king × zoro

『ピロートークはかなり甘い』
現パロ、社会人×学生


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「なあ、どっか出掛けるって行ってなかったか?」
 返事もなく、ソファの上でアルベルがおれを羽交い締めにしたまま十分は経っている気がする。おれより上背があるとはいえ人間ソファの座り心地が良いはずもなく、腕から抜け出そうにも力強く本気で暴れる必要がありそうなため、面倒で断念した。
「なあ、なんか言えよ」
 吐息がうなじに掛かるばかりで、声が聞こえてくることはない。何を拗ねているのか。
「アルベル、声聞かせろ」
 手探りで手を伸ばし頭を撫でてやると、ようやく深い溜息が聞こえてきた。また何か、勝手に思い込んで勘違いして拗らせていそうな気配がする。
「……あの手紙は、なんだ」
 苛立ちは篭っているが、怒っている訳ではなさそうだった。あれか、とこいつの目敏さには感心するほかない。
「流石に学校じゃ捨てれねぇだろ」
「帰って来た瞬間に捨てるべきだろうが」
「いや、軽く忘れてた」
 よくわからないが少しばかり溜飲が下がったらしく、ふんと鼻で笑うような吐息が聞こえたかと思えば首筋に歯を立てられ、身体が跳ねる。
「いっ……!おい!」
 やめるどころか噛んだところを舐られ、覚えてしまった快楽が引き寄せられ変な声が出そうになる。
「離せっ」
「離したら逃げるだろう」
「……逃げた先がベッドだとしたら?」
 拘束が少し弱まり、しめたとばかりに離れる。このまま本当に逃げ出してもいいが、そうなると後が面倒になる。本当に、面倒臭くなる。そんな奴と一緒に暮らしているなんてどうかしているが、おかしな縁のせいでいつの間にかあまり口外できない関係性になってしまったのだから仕方がない。こんな真っ昼間から、と思いながらもさほど抵抗のない自分は、絆されてやってるのだと言い聞かせる。
「あんまり遅いと寝ちまうからな」
 こちらの挙動を伺っているのか座ったままの男をそう挑発すれば、外ではするなよという類の笑みを浮かべて立ち上がる。
「隣に聞こえるほど啼かせてやる」
「じゃあおれが声出さなかったらご褒美な」
「いいだろう」
 本気で声を抑えたら不器用にぶっきらぼうに寂しがるであろう男を想像しながら、渋々という体を装いベッドに身体を放り投げた。


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