other
『在るべき場所』
ゾロと鬼徹の話
転生現代ファンタジーパロ
一人と一振しか出ません
※FGOの煉獄みたいな鬼徹がいます
わからない人は鬼徹に意思と人格があると思っていただければOKです
────────────────────
手にした者は死ぬ、振るった者は死ぬ。幸運や不運が重なり気が付けば、懐かしさすらあるそんな曰くが付いていた。そうして巡り巡って辿り着いた寺の、人目に晒されることなどない倉庫の奥で退屈を貪り喰らっている。
あの頃は良かった。かの主を思い出せば潮風と共に自然と主の仲間の賑やかな声まで、聴こえてくる。主は強かった。強くなっていく主と共にあれることが、いつしか誇りになっていた。最期まで傍に在れたのだから、刀冥利に尽きるというもの。けれど人ならざる自分まで、第二の生があるなんざ聞いていない。しかもまた同じ姿、似たような逸話、そして曰くをこさえるなど、誰が想像できようか。
また、自分を見つけてはくれないだろうか。有象無象ごと押し込まれた樽から自分を見出したのはあの女ではあったが、おれを振るうと決めたのは主だ。で、あるならば、やはりまた、主に見つけて欲しい。いや、そうする義務が、あるんじゃないのか。戦場で散りたいと思っていた自分を再び表舞台で生きさせてくれた主には、その義務があるんじゃないのか。自分を振るうことは、佩くことすら困難なこの平和な時代では難しいかもしれないが、それでも願わずにはいられない。
美術館にいた時よりも管理は緩く、このままここでゆっくりと朽ちていくのかもしれない。呪われているとまで言われた自分は、それを望まれているのだろう。お前らが勝手に争い、負け、死んでいっただけだろうに。血を欲している訳ではない。ただ、強敵と相見えたい。いつの間にか自分も、そう思うようになっていた。
なあ、主よ。アンタは退屈じゃないのか。この平穏を、持て余してはいないか。美術品や骨董品にすらなれず、呪物としてしまい込まれた自分には、この世は、あまりにも。
「いた」
馴染みのない、けれど、懐かしい声がした。それと共に、何年も浴びていなかった日差しが周囲を満たす。違える筈もない。違える筈がない。記憶よりも年若い主が、木箱に収まる自分を見下ろしていた。無いはずの心臓が、高鳴るのを確かに感じた。
「変わんねぇな、お前」
声変わりを迎えていない主の笑みは、あの頃と全く変わっていない。待ち望んでいた邂逅があまりにも突然で、溢れる喜びを上手く昇華できず呆けてしまう。
『主こそ、変わらな過ぎだ』
「……前よりわかるぜ、お前の声」
目を丸くしたかと思えば、笑みを深めてそんなことを言う。声、とはどういうことか。
『わかる、のか?おれの声が、言葉が』
「おー、わかるぜ。前はちょっとした機嫌しか感じ取れなかったけど、今は結構はっきりわかる」
『なぜ』
「意思疎通が必要だからかもな」
言うや否や、主はおれを手に蔵の外へ出る。まだ日は落ちていないというのに、辺りはどこか重苦しい空気に満たされているような感触がある。
『あれは……?』
人の形をした、人ではないものが立っていた。揺らめく炎のように覚束無い足取りで、こちらへとにじり寄ってくる。自分と近しくも異なる存在にも、感じられた。主はおれをいとも容易く鞘から解放し、構える。この時、どんなに待ち望んでいたことか。
「最近、あの手のもんが視えるようになった。かと思えば目が合う端から襲って来やがる。よくないもんらしいから、斬ることにした」
『なるほど』
主に仇なすものであれば、喜んで振るわれよう。何故か、実態があるとは思えないそれを、自分は斬れると確信を持って言えた。
「そんじゃまあ、よろしく頼むぜ相棒」
『任せておけ』
この曇天の空に誓おう。主の命尽きるまで、その傍らに在ると。
