序
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「___水の呼吸、壱ノ型 水面斬り」
静かな声で刃を振るったその人は、たった一太刀でひなこに迫っていた男の首を刎ねた。
黒髪をひとつに束ね、半々の違い模様の羽織を纏ったその人は己が斬った男を暫 し見つめていたが、すぐにひなこの方へ振り向いた。
「あ、あ…ッ」
助けてくれたのだ。御礼を言いたいのに上手く口が動かせず、言葉が出てこない。
「おい」
凪いだ水面のような瞳 をした人だった。ひなこに向かって何かを尋ねているようだったが、急速に襲ってきた安堵感からか薄い膜で隔てられているかのように言葉が聴き取れず、ひなこの意識はゆっくりと遠のきつつあった。
(何…?)
そこでひなこの意識はぷつりと途切れた。
自分の顔を見るなり気を失ってしまった少女を見て、彼___鬼殺隊 水柱・冨岡義勇はわずかに目を見張った。しかし、それもほんの一瞬のことで、冨岡は少女の腕の中の子供に気づき脈を確かめた。
脈は、なかった。
ここに来る途中見た家にも生存者はいなかった。生き残ったのはこの少女一人だけのようだ。
「……」
訊 きたいことがあったのだが、少女の意識はしばらく戻りそうにない。
冨岡は無言で少女を抱き上げた。ここからは挟霧山が近い。
夢を見た。
何てことのないいつもの風景。家から学校までの景色。家族、友人の顔。
他愛のない会話。次の休日の約束。ずっと変わらない毎日が続くと信じていた。
「起きたか」
「……ッ!?」
見知らぬ天井と知らない声。ひなこは飛び上がるように起き上がった。
「痛ッ」
腕に包帯が巻かれている。夢じゃない。ひなこが声のしたほうを見やると、布団の側らに一人の青年が座していた。その羽織には覚えがあった。
「あ、さっき助けてくれた方ですよね…」
ありがとうございます、と頭を下げて、ハッとする。
「あ、あの秋吉くんは!?私が抱いていた…ッ」
青年は静かに首を振った。秋吉は首を切られていた。あの小さな身体で血を失いすぎていた。どうしようもなかった。
「嘘…」
呆然と呟きボロボロと涙をこぼすひなこにわずかに目を細め、青年は口を開いた。
「俺は冨岡義勇という」
そう名乗った青年の話は信じられないような内容だった。
ひなことソノ達を襲ったあの男は【鬼】だと。鬼舞辻無惨という鬼の始祖とされる男の血には人を鬼にする力があり、鬼になってしまえば最後、元に戻る術はなく自我を失い人を襲い喰らうようになるのだと。冨岡の属する鬼殺隊という組織は鬼から人を守るため鬼を狩る剣士の集まりだという。
「…恐らくあの家族の父親は鬼となり、最初に家族を襲ったのだろう」
「……そんな…」
「…お前は自分の血についてどれくらい知っている?」
「?え、どういうことですか?血液型とかそういうことですか?」
「そうではない。____お前は稀血だろう」
「マレチ?」
聞きなれない言葉にひなこは首を傾げた。
「マレチとは稀なる血と書く。鬼に好まれる珍しい血のことだ」
「……は」
「俺が駆け付けたとき、鬼はお前の血を舐めて興奮したように見えた。俺がすぐに首を刎ね霧散してしまったがあの鬼の身体、爛 れているようにも見えた。…あれはお前の血の力か?」
知らない。
当然だ。ひなこは今まで鬼の存在自体を知らなかったのだ。自分がその鬼に好まれる血の持ち主だなんて知りようがない。
「わか…りません」
「…?」
「わからないんです私。気づいたら山の中にいて。ここが何処なのか、鬼とかそういうのも全部…わからないんです…!」
静かな声で刃を振るったその人は、たった一太刀でひなこに迫っていた男の首を刎ねた。
黒髪をひとつに束ね、半々の違い模様の羽織を纏ったその人は己が斬った男を
「あ、あ…ッ」
助けてくれたのだ。御礼を言いたいのに上手く口が動かせず、言葉が出てこない。
「おい」
凪いだ水面のような
(何…?)
そこでひなこの意識はぷつりと途切れた。
自分の顔を見るなり気を失ってしまった少女を見て、彼___鬼殺隊 水柱・冨岡義勇はわずかに目を見張った。しかし、それもほんの一瞬のことで、冨岡は少女の腕の中の子供に気づき脈を確かめた。
脈は、なかった。
ここに来る途中見た家にも生存者はいなかった。生き残ったのはこの少女一人だけのようだ。
「……」
冨岡は無言で少女を抱き上げた。ここからは挟霧山が近い。
夢を見た。
何てことのないいつもの風景。家から学校までの景色。家族、友人の顔。
他愛のない会話。次の休日の約束。ずっと変わらない毎日が続くと信じていた。
「起きたか」
「……ッ!?」
見知らぬ天井と知らない声。ひなこは飛び上がるように起き上がった。
「痛ッ」
腕に包帯が巻かれている。夢じゃない。ひなこが声のしたほうを見やると、布団の側らに一人の青年が座していた。その羽織には覚えがあった。
「あ、さっき助けてくれた方ですよね…」
ありがとうございます、と頭を下げて、ハッとする。
「あ、あの秋吉くんは!?私が抱いていた…ッ」
青年は静かに首を振った。秋吉は首を切られていた。あの小さな身体で血を失いすぎていた。どうしようもなかった。
「嘘…」
呆然と呟きボロボロと涙をこぼすひなこにわずかに目を細め、青年は口を開いた。
「俺は冨岡義勇という」
そう名乗った青年の話は信じられないような内容だった。
ひなことソノ達を襲ったあの男は【鬼】だと。鬼舞辻無惨という鬼の始祖とされる男の血には人を鬼にする力があり、鬼になってしまえば最後、元に戻る術はなく自我を失い人を襲い喰らうようになるのだと。冨岡の属する鬼殺隊という組織は鬼から人を守るため鬼を狩る剣士の集まりだという。
「…恐らくあの家族の父親は鬼となり、最初に家族を襲ったのだろう」
「……そんな…」
「…お前は自分の血についてどれくらい知っている?」
「?え、どういうことですか?血液型とかそういうことですか?」
「そうではない。____お前は稀血だろう」
「マレチ?」
聞きなれない言葉にひなこは首を傾げた。
「マレチとは稀なる血と書く。鬼に好まれる珍しい血のことだ」
「……は」
「俺が駆け付けたとき、鬼はお前の血を舐めて興奮したように見えた。俺がすぐに首を刎ね霧散してしまったがあの鬼の身体、
知らない。
当然だ。ひなこは今まで鬼の存在自体を知らなかったのだ。自分がその鬼に好まれる血の持ち主だなんて知りようがない。
「わか…りません」
「…?」
「わからないんです私。気づいたら山の中にいて。ここが何処なのか、鬼とかそういうのも全部…わからないんです…!」