一夜で消えた王国

名前がない
だから誰にも覚えられない
証拠がない
だから存在を証明できない

昔砂漠の中にあったその王国は、周辺諸国の交易の記録に残っている。
しかし、街の遺跡は残っておらず、言い伝えの中にしか存在しない。
だから誰も信じていないし
誰もそこに辿り着けない。

言い伝えでは、その王国は魔法で栄え
何千もの夜を華やかに過ごし
魔法のように一夜で消えて
何も無くなってしまったようだ。

周辺諸国が目をつけた「お宝」は
消える前に散らばった。

そして今も
この世界をさまよい続け
誰かの手におさまる時を待っている。

消えた王国は
この世界のどこでもない場所に
身を隠し
現れる機会を待っている。
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