遅れた祝いとファーストキス
大切な日はとうに過ぎた
まったくもって迷惑
イライライラ
ドヨォォォ~ン
「後藤なんとかしろ」
教室中に漂う不穏な威圧と空気、先生は後藤になだめる役目を仰せつかり無茶苦茶イヤな顔をする、しかし流石に残りの時間このままの空気で過ごすのは無理なため渋々
後藤「おーい藤井いつまでふてくされつんだよ」
藤井「・・・」
後藤「いい迷惑だ(怒)」
そして俺はお前の世話役じゃねぇ!と後藤は自分の席に戻り藤井を空気として扱い授業を続けて下さいと言った
後藤からしたら藤井が不機嫌な理由がわかってるから尚更
お隣のクラスでも
ドヨォォォン・・・
宮前「おーい」
広瀬「暗いな」
授業はしっかり受けていたが終わった途端撃沈、宮前や広瀬は原因は実か藤井のどちらかにあると分かっているため
宮前「よしこれから」
広瀬「藤井を締め上げてくるか」
拓也「∑待って!」
二人なら心理戦でいけるだろうと教室を出て行きかけたが、どうしてそうなるの!と、拓也が必死に止めた
何があったのかは言わなかったが宮前と広瀬はもし辛くなったらいつでも言えよと藤井同様拓也だけ!優しい二人、拓也は二人の優しい友人に感謝した
しかし親友である後藤だけは知っている
後藤「お前ねぇ~拓也の気持ちも考えろよ」
藤井「・・・」
拓也と藤井の仲がここ二、三日よろしくない、その原因は榎木家のお向かいさん、木村成一にあった
成一『お前のファーストキスの相手は俺だもんな』
拓也『あ、あれは成一さんが・・・!』
拓也に聞きたいことがあったため家まで来てみたらたまたまその会話を聞いてしまいそれからギクシャクしてしまった、拓也の話を聞こうとしない藤井に拓也は辛くなり後藤に相談したのだ
後藤「小学生の時の話だろう、それに大人の事情に巻き込まれた拓也が一番の被害者だ」
藤井「・・・榎木の」
後藤「ん?」
藤井「榎木のファーストキスは俺がいただくはずだった」
後藤「やっと口を開いたかと思ったら第一声がそれか」
だから嫌なんだお前の相談に乗るの!と後藤は深く溜息をついた
大体の話は聞いている、それでも既に、しかも自分以外にキスされたなんてちょっとショックで
藤井「(・・・)」
ゴソ
廊下を歩いてたが立ち止まりポケットに手をやると出てきたのは小さな紙袋
広瀬「ほー」
宮前「一応用意はしてたんだな」
藤井「Σ!」
後ろから湧いてきた二人にびっくりしつつなんだよ!と言い返す
広瀬「俺らはお前らがなんで喧嘩してるか知らねぇけど」
宮前「俺らとしてはチャンスだよな」
藤井「なっ!」
宮前「ちなみに俺たちは」
広瀬「すでに渡したぜ」
誕生日当日に
イライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライライラ
「後藤、藤井はどうなってる!?」
後藤「∑知りませんよ!そして俺はあいつのお守り役じゃなぁぁい!」
今朝より不機嫌になりました
屋上にて
拓也「はぁぁぁ・・・」
いつまでもしょぼくれていても仕方ないのだが相手が話を聞いてくれない事には何も出来ない
自分は嫌われてしまったのだろうか?
嫌な事だけが頭をよぎる
このままずっと口を利いてくれないのかな?
ちょっと泣きそうになった、どうすればいいのかも分からない
いつまでもここでこうしているわけにもいかないので帰ろうとドアノブに手をやりぼそりと呟いた
拓也「僕だって成一さんじゃなくて藤井君がよかったよ・・・」
ガチャ
ガン!
ん?
何か当たった?開けたドアの方を見ると頭を抑えた藤井の姿
藤井「イテェ・・・」
拓也「ふ、藤井君!ゴメン居るなんて思ってなかった(汗)」
大丈夫?とぶつけたであろう場所をナデナデ
藤井「俺は実じゃねぇよ」
拓也「あ、ゴメン」
実にいつもやってるからつい、と、言いつつハッと気がつく
拓也「もしかして・・・聞いてた?」
藤井「聞こえた」
拓也「!!!」
一気に顔が赤くなり恥ずかしさのあまりその場を去ろうと走り出すがそれよりも早く藤井の手が拓也の腕を捉え引き寄せた
拓也「藤井君!」
藤井「榎木、今の本音だよな?」
拓也「本音じゃないならこんなこと口走らないよ・・・!」
それを聞いた途端キスされた、ここしばらく一緒に入れなかったのもあり腰に手を回して抱きしめて
藤井「悪かったな」
拓也「僕こそゴメン」
藤井「お前は被害者だろうなんで謝るんだよ」
拓也「だって・・・」
藤井「そんじゃこれが本当のファーストキスってことで、それと遅れちまったけど誕生日おめでとう」
深くて長いキス、それが終わると同時に目の前に出された紙袋を見て拓也は笑顔で
拓也「ありがとう」
藤井「(こっちこそ感謝だな)」
生まれてきてくれてありがとう
終わり
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