーが声を潜める。
「何かやる時は二人で、だ。そうすりゃどっちか、じゃなくてどっちも、になる」
ああ、なるほど。おれかキラーか、の二択ではなく、おれとキラーと付き合うか否か、の二択にさせるということか。
「てっきり最終的には取り合うもんかと思ったぜ」
「好きなもんをお前と分かち合うのが好きなんだ、おれは」
そういえば昔から、何でもかんでも共有したがる節がある。まさか好きな相手までそうとは。おれの相棒ってやつは。
「最高だな」
「だろ」
(2024/12/30)
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