あの頃と今を繋ぐ4分23秒
いつもは閑散としている放課後の図書室。しかし、ここ数日は様子が違った。
もうすぐ、中間テストがある。それで、テス勉をする為にいつもは部活や普段利用しないような奴が多く訪れているって訳だ。まぁ俺も、その中の一人ってだけだけど。
高校受験の時は、自室のない上に煩い弟妹たちを理由に学校の図書室を受験勉強の場にしていた俺だが、高校に入ってからは校内のそこには、よっぽどの用がない限り立ち寄らない場所になっていた。
しかし、少しばかり背伸びして入学した学校、テス勉しなきゃ正直ヤバイし、榎木は榎木で「家に帰ったらやらなきゃいけない事が気になって集中出来ない」と、だったら、二人で図書室で少しづつやってくかぁとなったのが数日前だ。
テスト期間中だってのに面倒にも日直だった今日、担任に用事を押し付けられ遅れて図書室へ向かう。先に行ってるアイツはもう集中してる頃だろうか。
そう思ってほぼほぼ埋まっている自習席のテーブルを見渡していると、奥の角すみの席に座っている榎木を見つけた。左隣の椅子の背にブレザーのジャケットを掛け、その前の机には教科書とノートを広げて。あたかも使ってる人がいますよのカモフラージュか。
俺の為に取っておいてくれた席にカバンを置き、「席取りサンキュ」と声をかける。左手で頬杖をついている榎木はこちらに顔を背けている姿勢になっている訳だが、反応がない。
集中しているとしても、小声と言えど聞こえないはずはないんだけどな。
と思い、顔を覗きこんで見ると、榎木は目を閉じていた。そして、耳からはコードが垂れている。
イヤホン? 珍しいな。
そっと外して、自分の右耳に差し込む。
すると、流石に気づいたのか、パッと顔をこちらに向けた。
「あ、藤井くん。用事終わった? お疲れ様」
榎木は自分の片耳に残ってるイヤホンを外し言った。
「この曲、懐かしいな」
「あぁ、うん」
人気のある二人組のアーティストの、少しばかり昔──俺たちが小6の頃に流行っていた曲だった。
別にCDとか買わなくても、TVや街中で流れていて一時期生活の中で自然と耳に入っていた曲。
「最近、このデュオの新曲が映画の主題歌になったみたいで、たまたまTVで流れてて。この人たちの曲って言ったら、この曲だなぁって懐かしくなっちゃって」
ケータイで検索したら聴けるサイトがあったから、ここ暫く暇があったら聴いてたんだよね。
スマホ画面に表示されてる、何曲かオムニバスに編集されているリストの、今丁度流れていた曲がその曲だった。
さて、勉強しようか。 そう言いながら「イヤホン返して」と手を差し出す榎木の掌に、それの代わりにポケットに入っていた飴玉を乗せる。
「何これ」
「俺もこの曲聴きたい。最初まで戻して、終わったら始める。その間、その飴玉舐めてろ」
「は?」
外していた榎木のイヤホンをもう一度ヤツの耳に突っ込み。
掌に乗せたままの飴玉の包みを開け、呆気に取られている榎木の口に押し込み。
榎木のスマホの画面で再生が進んでいる曲を頭までスキップで戻す。
すると、聴き馴染みのあるイントロが流れてきた。
「強引だなぁ、もう」
そう言いながらも曲を止める訳でもなく。
机の上にスマホを置き、横並びに座った榎木は左耳、俺は右耳で一つの曲に耳を傾ける。
この曲が流行っていた頃は、俺たちはただのクラスメイトで。
たまに放課後、弟妹の保育園へのお迎えを一緒にしていて。
それでも一緒に旅行したり夏祭りに行ったりもした。
曲に乗せて、当時の思い出が蘇る。
それは、柄にもなくノスタルジーに浸る4分23秒。
もうすぐ、中間テストがある。それで、テス勉をする為にいつもは部活や普段利用しないような奴が多く訪れているって訳だ。まぁ俺も、その中の一人ってだけだけど。
高校受験の時は、自室のない上に煩い弟妹たちを理由に学校の図書室を受験勉強の場にしていた俺だが、高校に入ってからは校内のそこには、よっぽどの用がない限り立ち寄らない場所になっていた。
しかし、少しばかり背伸びして入学した学校、テス勉しなきゃ正直ヤバイし、榎木は榎木で「家に帰ったらやらなきゃいけない事が気になって集中出来ない」と、だったら、二人で図書室で少しづつやってくかぁとなったのが数日前だ。
テスト期間中だってのに面倒にも日直だった今日、担任に用事を押し付けられ遅れて図書室へ向かう。先に行ってるアイツはもう集中してる頃だろうか。
そう思ってほぼほぼ埋まっている自習席のテーブルを見渡していると、奥の角すみの席に座っている榎木を見つけた。左隣の椅子の背にブレザーのジャケットを掛け、その前の机には教科書とノートを広げて。あたかも使ってる人がいますよのカモフラージュか。
俺の為に取っておいてくれた席にカバンを置き、「席取りサンキュ」と声をかける。左手で頬杖をついている榎木はこちらに顔を背けている姿勢になっている訳だが、反応がない。
集中しているとしても、小声と言えど聞こえないはずはないんだけどな。
と思い、顔を覗きこんで見ると、榎木は目を閉じていた。そして、耳からはコードが垂れている。
イヤホン? 珍しいな。
そっと外して、自分の右耳に差し込む。
すると、流石に気づいたのか、パッと顔をこちらに向けた。
「あ、藤井くん。用事終わった? お疲れ様」
榎木は自分の片耳に残ってるイヤホンを外し言った。
「この曲、懐かしいな」
「あぁ、うん」
人気のある二人組のアーティストの、少しばかり昔──俺たちが小6の頃に流行っていた曲だった。
別にCDとか買わなくても、TVや街中で流れていて一時期生活の中で自然と耳に入っていた曲。
「最近、このデュオの新曲が映画の主題歌になったみたいで、たまたまTVで流れてて。この人たちの曲って言ったら、この曲だなぁって懐かしくなっちゃって」
ケータイで検索したら聴けるサイトがあったから、ここ暫く暇があったら聴いてたんだよね。
スマホ画面に表示されてる、何曲かオムニバスに編集されているリストの、今丁度流れていた曲がその曲だった。
さて、勉強しようか。 そう言いながら「イヤホン返して」と手を差し出す榎木の掌に、それの代わりにポケットに入っていた飴玉を乗せる。
「何これ」
「俺もこの曲聴きたい。最初まで戻して、終わったら始める。その間、その飴玉舐めてろ」
「は?」
外していた榎木のイヤホンをもう一度ヤツの耳に突っ込み。
掌に乗せたままの飴玉の包みを開け、呆気に取られている榎木の口に押し込み。
榎木のスマホの画面で再生が進んでいる曲を頭までスキップで戻す。
すると、聴き馴染みのあるイントロが流れてきた。
「強引だなぁ、もう」
そう言いながらも曲を止める訳でもなく。
机の上にスマホを置き、横並びに座った榎木は左耳、俺は右耳で一つの曲に耳を傾ける。
この曲が流行っていた頃は、俺たちはただのクラスメイトで。
たまに放課後、弟妹の保育園へのお迎えを一緒にしていて。
それでも一緒に旅行したり夏祭りに行ったりもした。
曲に乗せて、当時の思い出が蘇る。
それは、柄にもなくノスタルジーに浸る4分23秒。
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