(2025/01/24)
ゾロと鬼徹の話
転生現代ファンタジーパロ
一人と一振しか出ません
※FGOの煉獄みたいな鬼徹がいます
わからない人は鬼徹に意思と人格があると思っていただければOKです
────────────────────
手にした者は死ぬ、振るった者は死ぬ。幸運や不運が重なり気が付けば、懐かしさすらあるそんな曰くが付いていた。そうして巡り巡って辿り着いた寺の、人目に晒されることなどない倉庫の奥で退屈を貪り喰らっている。
あの頃は良かった。かの主を思い出せば潮風と共に自然と主の仲間の賑やかな声まで、聴こえてくる。主は強かった。強くなっていく主と共にあれることが、いつしか誇りになっていた。最期まで傍に在れたのだから、刀冥利に尽きるというもの。けれど人ならざる自分まで、第二の生があるなんざ聞いていない。しかもまた同じ姿、似たような逸話、そして曰くをこさえるなど、誰が想像できようか。
また、自分を見つけてはくれないだろうか。有象無象ごと押し込まれた樽から自分を見出したのはあの女ではあったが、おれを振るうと決めたのは主だ。で、あるならば、やはりまた、主に見つけて欲しい。いや、そうする義務が、あるんじゃないのか。戦場で散りたいと思っていた自分を再び表舞台で生きさせてくれた主には、その義務があるんじゃないのか。自分を振るうことは、佩くことすら困難なこの平和な時代では難しいかもしれないが、それでも願わずにはいられない。
美術館にいた時よりも管理は緩く、このままここでゆっくりと朽ちていくのかもしれない。呪われているとまで言われた自分は、それを望まれているのだろう。お前らが勝手に争い、負け、死んでいっただけだろうに。血を欲している訳ではない。ただ、強敵と相見えたい。いつの間にか自分も、そう思うようになっていた。
なあ、主よ。アンタは退屈じゃないのか。この平穏を、持て余してはいないか。美術品や骨董品にすらなれず、呪物としてしまい込まれた自分には、この世は、あまりにも。
「いた」
馴染みのない、けれど、懐かしい声がした。それと共に、何年も浴びていなかった日差しが周囲を満たす。違える筈もない。違える筈がない。記憶よりも年若い主が、木箱に収まる自分を見下ろしていた。無いはずの心臓が、高鳴るのを確かに感じた。
「変わんねぇな、お前」
声変わりを迎えていない主の笑みは、あの頃と全く変わっていない。待ち望んでいた邂逅があまりにも突然で、溢れる喜びを上手く昇華できず呆けてしまう。
『主こそ、変わらな過ぎだ』
「……前よりわかるぜ、お前の声」
目を丸くしたかと思えば、笑みを深めてそんなことを言う。声、とはどういうことか。
『わかる、のか?おれの声が、言葉が』
「おー、わかるぜ。前はちょっとした機嫌しか感じ取れなかったけど、今は結構はっきりわかる」
『なぜ』
「意思疎通が必要だからかもな」
言うや否や、主はおれを手に蔵の外へ出る。まだ日は落ちていないというのに、辺りはどこか重苦しい空気に満たされているような感触がある。
『あれは……?』
人の形をした、人ではないものが立っていた。揺らめく炎のように覚束無い足取りで、こちらへとにじり寄ってくる。自分と近しくも異なる存在にも、感じられた。主はおれをいとも容易く鞘から解放し、構える。この時、どんなに待ち望んでいたことか。
「最近、あの手のもんが視えるようになった。かと思えば目が合う端から襲って来やがる。よくないもんらしいから、斬ることにした」
『なるほど』
主に仇なすものであれば、喜んで振るわれよう。何故か、実態があるとは思えないそれを、自分は斬れると確信を持って言えた。
「そんじゃまあ、よろしく頼むぜ相棒」
『任せておけ』
この曇天の空に誓おう。主の命尽きるまで、その傍らに在ると。
(2025/01/24)