甚壱さんと蘭太くん(表)

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禪院家の廊下

蘭『あ!甚壱さん!』(遠くから手を振る)
甚『おお、蘭太か』
(小走りで駆け寄る蘭)
(二人で廊下を歩きながら)
蘭『任務お疲れ様です!今回は岡山でしたっけ?いつ戻られたんですか?』
甚『ついさっきだ。桃があるから皆で食うといい』
蘭『うわぁ!嬉しい!いつもありがとうございます!』
甚『どうしたんだ?なにか用か?』
蘭『あ、ハイ。さっき総会があって…』
甚『ああ、今日だったか』
蘭『なんと、俺も炳の一員として任命されたんです!灯を飛ばして任命されると思っていなくて…。でもこれで、少し甚壱さんに近づくことが出来ました』
甚『そうか…、推薦したかいがあったな』
蘭『えっ?甚壱さん、俺の事推薦してくれてたんですか?』
甚『ああ、準一級の昇格も内定しているし、蘭太の術式はほぼ完成されているからな』
蘭『甚壱さん……』(じーーーん)
甚『だが鍛錬には終わりがない。気を引き締めてしっかり励め』
蘭『ハイッ!ありがとうございます!』(ニコ)


躯倶留隊モブたち
ヒソヒソ……
(甚壱さんは、どうして嫁を取らないんだ……?)
(見合い話は全て断っているそうだぞ)
(興味が無いらしいが、先代の息子だ。跡継ぎは必要だろう)
(直毘人様に何かあったら家督を継ぐ可能性はあるんだから、早く身を固めるべきだよな)
(このままアイツが継ぐなんてことになったら……)
(甚壱さんの方がよっぽど…)
ヒソヒソ……

(勢いよく戸を開ける蘭)
ガラッ

蘭『はいはい!皆さん!噂話はそこまで。甚壱さんがお土産下さいましたよ!』

モブA『蘭太…、聞いたぞ!凄いな』
モブB『おい、蘭太〝さん〟だろ!炳の一員になったんだぞ』
蘭『やめてくださいよ、今まで通りで呼んでください』
モブC『ホント若いのに人ができてるよ…。どこかの誰かさんとは大違いだよな』
蘭『さあさあ、岡山の桃ですよ。鍛錬が終わったらみんなでいただきましょう。冷やしておかないと…』
モブA『甚壱さんからか…。いつも何かしら差し入れてくれるな、あの方は』
蘭『優しいお方です…』
モブB『良かったな、蘭太。甚壱さんに憧れてたんだろ』
蘭『はい…、ようやく少し、近づけました』(ニコ)
モブC『蘭太が炳に行ってしまうのは寂しいが、俺たちももっと精進して支えていこう』
モブA『そうだな』
蘭『皆さん……』(じーーーん)


訓練所

(パンチングボールを打ち込む甚)

甚モノローグ
ようやく、蘭太が炳へ来ることになったか…。
躯倶留隊へ入ったのは何年前だったか…。
入った当時は基礎体力の訓練についていけず、よく泣いていた印象があったが…。持ち前の明るさと忍耐力で、いつの間にか躯倶留隊に欠かせない人間になっていたな…。

(サンドバッグへ移動)

没人情な禪院家の中で、アイツだけは何故か、人の心を失わなかった。人としての強さがある。この家にはあまり必要とされない要素だが…。ひたむきな努力、術式への探究心、真っ直ぐな心……。持ち前の曇らない善性が、アイツの周りに人が絶えない理由か…。

ドゴッ!(ジャブを打ち込む)

なぜ皆が避けるような俺を慕ってくれているのかはわからんが…。
俺にとって蘭太がここでの清涼剤となっていることは確かだ。
…甚爾が出ていったあの時…、誰もが恐怖し、兄である俺を無言で罵っていたあの時ですら、蘭太だけは俺の事を気にかけてくれていたな…。

ドンッ!ドゴッ!ドゴッ!(コンビネーションを打ち込む)

炳へ入ったのなら、一度アイツを連れて任務へ出かけようか……。
あの事も…、打診してみよう…。



訓練所そばの縁側
(甚の訓練を遠くから見ている蘭)
蘭モノローグ

相変わらず凄い気迫だ…。
俺が躯倶留隊でやってこれたのも、甚壱さんのおかげなんだ。
いつも泣いていた俺を、優しく励ましてくれた…。
あの時かけてもらった言葉は、幼訓として俺の支えとなってくれている。
甚爾さんが出て行ったあの時、巻き込まれそうになった俺を庇って…。そのせいで、額に大きな傷を負ってしまったのに、俺を責めることなく、無事を喜んでくれた…。
俺は、あの時から、…いや本当はきっともっと前から…。

禪院家では非情な判断も時に必要になるし、口数が少ないから誤解されやすいけれど、躯倶留隊のみんなはちゃんと分かってる。
尊敬すべき、強くて、優しい方だ…。
ようやく、俺も炳の一員になれたんだ…。
もしかしたら、俺も甚壱さんと一緒に任務に行けるかもしれない。

(頭フルフル)
………ダメだダメだ、初っ端から浮かれててどうするんだ!
俺も甚壱さんのように、強くて、優しい術師になるんだ。
俺も訓練しに行こう!

待っててください、甚壱さん。
できるだけ早くあなたの横に立てるように…、強くなってみせます!

END


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