序
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ひなこの話を聞いて、今度は冨岡が驚く番だった。
表情には全く出ていないが、彼は確かに驚いていた。
隣室で話を聞いていた冨岡の師匠だという鱗滝も加わり(もちろん天狗の面に驚いてひなこは思わず叫んだ)3人は状況の整理に必死だった。
「……つまり、お前は気づいたら山の中にいて。たまたまあの家にいて鬼に出くわしたのか」
「はい」
いまひなこが冨岡と鱗滝から聞いた限り、やはりおかしい。
まず年号が違う。家が違う。服装が違う。常識が違う。
いくらなんでも電化製品が全くない家など今時あるはずがない。何もかもが噛み合わない。違和感しかない。鬼と対峙した時とはまた種類が違う自分の足場がガラガラと崩れていくような恐怖がひなこを襲っていた。
「多分ですね…大正って私にとって100年近く前の時代の年号なんですよ…なので私過去に来てるのか、でも私鬼とか見たこともないので違う世界なのか…わからないんですけど…」
ひなこも自分で言っていて信じられなかった。自然、段々と声も力を失い、小さくなる。
どうすればいいのだろう。
もしそうだとしたら、この時代にはひなこを知る者など一人もいない。家族も友人も家も、ひなこには何もないということだ。
冨岡は黙したまま何事かを考えこんでいる。鱗滝が口を開いた。
「……お前、名は何という」
「桜木…ひなこです」
「ひなこ。お前は稀血だ。恐らくこれからも鬼に狙われる。義勇が言う事が確かならば、お前の血は稀血の中でもひと際珍しい類のものだろう…市井で暮らすよりは鬼殺隊に縁のある場所に身を置くほうがいいように思う」
「……え?」
「どうした」
「だって、…だって私の血って鬼に狙われるんですよね。皆さんに迷惑をかけてしまいませんか…」
冨岡と鱗滝は心外だという顔をした。
鬼殺を生業とする身で、今更鬼と相対する回数が増えたところでそれを迷惑には思わない。藤の香など危険を減らす術も知っている。
冨岡は表情がほとんど変わらない上に、鱗滝に至っては面で全くわからないがそれでも雰囲気で伝わるものがある。
「…帰る家も頼れる者もいないとわかっている者を放り出すほど鬼ではない。ましてや稀血ならば尚更だ」
鱗滝の皺だらけの手がひなこの頭をぽんぽんと撫でる。
「…先生、俺はひなこの存在はお館様にお伝えし、血を…胡蝶の元で詳しく調べたほうがいいように思います」
長く沈黙していた冨岡もようやく口を開いた。
「ふむ…蟲柱の元でか。ひなこ、どうする?」
鱗滝が再びひなこを見る。
「お前が望むなら、儂とここで暮らせばいい。この老いぼれも元は鬼殺の剣士だ。多少は安心だろう。だが、義勇の言うようにお館様の元へ行けるのならばそちらのほうが安全だ。何よりお前の血についても詳しく調べられるだろう」
「私の血について…?」
「お前の血は特殊だ。もしかすると何か役に立つかもしれない」
冨岡は真っ直ぐにひなこを見ていた。鬼から助けてくれた時と同じ、凪いだ水面のような静かな目だ。
ひなこは助けられなかった小さな男の子を思い出すした。笑顔も抱きしめたときの重さも温もりもよく覚えている。____何か役に立てるのなら。
「……行きたいです」
私の血が何か役に立つのなら。
「____決まったようだな。…義勇はまた、これから別の任務に向かわねばならない。ひなこ、お前のことは儂からお館様へ報告しよう。その返事次第で隠の者にお前をお館様の元へ連れて行って頂く。___良いか義勇」
「はい」
それから三日後、お館様からの手紙が届く。
これにより、ひなこの鬼殺隊本部行きが決定した。
表情には全く出ていないが、彼は確かに驚いていた。
隣室で話を聞いていた冨岡の師匠だという鱗滝も加わり(もちろん天狗の面に驚いてひなこは思わず叫んだ)3人は状況の整理に必死だった。
「……つまり、お前は気づいたら山の中にいて。たまたまあの家にいて鬼に出くわしたのか」
「はい」
いまひなこが冨岡と鱗滝から聞いた限り、やはりおかしい。
まず年号が違う。家が違う。服装が違う。常識が違う。
いくらなんでも電化製品が全くない家など今時あるはずがない。何もかもが噛み合わない。違和感しかない。鬼と対峙した時とはまた種類が違う自分の足場がガラガラと崩れていくような恐怖がひなこを襲っていた。
「多分ですね…大正って私にとって100年近く前の時代の年号なんですよ…なので私過去に来てるのか、でも私鬼とか見たこともないので違う世界なのか…わからないんですけど…」
ひなこも自分で言っていて信じられなかった。自然、段々と声も力を失い、小さくなる。
どうすればいいのだろう。
もしそうだとしたら、この時代にはひなこを知る者など一人もいない。家族も友人も家も、ひなこには何もないということだ。
冨岡は黙したまま何事かを考えこんでいる。鱗滝が口を開いた。
「……お前、名は何という」
「桜木…ひなこです」
「ひなこ。お前は稀血だ。恐らくこれからも鬼に狙われる。義勇が言う事が確かならば、お前の血は稀血の中でもひと際珍しい類のものだろう…市井で暮らすよりは鬼殺隊に縁のある場所に身を置くほうがいいように思う」
「……え?」
「どうした」
「だって、…だって私の血って鬼に狙われるんですよね。皆さんに迷惑をかけてしまいませんか…」
冨岡と鱗滝は心外だという顔をした。
鬼殺を生業とする身で、今更鬼と相対する回数が増えたところでそれを迷惑には思わない。藤の香など危険を減らす術も知っている。
冨岡は表情がほとんど変わらない上に、鱗滝に至っては面で全くわからないがそれでも雰囲気で伝わるものがある。
「…帰る家も頼れる者もいないとわかっている者を放り出すほど鬼ではない。ましてや稀血ならば尚更だ」
鱗滝の皺だらけの手がひなこの頭をぽんぽんと撫でる。
「…先生、俺はひなこの存在はお館様にお伝えし、血を…胡蝶の元で詳しく調べたほうがいいように思います」
長く沈黙していた冨岡もようやく口を開いた。
「ふむ…蟲柱の元でか。ひなこ、どうする?」
鱗滝が再びひなこを見る。
「お前が望むなら、儂とここで暮らせばいい。この老いぼれも元は鬼殺の剣士だ。多少は安心だろう。だが、義勇の言うようにお館様の元へ行けるのならばそちらのほうが安全だ。何よりお前の血についても詳しく調べられるだろう」
「私の血について…?」
「お前の血は特殊だ。もしかすると何か役に立つかもしれない」
冨岡は真っ直ぐにひなこを見ていた。鬼から助けてくれた時と同じ、凪いだ水面のような静かな目だ。
ひなこは助けられなかった小さな男の子を思い出すした。笑顔も抱きしめたときの重さも温もりもよく覚えている。____何か役に立てるのなら。
「……行きたいです」
私の血が何か役に立つのなら。
「____決まったようだな。…義勇はまた、これから別の任務に向かわねばならない。ひなこ、お前のことは儂からお館様へ報告しよう。その返事次第で隠の者にお前をお館様の元へ連れて行って頂く。___良いか義勇」
「はい」
それから三日後、お館様からの手紙が届く。
これにより、ひなこの鬼殺隊本部行きが決定した。
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